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第16話『結城優紗』
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将棋ボクシング文芸部を見学に行った次の日。
俺は今日も教室で星屑ロンリーぼっちネスだった。
丸出さんは遠くから俺を心配そうに窺っているが話しかけてくることはない。
彼女には教室では俺と関わってこないようにと言い含めてあるのだ。
今の俺と話すと彼女も奇異の目で見られてしまう。
順調な高校生活を送っている丸出さんに迷惑をかけたくない。
だけど、いつかは彼女と教室で堂々と会話できる、そんな綺麗な身体になりたいものだ。
昼休み。
「ねえ、ちょっといい?」
弁当を食べ終えた俺が机に伏せっていると、何者かが目の前に立ちはだかった。
やべーやつと言われている今の俺に話しかけてくるなんてどこのどいつだ?
声の高さだと女子っぽい感じだが……。
顔を上げると、そこには赤茶色の髪をした美少女がいた。
「あれってA組の結城優紗さん?」
「なんでうちのクラスに?」
「やっぱ可愛いなぁ……」
「足なげー」
「顔小せえー」
「モデルみてー」
………………。
結城優紗。
その名前は聞いたことがある。
確か、他クラス合同でやった体育の時間に男子たちが遠目に噂していた人物だ。
曰く――
学年一の美少女ともっぱらの評判で、入学してまだ一ヶ月だというのに同学年・先輩問わず様々なイケメン男子たちから次々と告白をされて、それらをすべて容赦なく断っている高嶺の花だとか。
ちなみに特定の恋人はいないらしい。
須藤は『オレ、フリーならマジで結城さん狙っちゃうぜ!』と鼻息荒く語っていた。
もちろん俺に語ってきたわけではない。
彼がクラスの他の友人に話しているのを聞いただけだ。
鳥谷先輩の加護で花園一派に絡まれる心配はなくなったものの、須藤とのコミュニケーションは未だに復活していないのである。
まあ、コミュニケーションができていないのは彼に限った話ではないが……。
悲しいことだね。
「あなたが新庄怜央よね? 少し顔を貸しなさいよ?」
結城優紗とやらが腕を組みながら言ってきた。
何か威圧的だなぁ……。
高飛車ってこういう女の子のことを言うのだろうか?
顔つきもキッとしていておっかない。
整っていて美人ではあると思うんだけど。
「うーんと、何か用?」
俺に話しかけてくれる同級生は今のところ貴重な存在なので若干の喜びはある。
だが、彼女からは敵意めいたものを感じるといいますか。
ぶっちゃけ、仲良くしましょうって態度には見えないんだよね。
俺が躊躇していると、結城優紗は耳元まで顔を近づけてきた。
「いいから来なさい、魔王サイズオン」
「…………!?」
そっと小声で囁かれたキーワード。
それって俺の前世の名前じゃないすか……?
どうしてこいつが知ってんの?
「ここじゃなんだから、違う場所に行くわよ?」
「…………」
仕方がない。
俺は黙って着いていくことにした。
結城優紗の金魚の糞になって、ノロノロと教室を出ていく。
振り返ると、丸出さんと目が合った。
彼女はとても心配そうな表情していた。
なあに、取って食われるわけじゃあるまいさ。
俺は安心させるようにサムズアップで応じた。
廊下に出ると、教室から声がワァッと聞こえてきた。
「結城さんが新庄と出て行ったぞ!? どうしてあいつと……?」
「金、暴力、女……とんでもない人……ッ!」
「これは憧れの美少女がDQNに寝取られる展開……ふぅ……」
金……? 女? 寝取られ……? 身に覚えのない要素が新たに加わっている。
俺は彼らの想像のなかで、またさらにとんでもないモンスターに格上げされてしまったのかもしれない。
というか、寝取られって、結城優紗はお前の恋人なのか?
彼女に恋人はいないはずだ。
それはただの失恋と呼ぶのでは……?
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