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おまけ
ささやかなもの
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冷えた布団を捲り上げ、シーツに足を滑らせる。力なく置かれたケースケさんの腕を持ち上げ、そっと胸に寄り添った。
背中側は冷たくて、寄せた額は温かい。オレより高い体温を貰って、布団の中で息を吐く。背が伸びケースケさんと同じほどになったけれど、こうして守るように抱きしめてもらうのは心地いい。
すっかり眠っているケースケさんは勝手に腕を動かしても起きはしない。だから勝手に身を寄せる。
でも――。
潜り込んだ布団の中。熱くなって息苦しくなって、「ぷはっ」と布団から顔を出す。冷えた空気が少し入って、ケースケさんの首元を通った。それに反応してなのか、意識のなかった腕が動く。薄い寝息が止まり、確認するようにオレの体が撫でられる。
起こしてしまわないように、体の前に縮めた手の指先すら動かさない。
優しい手はオレの背中を伝い頭を撫で、そのまま頭を抱えるように止まった。
ケースケさんは眠りが浅い人ではない。少し明るいうるさいくらいでは起きないし、オレがこうして後からこっそりその腕の中に無理やり収まろうとも今まで起きたことはない。
だけどもいつもこうして、眠ったままオレのことを撫でてくれる。
オレの存在を確認して、無理やり作った居場所を許してくれる。
「大好き」
いつも言っている言葉。夢の中でも、伝わればいい。
---
体の下で雪の腕が潰されている。
こいつの寝相はそう悪くはない。最初からずいぶんと縮こまって寝ていたし、未だに大の字になっていることはない。だから、これはこいつの癖なのだろうと思う。
一緒に寝るようになっていつからか、――俺は簡単に寝れる人間なので気付いたころにはという話だが、ふと夜中にトイレで目が覚めた時なんかにこうして雪の腕が俺の体の下にある。俺に抱き着くようにしているときもあれば、体は開かれ、ただその腕だけが俺に潰されていることもある。
最初は今まで一人で生きてきた俺の寝相が悪く、こいつを潰してしまっているのかと思った。なんせ今までは長いこと一人、ベッドで大きく寝ていたわけだ。突然来たものに対応できなくても当然だろう。
だけどもあまりにも回数が多いし、雪が苦しんでいる様子もない。大の男の体は重いだろうが、腕一本抜け出せないほど太ってもいない。
だから結論として、おそらくこいつはわざと俺の体の下に腕を突っ込んでいる。理由はわからない。わからないが、俺は別にそれでも寝れているし、こいつもそれがいいのならそれでいいと思う。
多少、血が止まったりしないんだろうかと思い気付けばどかしてはいるけれど、まさか寝ている間ずっと潰れているわけでもないだろう。
腕をどかし、体が楽になるように仰向けに転がす。抵抗なく動いた雪は深く息を吸い、吐いた。
俺も同じように布団に入りなおし、先ほど潰れていた雪の手に触れる。手を握って寝るわけじゃない。ただ少しだけ手の甲で確認して、そのまま眠る。
自分のではない体温が布団のぬくもりを保ち、目を閉じれば夜に静かに溶け込んでいった。
背中側は冷たくて、寄せた額は温かい。オレより高い体温を貰って、布団の中で息を吐く。背が伸びケースケさんと同じほどになったけれど、こうして守るように抱きしめてもらうのは心地いい。
すっかり眠っているケースケさんは勝手に腕を動かしても起きはしない。だから勝手に身を寄せる。
でも――。
潜り込んだ布団の中。熱くなって息苦しくなって、「ぷはっ」と布団から顔を出す。冷えた空気が少し入って、ケースケさんの首元を通った。それに反応してなのか、意識のなかった腕が動く。薄い寝息が止まり、確認するようにオレの体が撫でられる。
起こしてしまわないように、体の前に縮めた手の指先すら動かさない。
優しい手はオレの背中を伝い頭を撫で、そのまま頭を抱えるように止まった。
ケースケさんは眠りが浅い人ではない。少し明るいうるさいくらいでは起きないし、オレがこうして後からこっそりその腕の中に無理やり収まろうとも今まで起きたことはない。
だけどもいつもこうして、眠ったままオレのことを撫でてくれる。
オレの存在を確認して、無理やり作った居場所を許してくれる。
「大好き」
いつも言っている言葉。夢の中でも、伝わればいい。
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体の下で雪の腕が潰されている。
こいつの寝相はそう悪くはない。最初からずいぶんと縮こまって寝ていたし、未だに大の字になっていることはない。だから、これはこいつの癖なのだろうと思う。
一緒に寝るようになっていつからか、――俺は簡単に寝れる人間なので気付いたころにはという話だが、ふと夜中にトイレで目が覚めた時なんかにこうして雪の腕が俺の体の下にある。俺に抱き着くようにしているときもあれば、体は開かれ、ただその腕だけが俺に潰されていることもある。
最初は今まで一人で生きてきた俺の寝相が悪く、こいつを潰してしまっているのかと思った。なんせ今までは長いこと一人、ベッドで大きく寝ていたわけだ。突然来たものに対応できなくても当然だろう。
だけどもあまりにも回数が多いし、雪が苦しんでいる様子もない。大の男の体は重いだろうが、腕一本抜け出せないほど太ってもいない。
だから結論として、おそらくこいつはわざと俺の体の下に腕を突っ込んでいる。理由はわからない。わからないが、俺は別にそれでも寝れているし、こいつもそれがいいのならそれでいいと思う。
多少、血が止まったりしないんだろうかと思い気付けばどかしてはいるけれど、まさか寝ている間ずっと潰れているわけでもないだろう。
腕をどかし、体が楽になるように仰向けに転がす。抵抗なく動いた雪は深く息を吸い、吐いた。
俺も同じように布団に入りなおし、先ほど潰れていた雪の手に触れる。手を握って寝るわけじゃない。ただ少しだけ手の甲で確認して、そのまま眠る。
自分のではない体温が布団のぬくもりを保ち、目を閉じれば夜に静かに溶け込んでいった。
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何だがとても綺麗な世界だと思いました。雪の境遇や主人公との生活が特別良い訳では無いですが、当たり前の幸せや生活が何なのか2人の生活から分かる気がしました。これから2人がどうなるのか楽しみです!
ありがとうございます。起伏の特にないぱっとしない話ですが、それが全てなのでそんなところを気に入っていただけると嬉しいです。