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[Worldtrace]

剣聖VS剣鬼2

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白兵戦か、思えば俺はこの『世界』でそれ以外の戦い方はした事が無い。魔力が無いから仕方ないけどもう少し上手く立ち回りたかったなと思う。

アーサー「むん!」

俺の右上から剣が迫る。俺は左下に受け流し次は俺が振り下ろす。アーサーは半身になり最小限の動きで躱す。お互いに剣を振り下ろしぶつけ合っていた。3回程ぶつけたその時、パキィンと音がする。ゴメスの刀が折れた。

俺「チッ!」

アイリス「シリウス!」

エレナ「くそ!」

ジン「シリウス!」

俺は直ぐに残った柄をぶん投げる。

アーサー「小賢しい!」

アーサーはガキンと剣で跳ね飛ばし兜割りを仕掛け、俺は居合い抜きで刀を抜く。互いの刃が火花を散らしながら擦れる。
最後にカァンッと音を出し弾かれた。アーサーはすぐさま体勢を立て直し、斜めから横からと連続で剣を振る。俺はその攻撃を避け後ろに退がる。

俺「危なかった。」

アーサー「フン!あのままなら楽になれたのにな。」

俺「そんな簡単に死ぬか!」

さてとここから本番だな。まぁ、一応さっきまでの戦いもかなり本気だけど。
お互いの間合いに入り今回2度目の鍔迫り合いになる。ただ今度は思いっ切り押し返された。最初の時の受け流しを警戒していたから踏ん張りが足りなかった。完全にペースを握られている。
俺は押されて地面に倒れる。ヤバい斬られる。アーサーは横一閃に剣を振る。俺は転がりながら回避するが、アーサーの連撃は続き今度は俺の立ち上がった所で足を狙って来た。俺はそれを躱すが、また体勢が崩れる。今度は顔面狙いだ。俺は仰け反り、鼻先の1cmくらいの距離をアーサーの剣が走り抜ける。俺はそのまま距離を取る。危なかった。この『世界』の平均的な鼻の高さなら斬られてた。
地球にいた時、お袋に「お前の鼻はお爺ちゃんと同じ形だ。」と言われた事を思い出す。要するに俺の鼻はお袋の親父、爺ちゃんからの遺伝だ。今日のこの時程この鼻に産んでくれたお袋に感謝した事は無い。

アーサー「フン、普通の人族と同じ高さなら斬れたのだがな。」

こいつワザと鼻狙ったのか?

俺「嫌味か!」

アーサー「フッ、好きに取れ。」

ふぅ~、落ち着け。完全に奴に飲まれてる。脇構えで一気に近付き、そこから斬り上げる動きに変える。アーサーの剣を跳ね上げ返す刀で斬るつもりだった。途中までは予定通りなんだけどアーサーの剣には当たらなかった。俺が仕掛けた時にはスウェーをしていた。俺は振り下ろしに切り替え動く。しかしアーサーはそこまで読んでいたのか、俺の2撃目を受け流し上段構えから振り下ろそうとする。

俺「く!」

俺は素早く前転でアーサーの脇をすり抜ける。お互い振り向きながら俺は下から、アーサーは上から突きを繰り出す。互いの鎬を削り合い、弾いて押し返す。アーサーが剣を振り下ろし、俺は刀を振り上げる。しかし互いが紙一重で躱す。

アーサー「フッ、これでも駄目か。」

俺「そう言う割には楽しそうだな。」

アーサー「何を言う。楽しいさ。お前は楽しく無いのか?」

俺「俺は何度か肝が冷えてそれ所じゃないよ。まぁ、確かに見てる分に楽しいかもな。」

映像として見るだけなら良いかもとは思う。

アーサー「すぅ~、はぁ~。さぁ、続きだ。」

元気だなこいつ、無尽蔵のスタミナでも持ってんのか?俺も呼吸を整える。
アーサーは八相の構えで立つ。俺は霞の構えに変え、睨み合いながら近付く。俺はアーサーが動く前に突きを放つ。相変わらず2連撃で突きを出しても軽く躱される。これくらいは予想している。俺はもう一度突きを繰り出す。その3段突きを放ったタイミングでアーサーは上から抑える様に受けるモーションに入る。俺はそのタイミングで刀を回転させ逆にアーサーの剣を払い除ける。

アーサー「何!」

そのまま体当たりしてアーサーの体勢を崩し、俺は刀を振り下ろす。だが一瞬でアーサーが視界から消える。反応速度の違いとでも言うのか、奴はいつの間にか俺の右側面に立っていた。
俺の攻撃は空振りに終わり、既にアーサーは次の攻撃モーションに入っている。俺の首を狙った横一閃の一撃が迫る。俺はそれを躱しアーサーの正面に立つ状態になり改めて足を狙う。たがアーサーは素早く後ろに跳び退く。

アーサー「ふむ。中々、意表を突いた動きをするな。」

俺「いや、お前程じゃねぇよ。」

それにしてもアーサーの動きの良さが気になる。何故か俺の行動を完璧に読まれている。何かの特殊能力か?まぁ、こんなに強いんだそれなりの能力があって当然か。
改めて意識を集中する。疲れてはいるけど流石に3回目、今までより素早く[気]を身体に纏う。ただ今回は張り巡らせる箇所を更に細分化する。全身の神経から筋肉、それこそ細胞1つに至るまで流し感覚を研ぎ澄ます。肌に触れる空気すら情報として感じ取れる様に集中する。
アーサーも流石に何かを感じているらしく構え直す。

俺「行くぞ。」

アーサー「ああ!来い!」

俺は首を狙い横薙ぎに振る。アーサーは少し首をずらして攻撃を躱し、今度はアーサーが振る。俺は下から刀を当て軌道を上に逸らし空いている胴を狙うが、アーサーは剣を引き戻し受け止める。
すかさずアーサーが振り下ろす。俺はそれを躱すと下から斬り上げるがアーサーも回避する。
互いに剣を振り刃がぶつかるとそのまま3度目の鍔迫り合いに移行する。
今回の3度目にして初めてお互いの全体重をかけた押し合いが始まる。ただ俺より体格の良いアーサーの方に分がある。俺は突き飛ばされる前に離れる。
アーサーが剣を振り下ろす。俺は右に躱し、アーサーが俺を追い掛ける様に横薙ぎに振る。俺が後ろに退がると今度は突きを繰り出す。
俺はそれを受け流し刀で上から押さえ込む。アーサーの右肩と俺の左肩が当たる。数秒の睨み合いの後、跳ね除ける。アーサーは離れながら剣道の引き面の様に俺の頭を狙う。それを躱し、俺は突きを繰り出す。また寸前で躱されるがここに来てアーサーの右頬にかすり傷を負わせる。

アーサー「ふぅ、今日はよく頬を斬られる。さっきも3人同時に相手をしていた時に斬られた。」

俺「フッ、あの3人も中々やるだろ?」

アーサー「簡単に勝てるとは思っていないさ。」

仕切り直しの第三ラウンドだ。集中力を切らせば死ぬかも知れない。ただこいつとのこの一騎討ち、多分俺が勝たなきゃ俺達の勝ちは無いだろう。気負い過ぎるのは良くないだろうが、当然色々考える。
落ち着け集中だ。ただ冷静に、勝つ事だけを考えよう。
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