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第7話『傷や万病を治し(以下略)』
しおりを挟む俺が彼女に渡したのはただの水ではない。
アイテムボックスに詰めていたコレクションのひとつ。
『傷や万病を治し、人間の能力を大幅に引き上げる幻の神水』だった。
勝手に実験台にしたのは申し訳ないけど死にたいって言ってる人だしさ。
ワンチャン病気が治るかもしれないんだから別にいいよねっていう。
ちなみにこの『傷や万病を治し(以下略)』の瓶はまだ×999以上ある。
彼女に使って効果があれば、いざというときのお小遣い稼ぎに使うつもりだ。
「どうですか? 調子はよくなりましたか?」
「はい、ありがとうござい――あれ……?」
パーカーの少女は喉を触り、胸元を撫で、大きく息を吸い込む。
そして、
「調子がよくなってる!?」
先ほどまでよりもよっぽど覇気に満ちた声を出したのだった。
「呼吸しても苦しくないし、それどころか身体がすごく軽くて、むしろ病気になる前より体中に力が漲ってるような……!?」
うんうん。
貧弱だった魂の気配がぐいんぐいんと増幅していくのが感じ取れる。
異世界のアイテムは地球人にも十分な効果を及ぼすようだ。
二度と会うこともない相手を都合よく見つけて検証できた上に人助けもできた。
これぞ一石二鳥。
「多分治ってると思うけど、念のため明日にでも病院で見て貰って下さいね」
「信じられない……どの医者にも完治しないと言われたのに……。もしかしてこれが……? わたしが飲んだものは一体……!?」
パーカー少女は俺が手渡した小瓶をまじまじと見つめた。
「そこら辺は聞かないでくれるとありがたいですね。できれば他言することも……」
「は、はい! それはもちろん! あ、ありがとうございました!」
激しく首を縦に振ってらぁ。
めっちゃ恐縮されている。
懐かしいこの感じ。
魔王だった前世以来だな。
「そ、そういえばさっきもあの大きな熊をよくわからない方法で追い払ってたし、あなたはもしかして――」
熊を撃退したときのことに触れてこないから忘れていたが。
そういや魔法使ってるのバッチリ見られてたな……。
もういいや、開き直って白状しよう。
冗談と受け取られる可能性に懸ける。
どうせもう会わない人だ。
「そう、ここだけの話、俺は魔お――」
「山の神様なのですか!?」
すごい勘違いをされた。
まあ、山奥で夜中にいきなり現れたやつが超常的な現象を引き起こしたら人間じゃないと思うのも無理ないが。
それにしたって神様とは……。
前世で俺を倒そうとしてきた勇者たちが知ったらどんな顔をするだろう。
ちょっと見てみたい。
「ああ、わたしはどうすれば神様が起こして下さった奇跡に報いることができるのでしょう? 貴方様を崇める特定の宗教があるなら是非とも入信させて頂きたいのですが!」
なんか面倒なこと言い出した。
というか、肯定してないのに俺のことを神だと確定しちゃってる。
ハマりだすと深くいっちゃうタイプの女だったか……。
しょうがない。
適当にそれっぽいことを言って宥めよう。
「俺は宗教とかにはなってない存在です。だから、そういうのには入らなくて結構です。清く正しく美しく。まあ、そんな感じであなたが強く生きてくれればそれで十分ですよ」
「はい! 神様っ! わかりました!」
フードで表情は見えないけれど。
尻尾とかついてたらブンブン振ってそうな勢いで返事をされた。
本当にわかったのかな?
この体験が原因でカルトにハマったりしないよね?
俺は自分が宗教になってないって言ったからな?
入信しても、それは別の何かを奉ってるやつだから自己責任だぞ?
まあ、彼女のことはもういいだろう……。
河川敷に来た目的も果たしたし、さっさと帰ろ――
「…………」
「どうされたんですか?」
俺は転移で少女を地元の駅前に送り届けてから帰宅した。
面倒見る義理はないけど、夜の河川敷に女性を放置していくのは鬼畜すぎるからな。
数日後。
俺はリビングでテレビをなんとなく見ていた。
すると、どこのチャンネルも病気で活動休止していた人気アイドルユニットのセンターが復帰したというニュースを大々的に報じていた。
ふーん、アイドルとかよく知らんからどーでもいいなぁ……。
俺はプチっとテレビを消し、昼飯の準備に取り掛かるのだった。
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