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番外編

モフレース2023

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 モフレース。
 それはモフモフした獣をモフりながらゴールを目指す競技。
 そんな不毛な競技に俺は解説役として参加させられていた。
「シンタローさん!なぜ?独り言を言っているんですか!」
「エドモント!おかしいと思わないのか?」
「何がです?」
「俺が解説で、エドモントは実況!ノエルとミスターはレースの参加者。モフちゃんはゴールの旗振り兼優勝トロフィーがわりで、この競技に参加させられていることが!」
「仕方ありませんよ!作者がB級映画のデスレース20○0をヒントに今回のレースを思いついたんですから」
「パクリじゃないか!しかもオブラートで隠す気もない!」
 そんな会話をしている中、選手たちがスタート地点に集まってきた。
 参加者は三人。
 勇者見習いノエル。
 自称モフモフマスターを目指すオ・ト・コ。ミスターモフモフ。
最後の一人は魔王バステルン。
「あの魔王も参加するのか!」
「これは波乱の予感しかありませんね!シンタローさん!」
「モフちゃんを巡って、醜い争いを見せられるのか……このレースって、確か競技中に獣をモフモフすれはランクに応じてポイントが与えられる仕組みだったはずだが……」
「そうですよ!そしてプラスタイムで順位が決まる競技になっています!」
 エドモントの言葉に俺は頭を抱えた。
「シンタローさん!どうしたんですか?」
「エドモント!気づかないのか?」
「何がです?」
「このレース、裏を返せば、獣たちを犠牲にする競技だぞ!」
「い、言われてみれば、確かにまずいですね……」
「何とか中止にできないか?」
「無理です!」
「なぜ?」
「全員が、もうスタートしましたから!」
 こうしてスタートしたモフレースは泥沼と化していた。
 魔王バステルンが配下のコボルトたちを使って、ノエルとミスターの妨害という名の犠牲になり、ノエルが野生の熊やイノシシを抱きしめたことにより、口から泡を吐き、ミスターモフモフが分身したのかと思うほど高速で動き回り、ポイントを稼いだ。
 その結果。
 全員の順位は、同じだった。
「タイムとポイントを集計したらこうなりました!」
「無駄な奇跡を起こしやがった!この場合はどうなるんだ?」
「モフちゃんさんに決めてもらうことになるそうです!」
「モフちゃんに押し付けるなんて、主催者たちは無責任だな!」
 そのモフちゃんが俺達の所にやってきて、俺の頭の上に乗っかった。
「エドモント!これって、もしかして……」
「シンタローさんが優勝者ですね!」
「キュ!」
 エドモントの言葉に反応するモフちゃん。
 これでいいのか?

反省会
シンタロー「そういえば、モフミちゃんはどうしたんだ?」
エドモント「一番最初に犠牲になって、今は他の犠牲者さんたちと共にモフちゃんさんに癒してもらっています!」
シンタロー「そうか!できれば、あいつらを宥めて、もらいたかったんだがな……」
 シンタローの見つめる先には殺意の丸出しのノエルとミスターモフモフとバステルンがいた。
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