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最初の接触 02-01
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彼は、搭乗したミリタリーモジュールを操作しながら宇宙空間を漂っている。
彼の網膜投影型ディスプレイには、大きな宇宙戦艦が航行する様が映しだされていた。
優美な流線型をした鋼の船は、漆黒の宇宙空間に蒼白く光るスペースセイルを展開している。
スペースセイルをフルセイル状態、つまり総帆を張った状態にしたその船はかつてテラの海を航海していたという洋上艦に似ている。
しかし、スペースセイルが受けるのはテラの風ではなく、太陽風であった。そして帆も布ではなく、フォースフィールドによって形成されている。
その姿は、金属でできた巨大な魚が輝く鰭をひろげ深海を遊弋する様のようでもあった。
物理的実体のないスペースセイルは、幻想的な蒼白い輝きを宇宙空間に浮かび上がらせていた。二つずつ対になった四つのスペースセイルが、可動式装甲板の先に展開される。
そのうちひとつの可動式装甲板に、二体のミリタリーモジュールがとりついて作業してた。
全長三メートルのミリタリーモジュールは本来戦闘目的に使用される外骨格型パワードアーマーであるが、この船では作業用にも使用されている。
そもそも今のテラには、戦闘用と平時用に装備や人員を区別して使用できるような余裕がない。
「隊長、ブラックソード隊長。ユニット交換おわりましたよ」
「ラジャーだ、グスタフ。再起動するぜ」
彼、ブラックソードは配下の隊員グスタフの報告を受け、手元に展開されたバーチャルターミナルに指をはしらせた。
一瞬、スペースセイルを形成しているフォースフィールドが消滅し、再生成される。
ブラックソードは、ヘッドギアのインカムを操作して通信の相手先を切り替えた。
「ユーリ、交換完了だ。確認してくれ」
「ケン・ブラックソード隊長、OKだよ。フォースフィールドの出力レべルは快復した」
ブラックソードはブリッジオペレータの言葉に頷くと、通信の宛先を全方向にきりかえる。
「皆んな、ご苦労だった。仕事は終わりだ。これより、帰艦するぜ」
ブラックソードは、改めて彼の乗る船ブリュンヒルドを眺める。
全長三百メールの、宇宙戦艦としては一般的なスタイルである涙滴型をしたその船は、かつてはテラ艦隊の旗艦であった。
老朽化して退役するはずであったが練習艦となり、いまは特務艦として現役復帰している。残念ながらあちこちガタがきているので、メンテナンスしながらの任務復帰であるが。
船は目的地である木星軌道に近づきつつあるので、艦尾を木星に向けて減速プロセスに入っていた。艦尾には、平時航行中は艦体外部にリング状の居住ブロックが展開されているものであるが、準戦闘体勢である今は艦体内に格納されている。
そう、今や彼らは目的地の探索任務にはいろうとしていた。
ほんの数ヶ月まえまでは、ただの訓練生だったというのに。
地球人類の運命を左右する任務に自分たちのようなガキをかりだすとは、テラもいよいよだなと思いブラックソードは無意識に苦笑を浮かべる。
「隊長、先に帰って一杯やってますよ」
ブラックソードは、もの思いから現実に戻ると返答する。
「おう、すぐに行く。ユーリ・ノヴァーリス航海班長、ハンガーデッキの入り口を開けといてくれ」
「ラジャー、戦闘隊長」
ブラックソードはブリッジオペレータの声を聞きつつ意識を切り替え、彼のミリタリーモジュールに装備されている人工生命体『フェアリー』とこころを同期させる。
フェアリーが、コア・アクチュエーターを作動させ慣性駆動システムをアクティブにした。
モジュール内に発生した電磁重力偏倚によって、ミリタリーモジュールは推進剤を使うことなく母艦のハンガーデッキへ移動をはじめる。
ブラックソードは移動しながら母艦の艦尾よりさらに向こうに見える、木星を眺めた。
その巨大な惑星は、もう間近に迫っている。
木星の表面は極彩色に輝くガスの嵐が吹き荒れ、目に見えぬ電磁嵐も周辺でおきていた。
それは暗黒の中でひとり孤独な怪物が、世界に向かって咆哮をあげる様を思わせた。
その荒れ狂う星、木星軌道上に彼らの旅の目的であるエンシェント・ロードへのアクセスポイントが、あるはずであった。
しかし、それが地球人類に希望をもたらすか、あるいはさらなる危機をまねくのか、誰にも判りはしない。
そこへいくまでは。
ブラックソードは薄く笑って、狂気の芸術家が夢想する嵐に包まれた木星に別れを告げると、ハンガーデッキの中へと入っていく。
彼の網膜投影型ディスプレイには、大きな宇宙戦艦が航行する様が映しだされていた。
優美な流線型をした鋼の船は、漆黒の宇宙空間に蒼白く光るスペースセイルを展開している。
スペースセイルをフルセイル状態、つまり総帆を張った状態にしたその船はかつてテラの海を航海していたという洋上艦に似ている。
しかし、スペースセイルが受けるのはテラの風ではなく、太陽風であった。そして帆も布ではなく、フォースフィールドによって形成されている。
その姿は、金属でできた巨大な魚が輝く鰭をひろげ深海を遊弋する様のようでもあった。
物理的実体のないスペースセイルは、幻想的な蒼白い輝きを宇宙空間に浮かび上がらせていた。二つずつ対になった四つのスペースセイルが、可動式装甲板の先に展開される。
そのうちひとつの可動式装甲板に、二体のミリタリーモジュールがとりついて作業してた。
全長三メートルのミリタリーモジュールは本来戦闘目的に使用される外骨格型パワードアーマーであるが、この船では作業用にも使用されている。
そもそも今のテラには、戦闘用と平時用に装備や人員を区別して使用できるような余裕がない。
「隊長、ブラックソード隊長。ユニット交換おわりましたよ」
「ラジャーだ、グスタフ。再起動するぜ」
彼、ブラックソードは配下の隊員グスタフの報告を受け、手元に展開されたバーチャルターミナルに指をはしらせた。
一瞬、スペースセイルを形成しているフォースフィールドが消滅し、再生成される。
ブラックソードは、ヘッドギアのインカムを操作して通信の相手先を切り替えた。
「ユーリ、交換完了だ。確認してくれ」
「ケン・ブラックソード隊長、OKだよ。フォースフィールドの出力レべルは快復した」
ブラックソードはブリッジオペレータの言葉に頷くと、通信の宛先を全方向にきりかえる。
「皆んな、ご苦労だった。仕事は終わりだ。これより、帰艦するぜ」
ブラックソードは、改めて彼の乗る船ブリュンヒルドを眺める。
全長三百メールの、宇宙戦艦としては一般的なスタイルである涙滴型をしたその船は、かつてはテラ艦隊の旗艦であった。
老朽化して退役するはずであったが練習艦となり、いまは特務艦として現役復帰している。残念ながらあちこちガタがきているので、メンテナンスしながらの任務復帰であるが。
船は目的地である木星軌道に近づきつつあるので、艦尾を木星に向けて減速プロセスに入っていた。艦尾には、平時航行中は艦体外部にリング状の居住ブロックが展開されているものであるが、準戦闘体勢である今は艦体内に格納されている。
そう、今や彼らは目的地の探索任務にはいろうとしていた。
ほんの数ヶ月まえまでは、ただの訓練生だったというのに。
地球人類の運命を左右する任務に自分たちのようなガキをかりだすとは、テラもいよいよだなと思いブラックソードは無意識に苦笑を浮かべる。
「隊長、先に帰って一杯やってますよ」
ブラックソードは、もの思いから現実に戻ると返答する。
「おう、すぐに行く。ユーリ・ノヴァーリス航海班長、ハンガーデッキの入り口を開けといてくれ」
「ラジャー、戦闘隊長」
ブラックソードはブリッジオペレータの声を聞きつつ意識を切り替え、彼のミリタリーモジュールに装備されている人工生命体『フェアリー』とこころを同期させる。
フェアリーが、コア・アクチュエーターを作動させ慣性駆動システムをアクティブにした。
モジュール内に発生した電磁重力偏倚によって、ミリタリーモジュールは推進剤を使うことなく母艦のハンガーデッキへ移動をはじめる。
ブラックソードは移動しながら母艦の艦尾よりさらに向こうに見える、木星を眺めた。
その巨大な惑星は、もう間近に迫っている。
木星の表面は極彩色に輝くガスの嵐が吹き荒れ、目に見えぬ電磁嵐も周辺でおきていた。
それは暗黒の中でひとり孤独な怪物が、世界に向かって咆哮をあげる様を思わせた。
その荒れ狂う星、木星軌道上に彼らの旅の目的であるエンシェント・ロードへのアクセスポイントが、あるはずであった。
しかし、それが地球人類に希望をもたらすか、あるいはさらなる危機をまねくのか、誰にも判りはしない。
そこへいくまでは。
ブラックソードは薄く笑って、狂気の芸術家が夢想する嵐に包まれた木星に別れを告げると、ハンガーデッキの中へと入っていく。
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