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第5章…両想いか片想いか

好きな女の子

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 「えーっ!? 滝川君好きな子いるの!? 誰!? 誰!? 誰!? 誰なの!? 教えて!!」


白坂がガチで食いついてきた。白坂は恋バナが大好きな女の子。他人の恋愛事情に目がない。


「滝川君、好きな子って誰? 教えてよ、友達でしょ!?」

友達って言ってくれるのは嬉しいがそこまで親しくないと思う。


「ね~、教えてよ~滝川君~。滝川君の恋、私が精一杯応援するから!!」

別に応援してもらわなくてもいいから。

「教えてよ~」

しつこいな。マジで勘弁してくれ。


「ね? 教えて、滝川君。お願い」


顔の前で両手を合わせ、上目遣いでオレを見てお願いする白坂。
白坂お得意のおねだりモード。

ヤバイ、可愛い。オレはついうっかりおねだりする白坂にときめいてしまった。

顔は可愛いし、バスケの練習後なだけあって汗びっしょりで、シャツが透けてブラが見えてる。
ついついいやらしい視線を送ってしまう。


……だが、負けない。オレは美希一筋だ。一途なのだ。死んでも浮気はしないのだ。
美希以外の女の子に心を奪われるなんてことはない。オレをメロメロにできるのは美希だけだ。


「教えてよ~」

「……イヤだ」

「どうしても教えてくれないの?」


当たり前だ。ハッキリ言って白坂は口が軽いから信用できない。
信用できる人だったとしても恥ずかしくて言えないけど。
無理。絶対無理。


「よーし、それじゃこの私が滝川君の好きな子を当ててやる!!」


な、なんか白坂が燃えている。なんでそこまでしてオレの好きな女の子を知りたいんだろうか……理解に苦しむ。


「滝川君の好きな子は……う~ん……
わかった!!  生徒会長の笹村ささむら暁美あけみちゃんだ!!
どう!? 当たりっしょ!?」

「違う」

「え~っ、そんなぁ~……」

なんでそこで生徒会長が出てくるんだよ。美人だとは思うけどほとんど関係ないし話したこともない。完全な赤の他人だ。


「くっそー、暁美ちゃんすごく綺麗な人で男子からモテモテなのに~。え~と、他に3年生の女の子で可愛い子……誰がいたっけな……」

なんで3年生と決めつけてんだよ。オレの好きな女の子は2年生だよ。絶対教えてやらないけど。


「わかった!! 3-E書道部の霧島きりしま真奈美まなみちゃんだ!!」

「違う」


「わかった!! 3-Cの田中たなか恭子きょうこちゃんだ!!」

「違う」


「わかった!! 3-G軽音楽部の長山ながやま真琴まことちゃんだ!!」

「違う」


「わかった!! ~~~」

(以下略)



―――



 白坂による、オレの好きな女の子当てゲームがずっと続く。

……なんだよこれ。いつまでやるんだ白坂。こんなこと続けて何になるんだよ。恋バナ好きにも限度があるだろ。早く帰りたい。もうすぐ21時じゃないか。

白坂が当てずっぽうで3年女子の名前を次々と言っていくが、3年限定にしている限り永遠にオレの好きな女の子を当てることはできない。


武井が待ちくたびれたといった表情で
「おーい、麻衣。そろそろ帰ろうぜ」
と言った。

ナイス武井! これで帰れる!
と思ったが、白坂は諦めない。


「ごめん進一君、もーちょっと待って。私、滝川君の好きな子を当てるまで帰らないから」

…………
なんでだよ。なんでそこまで意地になるんだ。白坂には関係ねーだろうが。

もう観念して素直に好きな女の子を教えるべきだろうか。

……イヤ、やっぱり言いたくない。こうなってくるとオレも負けたくなくなってきた。意地でも教えてやらない。


 白坂はまだ好きな子を当てるゲームを続ける。

しばらくすると、白坂が諦めムードといった表情になった。やっと終わるか。マジで苦行だった……


「お、おのれ……ハア、ハア……これで3年女子の可愛い子は大体言い尽くしちゃったな……
―――ハッ、まさか、滝川君……」

やっと気づいたか。オレの好きな女の子は3年生ではない、ということに。


「まさか、滝川君って……男の子が好きなんじゃ……」

「違う!!!!!!」

なんでそうなるんだよ!!


「違うの?だって、私が思いつく限り可愛い子の名前言ったのに全部違うって言うから……
ねぇ、好きな子って誰なの……? 私、わかんないよ。教えてよ~」


別にわかんなくてもいいじゃねーか。これ以上付き合いきれん、もうオレのことなんかほっといてくれよ……


「教えねーよ。いいかげん諦めろ」

「イヤだ! 気になるもん。滝川君がどうしても言わないというのなら、私にだって考えがあるんだから!」

……考え……?
え、何?


白坂は、自分のバッグの中から糸を結びつけた五円玉を取り出した。

???? 何をする気だ?


「ふふ、この催眠術作戦で、滝川君を操って好きな子の名前を喋らせてやる!」

白坂はそう言うと、糸のついた五円玉をオレの顔の前にぶら下げてゆらゆらと揺らし始める。

「あなたはだんだん好きな子の名前を喋りたくな~る、喋りたくな~る……」


…………

マジでなんだよこれ。乗った方がいいのか? 操られたフリをすればいいのか?
たとえ操られてもオレは言わないぞ。催眠術くらいでゲロるほど美希への気持ちは軽くないんだ。

オレが無反応を貫いていると、白坂は催眠術作戦を諦め、五円玉をバッグにしまった。


「くっそ~、催眠術作戦もダメか……仕方ない。奥の手を使おう」


白坂は突然オレのわき腹を触ってきた。
え!? 何!? 今度は何すんの!?


「こちょこちょこちょこちょこちょこちょ」

「あははははははっ、や、やめろ、くすぐったい!!」


白坂はオレの腹をくすぐる。
すっかり忘れてた、白坂はくすぐりテクが神の域に達しているんだった。もし人をくすぐる全国大会があったら、優勝を狙えるんじゃないかってくらい、くすぐりが上手い。


「あははははははっ、やめろ、やめてくれ白坂!!」

「うっふっふ。やめてほしければ好きな子の名前を教えて。教えてくれるまでくすぐるのをやめない」


……!!!!!! 鬼畜だ。これいじめなんじゃないか? 訴えれば勝てるんじゃないか?


「あはははっ、かは、はははっ!!」

くすぐられて笑いすぎてだんだん息が苦しくなっていく。人間って確かくすぐられ続けると死ぬらしい。ヤバイかもしれない。ピンチだ。


「滝川君しぶといなっ! もっとくすぐってやる!」

白坂はオレの脇の下、背中をくすぐる。白坂の身体がオレの身体と密着する。


―――!?


「―――ちょ、ストップ! ストップ!!」

む、胸が当たってる! 胸が当たってるから!!


オレの腹の部分に柔らかい感触がある。白坂はオレの身体をくすぐるのに夢中になるあまり、胸を押しつけていることに気づいていない。

白坂は胸がでかい。美希の方がでかいと思うけど。バスケするのに邪魔なんじゃないかってくらい豊かな胸を持っている。


ムクムクッ
白坂の胸の感触を感じているうちに勃起してしまう。

ま、まずいっ! 白坂と身体が密着しているこの状況で勃起なんかしたら、白坂にバレてしまう!
なんとかして勃起を鎮めないと……

鎮まれ! 鎮まれ!!

むにゅっむにゅっ

ビンビンッ


無理だ。先日美希の胸を見ただけで勃起していたオレが、胸の感触を直接感じて興奮を抑えられるわけがない。意識すればするほど、オレの股間は充血する。

「あはははっ、く、ぐっ」

くすぐり攻撃に耐えながらも興奮を鎮めようと頑張るが、ますます大きくなる。


「話せば楽になるよ~滝川君……
……!?
!?!?!? キャッ!?」


オレの硬いアレが腹に押しつけられていることに気づいた白坂はびっくりしてオレから離れる。


「ハア、ハア、ハア……」

やっとくすぐりから解放されたオレは、肩で息をする。
なんとか息を整えたが、その直後オレの心は恥ずかしさでいっぱいになる。

……やっちまった……
オレは顔が真っ赤になる。白坂も顔を真っ赤にしてオレを見る。

…………
オレと白坂との間に気まずい空気が流れる。


「……ご、ごめんね、滝川君。私、つい調子に乗っちゃって……」

白坂はものすごく申し訳なさそうな顔をして、オレに謝った。
おい、やめてくれ。急に優しくなるのやめてくれ。さっきまでの威勢はどうしたんだよ。


「ほ、本当にごめんなさい……」

頼むから気を遣わないでくれ。余計恥ずかしくなる。
マジでどうしよう……オレ、白坂と同じクラスなのに。明日からめっちゃ気まずい。


「? どうしたんだお前ら? なんで麻衣も滝川も顔赤いの?」

武井が不思議そうな顔をしてオレと白坂に尋ねる。見てたくせにわかってねーのか武井。まあわかってないなら好都合か。

『お前の彼女に勃起したアレを当てちゃった』なんて死んでも言えない。下手すりゃ武井に殺される。


「……な、なんでもないよ進一君。もう帰ろう」

白坂は武井の手を握って、体育館から出ようとする。

「あれ、麻衣。滝川の好きな子はもういいのか?」

「……今日はもういいや」


そして、白坂はオレの顔を見る。

「滝川君、私たちはこれで帰るから。また後日、次は絶対滝川君の好きな子を教えてもらうから。覚悟してね?」


そう言って白坂は武井と一緒に帰っていった。

白坂は反省はしてるがオレの好きな女の子を知ることは諦めてはいない。
武井はオレの好きな女の子を知っているけど、白坂にバラすことはないと思う。たぶん。


「……はあ……」

今度また白坂に質問責めされるかと思うと、気が重い。オレはでっかいため息を吐いた。
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