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ストーカー上等!

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少し冷めたアジフライをもぐもぐ食べながら、話しやすい田辺さんとの会話は盛り上がる。


「やっぱり類くんって中学からモテてたんですかー」

「うん、あの時からこんだけスカした性格してたしさ、ほら女子ってクールなのが何か好きでしょ」


うんうん、わかるわかる。

冷たくされればされるほど夢中になっちゃうっていうか。


「高校に入ってからは身長ももっと伸びて、それまでは女子なんか興味なかったくせに取っ替え引っ替え」

「きゃーっ」

「昔から特定の相手作んなくてさ、とにかく遊び人。ほんとにこんなののどこを好きになったの?」

「田辺、黙れ」


イライラしながら類くんはコーヒーを飲んで田辺さんを睨んだ。

そんな姿まで様になるのは本当にずるい。


「だって、類くんほんとは絶対優しいから」

「優しい?…人の感性っていろいろだね」

「おい」

「てか顔とか家が金持ちだからとか、そんなんじゃないんだ」


穏やかな顔して意外と田辺さんも結構ズケズケ言うタイプらしい。

まあ、そうでもなければ類くんと友達なんてやってらんないか。


「顔もスタイルもそりゃかっこいいですけど、なんかわかんないけどもっと類くんのこと知りたいって、類くんの事ばっか考えちゃうから。これが恋なんじゃないのかなーって」

「なるほどねえ。めっちゃ好かれちゃってんじゃん、一条」

「…関係ない」


ふん、と類くんはそっぽを向いてしまう。

と、チャイムが鳴り響いて周りの人たちがざわざわ動き出した。


「あ、予鈴だねー。じゃあ俺授業行くから」

「待て田辺、俺も行く」

「何言ってんの一条くん。君昼飯食ったら帰るって言ってたじゃん?」

「……お前、空気読めよ空気を」


にやぁっと笑って田辺さんは私にバイバイと手を振って颯爽と食堂を出て行ってしまった。

周りを見たら、さっきまでまだ人は残っていたのにもうちらほらとしかいなかった。

そして黙って類くんが立ち上がるから、私も慌てて食器を片付けて類くんの後を追う。


「…あんたどこまでついてくる気」

「どこまでも?」


きょとんとした顔で答えたらまた盛大にため息をつかれた。
 
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