48 / 69
第48話『段田理恩』
しおりを挟む俺たちが連れてこられたのは、声をかけられた地点から徒歩で数分ほどの場所にある閉業したライブハウスだった。
「くっそー段田のヤロー」
「馬飼学園のシマに拠点を構えてやがったとは……」
「舐めたマネしてくれやがって」
ぶつくさと言ってる花園三人衆。
うちの学校のシマとかあったのか……。
俺たちは入り口から薄暗い階段を降りていく――
階段を降りて、段田理恩が待っている地下のステージ空間に辿り着く。
そこにはまた二十人くらいの不良たちが待ち構えていた。
迎えに寄越したのが約二十名。
ここにいるのも約二十名。
合計四十名くらい。
勢揃いしてやがんなぁ……。
「馬飼学園の諸君、よく来たな。オレが出美留高校のアタマを張ってる段田理恩だ」
チリチリして束になったような髪――いわゆるドレッドヘアの男が、ステージ上に置かれた玉座みたいな椅子に腰掛けていた。
あれが段田理恩……。
対峙したドレッドヘア野郎を俺はじっと見つめた。
とてもじゃないが、いじめられっ子だったとは思えない風貌と雰囲気だ。
「よっこらせっと」
段田理恩はステージ上から身軽に飛び降りて俺たちの前にやってくる。
「せっかく遊びに来たお客様に飲み物を用意してやるよ。おい、あれを持ってこい!」
「うっす!」
段田理恩が指示すると、子分が吸い殻の入った灰皿とブランデーの酒瓶を持ってきた。
子分からそれらを受け取ると、段田理恩は灰皿にトクトクとブランデーを注ぎ、
そして――
「ほら、飲めよ」
段田理恩はできあがった灰皿ブランデーを俺に差し出してきた。
「こ、この野郎! ふざけやがって!」
「どこまでコケにすれば気が済むんだ!」
「新庄怜央、受け取ってやる必要ねえぜ! 叩き落としてやれ!」
花園三人衆は段田理恩の挑発に声を荒らげる。
「遠慮しなくていいんだぜ? グイッといっちゃってくれよ? 歓迎のキモチだからよ」
「…………」
俺は無言でその灰皿を受け取ると――
パシャッ。
バキンッ!
中身を床に捨て、両端を掴んでステンレス製のそれを二つに引き裂いた。
「はあああああああ!?」
「う、うおっ……!?」
「どんな指の力してやがんだコイツ……!」
花園三人衆も含め、ライブ会場にいた不良たちがどよめきの声を上げた。
よしよし、いい感じで威嚇になったな。
「ほう、おもしれえじゃねえか」
だが、肝心の段田理恩は愉快そうに笑っただけで一切動じていなかった。
ふむ、この程度ではビビらないか……。
そこそこ肝の据わったやつらしい。
しゃーない。
さっきと同じように雷魔法で片付けよう。
ノー暴力主義です。
「跪け」
俺は威厳があるように思わせる声音でそう言った。
ビリビリッ。
「ぎゃあっ」
「ふがっ」
「ほげっ」
「おお、さすがだぜ!」
「また気迫だけでやっちまいやがった!」
「ウチの新庄怜央を舐めんなよ!」
花園三人衆が歓声を上げる。
いや、ウチのって……。
お前らはどの立場なんだよ。
バチンッ。
ん……?
一部、魔法が弾かれたような感覚があった。
「なにっ……!?」
段田理恩サイドの不良たちが軒並み地面に這いつくばっているなか、当の本人……段田理恩だけは悠然と立ったままだった。
「お前、今、何をしたんだぁ?」
段田理恩はニヤニヤと余裕に満ちた表情を俺に向けて訊いてきた。
「お前は……」
「ククク、まさか魔法とはね? まったく、こっちで使うヤツに出会うとは思わなかったぜ。ただ、あんなレベルの低い魔法がオレに通用するわけねえだろ?」
段田理恩は俺が魔法を使ったのを見抜いていた。
こいつ、何者だ?
やっぱり、元勇者か転生者だったのか?
「そういう戦い方をしようってんなら……余計なギャラリーはいないほうがいいよな?」
段田理恩はそう言うと、パチンと指を鳴らした。
その瞬間、俺は何かの力の動きを感じた。
これはもしかして……魔力……?
だが、俺の知っているものとは少し違う気がする。
結城優紗と違って俺はそこまで識別能力が優れているわけじゃないから確信は持てないけど。
バタン。バタン。バタン。
倒れる音が三つ聞こえた。
「おい、お前ら……!」
花園三人衆が意識を失って倒れていた。
し、死んで……!? は、いないようだな……。
すうすうと寝息を立てている。
なぜいきなり眠りだしたんだ?
見れば、俺の魔法でビクンビクンしていた段田理恩の子分たちも寝ていた。
「他の連中は寝かせておいたぜ。事情を知らねえやつらが見てるとやりにくいだろ?」
不敵に笑う段田理恩。
こいつがやりやがったのか……。
つまり、目の前の男は魔法が使える存在ということだ。
「お前は一体……」
「フッフッフ、聞いて驚けよ? 段田理恩とは世を忍ぶ仮の器、オレの正体は……魔界最強の悪魔師団『ソロモン72柱』に名を連ねる一人、ダンタリオン様だ!」
いや、誰だよ。
0
あなたにおすすめの小説
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる