15 / 155
絶対落としてみせるから!
4
しおりを挟むひっそりと続くホテル街に吸い込まれていくカップルたち。
その中で一際目を引く彼を、見間違えるはずなかった。
「類くん……」
「なんでここにあんたがいるんだよ。てか離せ」
私は口をむっとさせて首を横に振る。
と、隣にいた女がぎゅっと類くんの腕に一層強く絡まるのが見えた。
「ねえ、何なのこの子。気味悪いんだけど」
「離してください、手。……私は類くんの……っ」
わかってる、私にこんなことを言う権利なんてない。
私だって類くんを好きになって日が浅い。
だけどそれでも、類くんが私以外を抱くなんて考えたくないんだもん。
「か、彼女候補だから!生温い気持ちで手を出すなら私を倒してから行ってください!」
ついでに彼女の腕を振り解いて類くんを抱き捕まえながら言ってやった。
類くんはと言うとくそめんどくさいと言わんばかりの表情で諦めている。
「意味わかんない、ほんときもいんだけど!もーしらけた、帰るわ」
ヒールの音をカツカツと豪快に鳴らしながら彼女は駅の方に戻っていった。
私はその姿が見えなくなるまで息の吸い方を忘れてしまっていたみたいで、やっと正気に戻ってゼーハーと息をする。
だがそれを許してくれない人が約一名。
「お前なぁ……、何気持ち悪い事してんだよ。ストーカーだぞ、立派な」
「い、いひゃいです、はなひて…」
ほっぺを片手でむにぃっとされてもきゅもきゅと挟まれる。
「あんたとは付き合っても何でもないんだから、俺が何してようがとやかく言われることないだろ」
「……だって、いやだったんだもん」
しょんぼりとそう言うと彼は手を離して盛大にため息をついた。
泣きそうになりながら私は類くんの服の裾を掴む。
「あんなたいして好きでもない女抱くくらいならめちゃくちゃ類くんのこと好きな私とえっちしてよ!」
きりっと彼を睨みつける。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる