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第一章
1-4 踏み出す勇気
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あの事件が起きてから、数ヶ月経った。
先に産まれた兄達は、大きさも一回り大きくなっていた。
鱗の色も、しっかり色付いてきていた。
しかし私も、もう一つの卵も産まれよとしなかったのだった。
お父さんとお母さんは、毎日私達の入っている卵に耳を当てていた。
鼓動と体動を確認する為だった。
鼓動も体動もあるので、生きているには間違いなかった。
その為、お母さんとお父さんは諦めずに交代で、私達を温めてくれていた。
その間兄達は、と言うと。
手の空いた時に、お父さんとお母さんが交代で、歩く練習と飛ぶ訓練をしていたのだ。
毎日繰り返し行う事で、産まれた時はペラペラだった翼も少しずつ厚みが増し、なんとか浮く事は出来る様になっていたのだ。
いつもの様に、兄達が翼を羽ばたかせる練習をしている時だった。
お母さんが、少し姿勢を変える為に私達から少し身体を浮かせたその時だった。
練習していた兄の1人が、疲れてしまい私めがけて落ちてきたのだった。
お母さんが気付くのが少し遅くなり、もう少しでぶつかるって言う時だった。
私の卵の周りに虹色のベールが覆ったのだったのだ。
そして、落ちてきた兄を包み地面に降ろしたのだった。
兄が地面に降りると、そのベールは自然と消えたのだった。
あまりの出来事に、お母さんも変なポーズで固まっていた。
それを見ていた兄達もだ。
しばらく私の入った卵を凝視していた3人の元に、お父さんが戻って来た。
いつもなら私達を包んでいるお母さんが、変なポーズで居るのに驚いたお父さんは、お母さんに慌てて声をかけたのだった。
"母さん!どうしたんだ?卵を温めないと、凍えてしまうよ!"
お父さんの言葉にハッと、我に戻ったお母さんは急いで私達を包み込んだのだった。
"いったいどうしたんだい?母さんが、卵から離れるなんて、何があったんだい?"
お父さんは、巣の中で固まっている兄達を捕まえながら、お母さんに再度声をかけたのだった。
お母さんは、私達の入った卵に耳を傾けて鼓動を確認していた。
鼓動がしているのを確認した後、お父さんに向き直って返事をしたのだった。
お父さんに、先程起こった出来事を話したのだった。
お母さんの話す内容に、お父さんは驚きはしたが疑う事はしなかった。
そして、私が入っている卵を凝視していたのだった。
"もしかしたら、産まれてくるこの子は特別なのかも知れないね。"
お父さんの言葉に、お母さんは心配そうな顔をしていた。
"大丈夫なのでしょうか?"
お母さん達の言葉はしっかり、私に届いていた。
そして全て私には、"見えていた"のだった。
何故か私は、卵の中に居ながらも外の世界が"見えていた"のだった。
しかも、断片的にだ。
見える様になったのは、兄に突かれて初めて力を使った翌日からだった。
目に力を込めたら数分間だけ、見つめている部分だけ、見える様になったのだ。初めは驚きもしたが、すぐ慣れた。
だから私は、卵の中に居ながらも自分の身を守る事が出来ていたのだった。
(でも、そろそろ出ないとダメなのかなぁ?)
本当はもっとこの中に居たいのだが、いささか窮屈になりつつあった。
両親も心配している。こんな事は初めての体験だった。
私は嬉しくもあり、不安だった。
でも...。
(今まで優しくしてくれていたんだよ。大丈夫だよね。)
ずっと感じてきた暖かさと、あの心地よい声を信じることにしたのだ。
先に産まれた兄達は、大きさも一回り大きくなっていた。
鱗の色も、しっかり色付いてきていた。
しかし私も、もう一つの卵も産まれよとしなかったのだった。
お父さんとお母さんは、毎日私達の入っている卵に耳を当てていた。
鼓動と体動を確認する為だった。
鼓動も体動もあるので、生きているには間違いなかった。
その為、お母さんとお父さんは諦めずに交代で、私達を温めてくれていた。
その間兄達は、と言うと。
手の空いた時に、お父さんとお母さんが交代で、歩く練習と飛ぶ訓練をしていたのだ。
毎日繰り返し行う事で、産まれた時はペラペラだった翼も少しずつ厚みが増し、なんとか浮く事は出来る様になっていたのだ。
いつもの様に、兄達が翼を羽ばたかせる練習をしている時だった。
お母さんが、少し姿勢を変える為に私達から少し身体を浮かせたその時だった。
練習していた兄の1人が、疲れてしまい私めがけて落ちてきたのだった。
お母さんが気付くのが少し遅くなり、もう少しでぶつかるって言う時だった。
私の卵の周りに虹色のベールが覆ったのだったのだ。
そして、落ちてきた兄を包み地面に降ろしたのだった。
兄が地面に降りると、そのベールは自然と消えたのだった。
あまりの出来事に、お母さんも変なポーズで固まっていた。
それを見ていた兄達もだ。
しばらく私の入った卵を凝視していた3人の元に、お父さんが戻って来た。
いつもなら私達を包んでいるお母さんが、変なポーズで居るのに驚いたお父さんは、お母さんに慌てて声をかけたのだった。
"母さん!どうしたんだ?卵を温めないと、凍えてしまうよ!"
お父さんの言葉にハッと、我に戻ったお母さんは急いで私達を包み込んだのだった。
"いったいどうしたんだい?母さんが、卵から離れるなんて、何があったんだい?"
お父さんは、巣の中で固まっている兄達を捕まえながら、お母さんに再度声をかけたのだった。
お母さんは、私達の入った卵に耳を傾けて鼓動を確認していた。
鼓動がしているのを確認した後、お父さんに向き直って返事をしたのだった。
お父さんに、先程起こった出来事を話したのだった。
お母さんの話す内容に、お父さんは驚きはしたが疑う事はしなかった。
そして、私が入っている卵を凝視していたのだった。
"もしかしたら、産まれてくるこの子は特別なのかも知れないね。"
お父さんの言葉に、お母さんは心配そうな顔をしていた。
"大丈夫なのでしょうか?"
お母さん達の言葉はしっかり、私に届いていた。
そして全て私には、"見えていた"のだった。
何故か私は、卵の中に居ながらも外の世界が"見えていた"のだった。
しかも、断片的にだ。
見える様になったのは、兄に突かれて初めて力を使った翌日からだった。
目に力を込めたら数分間だけ、見つめている部分だけ、見える様になったのだ。初めは驚きもしたが、すぐ慣れた。
だから私は、卵の中に居ながらも自分の身を守る事が出来ていたのだった。
(でも、そろそろ出ないとダメなのかなぁ?)
本当はもっとこの中に居たいのだが、いささか窮屈になりつつあった。
両親も心配している。こんな事は初めての体験だった。
私は嬉しくもあり、不安だった。
でも...。
(今まで優しくしてくれていたんだよ。大丈夫だよね。)
ずっと感じてきた暖かさと、あの心地よい声を信じることにしたのだ。
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