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神に捧げる戦い 06-12
しおりを挟むカール・グスタフの隊は、乱戦に入りつつあった。
連邦艦隊の旗艦は、目の前にいる。
しかし、旗艦を背負った連邦のミリタリーモジュールが行う防衛戦は、熾烈を極めた。
グスタフはブラックソード隊を合わせ総勢十六機になった自分の編隊を、コントロールしフォーメーションを崩さずここまでこれた。だがとうとう、二機一組で敵機にあたるフォーメーションが崩されつつある。
グスタフは、もう限界かと思う。
まだ彼の隊は、かろうじて互角の戦いをしている。
とはいえ、暗黒種族と最前線で戦ってきた連邦軍のパイロットは、練度が恐ろしく高い。
今まで相手にしてきた宇宙海賊とは、比べものにならなかった。
最初の、一機。
グスタフは、考える。
最初に墜とされる一機目が、敵か味方か。
それで戦いのゆくえが決まると、思う。
このフォーメーションが崩れた乱戦では、兵の練度によって勝負が決まるはずだ。
グスタフの上官、キルケゴール班長は個人の技量に戦いの趨勢をゆだねること嫌う。
自分の卓越した戦闘能力で状況を切り開くブラックソードと、対極の指揮官であった。
今回グスタフはキルケゴール班長の方針に従い、フォーメーション重視で戦っている。
しかし、それはもう限界だ。
最初の一機が、もし彼の編隊であったら。自分が敵機のただなかに飛び込んで、状況を切り開くしかない。
そうグスタフが思った瞬間、視界の隅に閃光をみる。
アラートメッセージが表示されてゆき、グスタフは自編隊のミリタリーモジュールが最初の一機となったことを知った。
グスタフは、考えるより先に行動する。
彼の編隊の一角を崩した敵機めがけ、グスタフは最大戦速まで加速した。
加速によって狭まった視界の中心に、敵機がいる。
敵機もこちらをロックオンしたらしく、アラート音を聞くとともにスペースキヤノンがこちらへむけられているのをみた。
その後におこったことは、グスタフにとって全くの予想外である。
まず、目の前の敵機が爆炎につつまれ、グスタフは視界を失う。
そして立て続けにメッセージが表示され、さらに三機の敵機が撃墜されたと知る。
目の前を覆っていた爆炎がさり、黒い死の風が目の前に金色の軌跡を残して吹き去るのみた。
「ブラックソード隊長!」
思わずグスタフが叫んだときに、さらにもう一機の連邦機が爆炎につつまれる。
小さなウインドウが立ち上がり、ブラックソードの顔が映った。
「よお、グスタフ。待たせて、悪かったな」
「ブラックソード隊長、あなたってひとはいったいどうやって」
前回あれだけ苦戦したホワイトファングを墜としてここにきたというのなら、はやすぎる。
グスタフにとって、あまりに理解を越えることであった。
そして、ブッラクソード機の動きはさらに常軌を逸している。
黒い鋼鉄の猛禽は、連邦機が放つ砲撃を風にまう花びらより軽やかにかわす。
漆黒の稲妻となったブラックソード機の攻撃は、連邦機にかわす猶予をあたえぬ速度でばらまかれる。
わずか三十秒たらずの間に、連邦の一編隊が刈り取られた。
それだけの戦力差が彼我に生まれれば、グスタフの編隊が状況を支配するのは実にたやすい。
グスタフは戦慄を感じながら、目の前の景色を眺める。
さっきまでこじ開けることが不可能と思われた、昏い塔となって聳える連邦旗艦への道が開けていた。
それは戦場に突然出現した、空白地帯である。
いきなり崩れた均衡に、慌てふためいた連邦機が対応しようとしていた。
神話に語られる予言者が海を裂いて造った道のような空白地帯に、連邦機が殺到していく。
しかし、放たれた矢であるブッラクソード機は、殺到する鉄の群狼たちをあざ笑い駆け抜ける。
もはや連邦旗艦とブッラクソード機の間を遮るものは、何もなかった。
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