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第一章
成長と旅立ち2『エルフの里ってクソ田舎』
しおりを挟むそんな不幸な誤解で汚名を着せられたりした幼年期を乗り越え、数年が経った。
魔法は才能に任せて適当な感じに卒業できる程度でそこそこ修め、身体を鍛えることに集中した俺は里一番の腕力を持った十五歳の少年に成長していた。
まあ、エルフは強くなりたいなら魔法を練習すればいいという考えで肉体の鍛錬はほとんどしない種族だから里一番だからといっても大した自慢にはならないのだが。
それでも人を担いで山を走り回っても疲労を感じないくらいには鍛えてあるので外の世界に出ても非力な部類には入らないとは思う。
「じゃあ行ってくるよ」
十五歳の誕生日を迎えた俺は旅の支度をして家族や友人たちに見送られながら里の外れに来ていた。
一応断っておくと、別に変態扱いに耐え切れなくなって家出を決意したわけではない。
友人たちから変態だといじられたり、ハイヒールと黒いボンテージが似合う妖艶なエルフ美女から何に使うのか用途不明なカサの出っ張った十五センチ程の棒を誕生日に送られたりした日々であったが、別段逃げ出すほど苦痛ではなかった。
ではなぜ俺は里を出ようとしているか。
俺の生まれたエルフ里では十五歳を迎えると誰もが一度は外の世界に出て旅をしなくてはいけないというしきたりがあった。
そして里を出た後は最低でも一年間は戻ってくることは許されない。
いわゆるライオンが子供を谷に突き落とす方式の社会勉強的なものである。ちなみにここ数十年は外の世界が気に入ったのか、一年を過ぎても帰ってこない若者が増えているらしい。
このエルフの里ってクソ田舎でなんもないもんなぁ。微妙に納得できる。
「ふん! さっさと出て行っちゃえばいいのよ、この変態!」
発育が進んで酔っぱらいのおっさんどもの見立て通りの美人になりつつある幼馴染みのシルフィが腕組みをしながらしばしの別れだというのに俺を罵倒してきた。
十歳の時、校庭で跨ってもらったあの日以降、彼女はどうにも俺への当たりが厳しくなった気がする。
変態は嫌ということなのだろうか。
いつも一緒にいながら誤解を解けなかったのは何とも残念なことだ。
結局、あれを最後にシルフィは今日まで一度も俺に乗ってくれなかった。
なんやかんやで一番付き合いが長い友人だったので、俺は腕力を鍛えてようやく人を運んで走れるようになった頃、いの一番に彼女をドライブに誘ったのだが、顔を真っ赤にして怒りの張り手を食らわせられて拒否された。
『なんてことを言うの!?』とか涙目で言ってやがったが『俺の上に跨って、新しい景色を一緒に見ようぜ?』というオシャレな誘い文句が癪に障ったのかもしれない。
沸点の低い女だ。いや、もしかしたら彼女は車酔いが激しいのかな。それを恥ずかしがって暴力で誤魔化そうとしたのではないか。
どちらにしても理不尽な話ではあるけど。
二つ年上のお姉さんエルフが代わりに付き合ってくれなかったら俺はストレスで発狂していただろう。
そのお姉さんも二年前に旅立ってから一向に里へ帰ってこないので俺は大変フラストレーションが溜まっていた。
ああ、早く森を出てツーリングの旅に出たい。
俺は今回の旅をとても楽しみにしていた。掟とか抜きで外の世界に行って整備された道路を走り回りたいと常々思っていたのだ。
エルフの里の周りは獣道ばかりで全力をだせなかったからな。十五歳になるまでは里を出てはいけないという決まりがなければ速攻で飛び出していただろう。
出て行けという決まりがありながら出て行くなという決まりも同時に存在するとか、これを決めた連中は相当に捻くれている。
「ま、まあ、あたしも二か月後には里を出るわけだし? もしも寂しくて一緒に旅をしたいっていうなら考えてもあげなくないけど? その場合はほら、例のごとく一番近くの町で待っていてくれれば会いに行ってあげてもいいわよっ!?」
ちらちらっと俺の反応を窺うように小刻みに視線を寄越しながらところどころ裏返った声でシルフィは言ってくる。
「いや、大丈夫だ。俺は旅をすることには慣れているからな。多分近くの町はすぐ通り過ぎて数日で王都まで行くと思う」
俺はシルフィの煽りを適当にいなして予定している旅程を話した。
俺はそんなに寂しがりに見えるのだろうか。
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