21 / 40
第21話「おれたちは大馬鹿だ」
しおりを挟むやつは趣味として、コークの生成をやっていた。
やつの主張ではもともとコークの身体依存度は煙草より低いが、精神依存度も生成方法の工夫によって低くできるという。
ドクター・グラビティはマリファナ並に安全なコークを開発できたと、のたまう。
いつしかやつは自分の作品を、世にしらしめたいと思うようになったらしい。
そしておれは、戦場で麻薬こそ我が運命と思ったおとこである。
おれたちはいうなればエヴァンジェリストとして、コークのビジネスにのめり込むようになった。
いつしか西海岸でおれたちの作品は、それなりに評価されるようになる。
おれたちはコカノキを栽培しそこからコークを生成するところまで自前でやっていたので、市場で流通しているものより一桁安く提供できた。
ただ、おれたちはそれがやっかいごとをひきおこす種であることを、理解していなかった。
おれたちは、運命に導かれコークのビジネスを行う求道者のつもりである。
まあ、ただの馬鹿者であったといってさしつかえない。
しかし、世の中には純然たるビジネスとしてコークを扱うものがいる。
かれらはおれたちとは違って、ちゃんとした(ちゃんとした?)おとなたちであり、売り上げをあげなければ上司にどやされるビジネスマンだ。
かれらからすれば、高品質のコークをふざけた低価格で売るおれたちは、許し難い馬鹿者である。
かれらはつまり、メキシカン・マフィアであり麻薬カルテルであった。
カルテルの連中は、おれたちに幾度か警告をあたえる。
その全てに嘲笑で応えたおれたちに、カルテルの連中は実力行使にでた。
だが、そこから先はむしろおれたちの得意分野である。
おれたちは、マッチョなメキシカン・マフィアを相手にギャングごっこをはじめた。
まるで1930年代の禁酒法時代からやってきたギャングみたいに、街中ではでな銃撃戦をおれたちはやらかす。
違うのは、死をまき散らすのがトンプソンやバラライカではなく、ストーナーやカラシニコフであったところか。
おれたちは、はじめは戦闘員を削りあうただのギャングごっこをやっていた。
しかし、ガキの遊びが常にそうであるように、いつしか互いに一線をこえていくチキンレースとなってしまう。
まず、やつらがおれたちの表向きのオフィスへグレネードを撃ち込んだところから、掛け金を積み上げていく遊びがはじまる。
おれたちは、その報復としてロスの高級住宅街にあるカルテル幹部の邸宅へ、突入を行った。
暗視スコープとサプレッサー付きPDW・MP7を装備した部隊を率いて、邸宅のガードマンを皆殺しにする。
そしてカルテルの幹部をベッドから引きずりだして、尻にナイフを突き刺した。
これに怒ったやつらは、おれたちのコークのプラントをRPGを持ったならず者たちに襲撃させ、焼き払ってしまう。
これにはおれたちも、かなり頭にきた。
おれたちは退役したB2爆撃機を手に入れると、MK82爆弾を使ってコロンビアにあるやつらのプラントを村ごと消滅させる。
さらにカルテルの最高幹部に、警告した。
次はメキシコシティにある、おまえたちの家にぶちこんでやると。
これは、おれたちのしでかした致命的な失敗だった。
なぜなら、カルテルの連中は自分たちが何者であるかを思い出したからだ。
やつらにしてみれば馬鹿なくそガキであるおれたちを、力ずくで排除できなかったのは屈辱だったろう。
けれどやつらはなりふりかまわず、やつらの友人を利用することにした。
カルテルの連中は、ビューローにもカンパニーにも上院議員にも友人が沢山いる。
さらにふざけたことには、DEAにも協力者がいるのだ。
おれたちの友人といえば、年間売上100万ドル程度のギャング団を率いるアウトローくらいで、やつらといえばおれたちが死ねば嘲り笑っておれたちのためにコニャックを飲むような連中だ。
表の世界から攻められれば、おれたちはひとたまりもない。
かくしてギャングごっこは終わりをつげ、ビューローとDEAに追われて西海岸におれたちの居場所はなくなる。
命からがらシウダ―フアレスのスラムへと逃げ込んだおれたちの前にやってきたのは、驚いたことにカンパニーのエージェントだった。
そいつはジョン・スミスと名乗ったが、後で聞いた話ではロシア系アシュケナージである。
おまけに元スペツナズ・アルファ部隊出身の、外部委託エージェントだ。
スーパーボウルから抜け出してきたかのように身体のがっちりした大男のスミスは、安ホテルでテ キーラを飲んでいたおれたちの前に現れるとこういった。
「ラングレーには、おまえたちを評価しているものもいる」
「へえ?」
おれは、呆れた声をだしたがスミスは気にせず話を続ける。
「おまえたちがやったことは、ラングレーやビューロー、それにDEAの人間が一度はやってみたいと思っていたことだからな。ただし」
スミスは、にやりと笑う。
「残念ながら、そこまでの馬鹿はいなかったということだ」
おれは、苦笑する。
「いかにもおれたちは大馬鹿だが、カンパニーはその馬鹿に何かしてくれるというのか」
スミスは、笑いながらうなずく。
「カルテルの相手は、そろそろ飽きたろう。新しい遊び相手を、紹介してやるよ。コンビナートの連中と、遊べばいい」
「なんだそりゃ」
おれの問いに、隣にいたドクター・グラビティが答える。
「ロシアン・マフィアだよ」
ほう、おれは吐息をつき、スミスは頷く。
「やつらは極東の島国で、アフガンのヘロインをさばいている。そいつらを叩くんなら、ラングレーもDEAも文句はない」
おれは、狼のように笑う。
「いいぜ。やろうじゃないか」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
最強転生悪役令嬢は人生を謳歌したい!~今更SSクラスに戻れと言われても『もう遅い!』Cクラスで最強を目指します!~【改稿版】
てんてんどんどん
ファンタジー
ベビーベッドの上からこんにちは。
私はセレスティア・ラル・シャンデール(0歳)。聖王国のお姫様。
私はなぜかRPGの裏ボス令嬢に転生したようです。
何故それを思い出したかというと、ごくごくとミルクを飲んでいるときに、兄(4歳)のアレスが、「僕も飲みたいー!」と哺乳瓶を取り上げてしまい、「何してくれるんじゃワレ!??」と怒った途端――私は闇の女神の力が覚醒しました。
闇の女神の力も、転生した記憶も。
本来なら、愛する家族が目の前で魔族に惨殺され、愛した国民たちが目の前で魔族に食われていく様に泣き崩れ見ながら、魔王に復讐を誓ったその途端目覚める力を、私はミルクを取られた途端に目覚めさせてしまったのです。
とりあえず、0歳は何も出来なくて暇なのでちょっと魔王を倒して来ようと思います。デコピンで。
--これは最強裏ボスに転生した脳筋主人公が最弱クラスで最強を目指す勘違いTueee物語--
※最強裏ボス転生令嬢は友情を謳歌したい!の改稿版です(5万文字から10万文字にふえています)
※27話あたりからが新規です
※作中で主人公最強、たぶん神様も敵わない(でも陰キャ)
※超ご都合主義。深く考えたらきっと負け
※主人公はそこまで考えてないのに周囲が勝手に深読みして有能に祀り上げられる勘違いもの。
※副題が完結した時点で物語は終了します。俺たちの戦いはこれからだ!
※他Webサイトにも投稿しております。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる