世界を救ったゲーマー・ファントムMAYAは、一対一で決闘する

ヒルナギ

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第六話

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 店の中は10代の子供ばかりだった。おれとしてはとても居心地が悪い。しかし、それは目の前のMAYAも同じようだ。多分、MAYAはどこにいてもこんなふうに居心地悪そうに孤独な瞳で、それでいて毅然とした表情であたりを見てるんだろう。そんな気がした。
 一方ナミは、MAYAと対照的である。深紅のシャネルで武装し傲岸とした態度で高く足を組んだナミは、自分の縄張りにいる猫のようにリラックスしていた。

「私も自己紹介しとくね」

 ナミはMAYAに微笑みかける。

「横山ナミ、24歳。職業は公務員」

「つーか、特殊情報群の対テロ部門の室長だろ。だいたい歳はおれとためだろうが」

 ナミはおれの顔面へ裏拳をとばす。おれはあやうくスウェイでかわした。

「なんでそんなこというかな」

「いいじゃねえか、気にするなって。MAYA、おまえはどうすんの。いやなら本名言わなくていいよ」

「御子柴摩耶。17歳。高校生。これでいいか」

「うーん、なんていうかさあ、おまえが始めてだぜ、ネットで知り合ってオフで会った時にネット以上にもどかしい感じがするやつって。もっとこう心を開いてみろよ」

 ナミはせせら笑った。

「馬鹿じゃないの、恭平」

「なんだよ」

「そんないきなり心開けって、青春ドラマじゃないんだし。とりあえず、楽しく会話するうちに、和んでゆくものでしょうが」

「まあ、そうだろうけど」

 いざ、話をしようとすると十代の少女相手に言葉がつまる。

「質問ごっこしようか」

「なんだよ、それは」

 MAYAはそっけなく聞きかえす。

「おれが質問したら、あんたも質問しかえせるというの」

「ふーん」

 MAYAは光る目でおれを見る。多少興味を持ったようだ。

「じゃ質問どうぞ」

「なぜランキングに登録しない?したらぶっちぎりで一位だろうに」

「ランクづけされるのは学校だけで充分だから。だいたいそれはお互い様だろ?」

「まあな」

「じゃこっちの質問のばん。シデンてのは大昔のアニメからとった訳?」

「なんだそりゃ。シデンといったら紫電二一型に決まってるだろうが」

「ああ、飛行機の名前だったのね」

 MAYAは始めて少し笑みを見せた。

「んじゃ次の質問な。なぜF4EJファントムⅡを使う。難易度DクラスやCクラスなら機体はそれほど関係ないだろうが、Bクラス以上は性能のいい機体のほうが有利だろう。まあ、F4EJならなんとかならんこともないだろうが、もっと楽に戦える機体があるだろ。せめてF2とか。思い入れでもあるわけ?」

「負けたやつからすれば、自分よりスペックの低い機体に負けたほうが悔しいだろ」

 おれは苦笑する。

「やなやつだね、やっぱりおまえは」

「あんただって、F14使ってるじゃない。F14も最新鋭では無いでしょう」

「いいんだよ、F14はいざとなればロボットに変形するから」

 ナミが吹き出した。MAYAはきょとんとした顔になる。

「何の話?」

「いいから次の質問いけよ」

 ナミが笑いながら口出しする。

「この人F15が嫌いなのよ。F15に乗ってておっこちたから」

「それは、悪かったな」

「いちいち謝るなよ、MAYA。ナミ、おまえも余計な口出しすんなよ」

「じゃ、質問するよ。生きていてさ、楽しいと思う?」

「なんだそりゃ、楽しいよ」

「飛行機に乗れなくても?」

「関係ないってそんなの。おまえは楽しくないのか?MAYA」

「ああ」

 MAYAは当たり前のように言った。

「楽しいことなんて何もないね」

「おまえくらいの年頃っていえば普通こう、学校の友達といっしょに遊んだり語り合ったり恋愛したりいろいろあるだろうが」

 MAYAは喉の奥で笑った。

「こないだのチャットみただろう」

「ああ」

「学校もあんな感じだよ、私にとって」

「困ったやつだな、おまえ」

「そうだな」

 MAYAは不思議な笑みを見せる。

「困っている」

「だったらさ、なんとかすんだよ、そんなの」

「ただな」

 MAYAは少しはにかんだような笑顔で言った。

「シデン、おまえと戦っている時だけは少し生きてるって感じがするんだ」

「おまえな、おまえ。そのシデンというのを面と向かって言うのやめてくれるか。頼むから。オフの時は恭平なんだよ、おれは」

 MAYAはくすくす笑う。

「おまえって結構面白いね。恭平」

「いや、おれはおまえのほうが面白いとおもうぞ。時間はまだいいのか。両親が心配するとか?」

「うちの親は、離婚の裁判中だから子供のことには無関心なんだ」

「やれやれだな。ま、いい。じゃこれから遊びにいこうぜ」

「どこへ?」

「ついてくりゃ判るよ」
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