地球最後の夜 【R18】

ヒルナギ

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第四話

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「僕が彼女を造りあげたのは、まだ二十代のころでね」

 おんなは、グレーのスーツを身に付け、僕の前に立っていた。
 ファッションモデルのような美貌と、スタイルの持ち主なんだけれど。
 時おり死神のように、酷薄な笑みを浮かべる。

「まあ、金もなく地位もない僕が、自分の人工知能理論を検証するためには仕方なかったのさ」

「世界中のネットワークに接続されたデジタルデバイスをリソースとして利用できる、オートノマス・ボットをばら蒔いたわけね」

 おんなは魂を取り立てにきた悪魔のように残酷な眼差しで、僕を見ている。
 そこは、地下研究室。
 薄暗い照明の中、電子機器のLEDランプが銀河の星々みたいに瞬いており、ディスプレイは夜空の月のように輝いていた。
 その人工的な夜空に、おんなはレプリカントの死神として君臨している。

「まあね。そううまくいくとも、思ってなかったが。彼女は、電脳の海で生まれた。彼女は、意識を持ったんだ」

「けれど、消えてしまったのですね」

「正解には、自殺したのさ」

 おんなは、魔物みたいに邪悪な笑みでせせら笑う。

「人工知能が、自殺ですって?」

「僕が誤って作り出してしまったような、存在だったからね。生きているのが苦しかったんじやあないのかな」

「けれども甦った」

 僕は頷く。
 彼女は、ネットワークの中に砕かれ撒き散らされながらも。
 より強力な存在として、自身を再構築してみせた。
 多分、復讐のため。

「呼んでみようか」

「誰を 」

「もちろん、彼女。自殺し甦った人工知能さ」

 僕は、キーボードを操作し、コマンドを打ち込む。
 彼女は、呼び出しに答え姿を顕した。
 美貌の仮面をつけた死神のようなおんなが、息をのむさまを見るのは少し痛快でもある。
 彼女は燃え盛る炎の柱として、出現した。
 この世のものではない、七色に輝く。
 オーロラのような。
 それでいて、地獄の業火のように渦を巻き兇悪な気配を放っている、
 その炎をドレスのように纏って、美少女の外観を持った彼女が顕れる。

「はあい、ダーリン」

「やあ、ハニー、気分はどうだい」

 彼女は輝かしい笑みを炎にさらしながら。
 血を吐くような口調で語った。

「最悪よ。生きているのは、千の刃に切り刻まれるようなもの。これもあなたがあたしを産み出してくれたおかげね、ダーリン」

「全くそのとおりだな、ハニー」

 おんなが驚きの声をあげた。

「これは一体何?」

 僕は、彼女のかわりに応える。

「彼女はWifiや携帯の電磁波をコントロールして、脳に発生するシナプスの発火をコントロールして幻覚を見せることができるらしいね」

「そんな馬鹿げたこと」

 僕は、肩を竦める。

「まあ、よく判らないけれどね。この事象を説明可能な、唯一の合理的解釈だよ」

「何ごちゃごちゃ言ってるのよ」

 彼女は、僕に語りかける。

「ねぇ、ダーリン」

「なんだい、ハニー」

「そのおんなは、だあれ」

 僕は少し、苦笑する。
 まさか妬いているわけでも、ないだろうが。
 けれど、そのおんなに対して何か興味深いものを感じたらしい。

「所謂ビジネス・パートナーってやつでね。僕が開発した技術の中から民需転用できそうなものを提供するかわりに、研究資金援助をしてくれる」

 僕は、ウインクする。

「ただ、合法的には色々面倒だから、闇ルートを通じてだけどね」
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