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俺だけ見てろ

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手首を引っ張るついでにずっと握っていたコーンスープの缶も取られてポールの上に置かれる。

良くも悪くもタイミングぴったりに登場した、超不機嫌顔の類くんが、私を捕まえたまま優斗を睨んだ。


「…何してんだよ、お前ら」


普段よりも声のトーンがさらに低くくぐもっている。

私はそのキレ具合にゾクっとしながらも、手首が痛過ぎて喚いた。


「ちょっと類くん!手首痛い!離して!」

「うっさいな!あんたが馬鹿みたいに困った顔してるから助けてやったんだろうが!むしろ感謝しろ!」


もう助けたとかこの態度で一体なんなのこの人ーっ!

むっとして言い返してやろうとすると、今度は優斗に腕を引かれて私はよろけた。


「明子に乱暴するな」

「お前が先にしてたことだろ」

「中途半端な気持ちであんたが明子を振り回すからだろ。俺は明子に好きだって伝えた」


それを聞くと類くんは一瞬ピクッと眉を動かしたが、息を深く吸って優斗を睨みつける。


「で?なに?こいつから返事聞いたの?」

「それは、…」

「てかちょっと2人とも落ち着いて?引っ張るのやめて?もう人の目ってもんがあるんだから…」


全く私の話を聞いていない彼ら。

そして優斗が一瞬怯んだ隙に、類くんは再び私を引っ張って胸にしまって私の肩を抱く。


「誰に何言われようが俺のことは俺が決める。そんでこいつが好きなのは俺だから」


堂々と、自信満々に言われてしまって私は一瞬で顔が赤くなった。

類くんもしかしてお酒でも飲んでるの?と思ったがアルコールの匂いはしない。

そして優斗は私だけを見て言った。


「…俺、もう幼馴染としてじゃなく、明子を好きな女として接するから」


聞き慣れた声、見慣れた顔、安心できる優斗の香り。

全部、それが今日で変わってしまったみたい。
なんだか優斗が違う人に見えてくる。

私がその言葉に複雑な気持ちを抱いている中、類くんは私を引っ張って駅へと歩き出した。


「えっと、類くん、私ん家向こうなんだけど…」

「このまま普通に家に帰すと思う?」


あ、これ結構キレてますねー…。

にしても、どうしてもっと優しく連れてってくれないの!
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