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そして追いかけた

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その後の学校では、優斗と顔を合わせるのが気まずくて気まずくて仕方がなかった。

あの日、私は彼に明確な返事をしないまま類くんに連行されてしまったし、かと言ってもう一度自分から蒸し返すのも勇気がなかった。

と言うのも、優斗がこの話題を振ってこないってのもある。

だから何となく私もそれに便乗して普通に接しようとしていた。


「明子、俺ゴミ捨て行ってくる」

「え、あ、私も当番だし行くよ」

「少ないから大丈夫」


掃除の時間、集めたゴミを優斗は持ってゴミ捨て場の方に行ってしまった。

それを見ていたキキが箒をパタパタしながら私に近づく。


「なに、君ら。喧嘩でもしたの?」

「いや、喧嘩とかそういうんじゃないんだけど…」

「そうよねえ。優斗が明子に怒ってるのってそう見たことないし。呆れてはいるけど」


ふふ、と彼女は笑って私の箒も手に取り片付けに行った。

優斗は私と2人きりにならないようにしてるんだろうか。

彼がどうしたいのかがわからない。


『俺、もう幼馴染としてじゃなく、明子を好きな女として接するから』


あの日の優斗の言葉が頭の中をよぎる。

今までずっと、小学生の時から優斗のことは幼馴染としてしか見てこなかった。

だから私だって意識はしてしまう。
一番近かった人が、ずっと私を恋愛対象として見てくれていたなんて。

優斗はどんな気持ちで私と一緒にいたんだろう。

どんな気持ちで、私を抱いていたんだろう。


「あっ明子いたいた。明日の大学祭さ、待ち合わせ何時にする?」


ぼうっと中庭で突っ立っている私をななが見つけて駆け寄ってきた。

キキも箒を片付けこっちに戻ってくる。


「んー。類くんが模擬店の当番に入ってるのが昼過ぎみたいだし、13時くらいにする?類くんがお仕事ちゃんとしてるか見たいし」

「おっけー」

「あーあ。私も行きたかったなあ」

「キキは翔太のお姉さんの結婚式行くんでしょ?素敵じゃん」


まぁね、とキキは笑う。

優斗は掛け持ちの方のバイトらしいし、今回はななと2人で大学祭に行くことになっていた。

まあそうじゃなくても類くんがいる大学祭に、優斗が行くって言うとは思えないんだけど。


「はーっ、てか寒!風強くない?」

「もう11月だもんね。明日あったかいといいけど」

「一条さんは模擬店何出すの?」

「豚汁だって」

「えー、食べたい食べたい」


きゃっきゃと3人でくっつきながら校舎の中に戻っていった。
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