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君じゃなきゃダメなんだ!

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ゆっくりと私は今まであったことをざっくり話した。

優斗は黙って私の話を聞いてくれる。


「それまで全然いい感じだったのに、優斗としてたって過去の事なんだけど話したら雰囲気変わっちゃって……。今もまだ優斗としてるって思われたのかなって…」


私がほろほろと泣くから優斗はティッシュで私の涙を拭ってくれた。


「そりゃ自分とした後に他の男の話出されたらいい気がしないかもだけど、そういうの全然気にしなさそうなのに……」


言ってて悲しくなってきて、またひっくひっくと鼻をすすって涙が出てくる。

もうどうしたらいいんだろう。
どうして余計な事ばかりしちゃうんだろう。

類くんの気持ちが全然わからなくて、辛くて仕方がない。

頭の中でそんな風にぐるぐると考えていたら、不意に優斗が私の顎を引いて唇を重ねた。


「っま、待って優斗っ」


顔を背けて唇を離しても、またクイッと頬を掴まれてキスされてしまう。

優斗にこんなに迫られた事がなかったから怖くなって、バシバシと彼の胸を叩いた。


「待って優斗!話聞いて!」


すると今度は優斗がぎゅっと私を抱きしめた。

制服に涙やメイクがついてしまいそうで抵抗するけど離してくれない。


「だめなの、優斗。私、約束したから…」

「…あいつと?何を?」

「もう他の誰ともこういう事しないって。類くんとだけだって」


そう言うと、優斗の手の力は一瞬強くなって、だけど徐々にそれを緩めた。


「あいつは他の女としてるかもしれないのに?」


優斗の言葉がチクリと胸を刺す。

そうだよ、類くんは私に誰にでも簡単に股を開くって言うくせに、自分だって言い寄られたら簡単に抱くんだもん。

私の気持ち知ってて、都合いい時だけ抱いて、機嫌悪くなったら帰れって言って。

類くんは誰でもヤれたらいいから簡単にそう言うんだ。

わかってる、のに。


……どうしても、類くんがいい。


「……うん。類くんじゃなきゃだめなの…」


心は全然晴れなくて。

そろそろ天気は梅雨が明けそうだって言うのに。

私の心はまだ暗いままだった。
 
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