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第32話『退歎刀』
しおりを挟む風魔先輩はポケットから10センチほどの棒を取り出した。
それは伸縮式の指示棒だったようで、先輩が引っ張ると60センチほどの長さに伸びた。
「いざ、参る」
風魔先輩は指示棒をまるで剣のように片手で握り、鋭く一振りしてから下段に構えた。
あーよくやったなー。
その辺の棒を拾って剣みたいに振って遊ぶやつ。
これが伝説の剣だ! とか言ってたっけ。
風魔先輩、大人っぽい雰囲気なのに未だにそういう遊びやるんだ。
なんて思っていたら。
「ふぁ……!?」
棒の形状がグニャリと変化して日本刀の形に――いや、日本刀そのものになった。
俺の驚いた反応を見て、風魔先輩はニヤリと不敵に笑った。
「退歎刀……人々の歎きを退けるための刀だ。お前たち魔の者にとっては因縁深い武器だろう?」
自慢げに言われるけど、魔の者じゃないのでそんなん見たことないわい。
「えっ? どうなってるのよ? ただの細い棒が日本刀になっちゃった? 風魔先輩は魔法が使えるの? 勇者じゃないなら転生者ってこと?」
「テンセイシャ……? これは風魔家に伝わる秘術だ。いつ、いかなるときでも速やかに魔の者を狩ることができるように……不測の事態でも常に剣を持って戦えるようにと編み出された対魔の奥義。私が剣を連想できるものならすべてのものが退歎刀になり得る」
結城優紗の疑問に淡々と答える風魔先輩。
地球には魔法ではない特異な力が存在するみたいだ。
15年近く生きてきてそんなの全然知らなかったよ。
「魔の者よ、この退歎刀の錆となるがいい」
風魔先輩は威風堂々と、ゆったり歩きながら間合いを詰めてきた。
そして、
「おりゃあああああ!」
声を上げて、刀の切っ先を俺に思い切り突き刺してきた。
「ちょっ……風魔先輩、マズいですって!」
結城優紗が叫んで焦る姿を尻目に、俺は異空間から一本の剣を取り出して握った。
ガキィンッ!
風魔先輩の刀を剣で受け止める。
俺の抜いた剣は目映いほどの輝きを放ち、周囲が一瞬だけ真昼のような明るさになった。
「ぐっ! なんだこの光は!?」
風魔先輩は目が眩むほどの光に反応して素早く後方に跳躍する。
おお、何気に脚力すごいな……。
3、4メートルくらいをひとっ飛びだったぞ。ギネスいけるんじゃね?
「ちょっと! それ……!」
結城優紗がわなわなと震えている。
俺を指差して何かを伝えようとしてるようだ。
「ああ、どこから取り出したってことか? これは次元魔法で――」
「それ、あたしの聖剣じゃない! トランセンドキャリバー! 何であんたが持ってんの!?」
ランドセルカバー?
待って、何の話だ?
「だから、その剣! あたしが異世界で使ってた聖剣なの! 魔王城で負けた後はどうなったんだろうって思ってたらあんたがパクってたのね!」
「これ、お前のだったの? 勇者の誰かが城に落としてったのは覚えてたんだけど。でも、もう俺のでいいでしょ? 遺失物法とかそんなやつだ」
「いいわけないでしょ! あんたに倒されたせいで落としたんだから! そんなの強盗と一緒よ! 返しなさい! せっかく少し見直しかけてたのに!」
ワーワーとやかましい。
こいつの気性的にさらに強い力を持たせるのは危険だから一生返さないでおこう。
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