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第一章
チンピラと冒険者ギルド4『おおっと失礼!』
しおりを挟む「……兄ちゃんはエルフのくせになかなか力があるんだな」
平然と運んでいる俺の姿を見て、くすんだ金髪男は表情を若干引き攣らせてそう言った。
「まあ、そこそこ鍛えてるからな。これくらいなら運べるよ」
「エルフは非力な種族って聞いてたからてっきり受け取れずに落としちまうかと思ったんだがなぁ……」
高価な壺なのに受け止めきれない可能性がある相手にポンと渡してきたのか。危機管理意識が足りていないな。
保険で補償は降りても美術的価値のある作品は蘇らないのだぞ。
保険がこの社会にあるとは思えないが。
「まあ、落とさずに運んでくれればそれでいいさ。壊しちまったらとんでもない額の弁償をしないといけなくなっちまうからな」
「お、おう。そうなのか……」
男がいたテーブルの仲間たちがニヤニヤと遠巻きにこっちを見てきているのが少々気にかかる。
ああいう下種な笑い方をする連中は総じてロクなことを考えていないものだが……。
いや、疑ってかかるのはよくない。
笑い方が特殊なだけで新米の冒険者を微笑ましく思っているだけかもしれないじゃないか。
俺は壺の陰から顔を覗かせるようにして僅かな視界を確保しながら受付までよたよたと歩いていく。すると、
「ああ、よっこいしょ!」
テーブルで酒を飲んでいたスキンヘッド男がいきなり大声を上げて椅子を大きく引いて立ち上がった。
俺が足を出すタイミングとほぼ同時だったため、俺の足は椅子にぶつかる。
「…………」
まあ、ぶつかっただけだったが。
俺を凝視してくるスキンヘッドは気まずそうに言葉を失っていた。
俺の体重自体は平均的なものだが重心の座り具合はトラック相当なのだ。
そうでなければゴブリンやオークを跳ね飛ばすことなどできない。
したがって、これくらいのもので足を取られることはないのである。
「何か?」
「あ、いや。すまんかったな……」
スキンヘッドは小声で謝罪し、身を縮こまらせて再びテーブルに着いて酒をちびちびと飲み始めた。
この男、わざとだろうか?
もしそうなら度し難い悪ふざけだが。
人が壊れ物を取り扱っている最中にそんな狼藉を働くとはどういう魂胆があってのことだろう。
「ちっ」
俺が疑惑の視線をスキンヘッドに向けていると、くすんだ金髪男が舌打ちをした。
「え? なんて?」
「あっ、いや、なんでもねえぜ! おいこら、ハゲェ! 危ないだろうがや!」
聞き間違いかと疑問符を投げると、くすんだ金髪男はとってつけたように怒りを露わにしスキンヘッド男の襟首を掴んで怒鳴り始めるのだった。
「す、すまん……すまんかったって……」
…………。
なんだか茶番っぽいキナ臭さがうっすらと見え始めてきたなぁ……。
「おおっと失礼!」
それからまた数歩進むと、今度は大きな声を上げて正面からぶつかってくる眼帯の男が現れた。
そいつは俺の身体に弾き返されるとテーブルの角に頭をぶつけ、痛みに苦しんで床の上で転げ回った。
「…………」
くすんだ金髪の男は冷めた目でその眼帯男を見下ろしていた。何がしたかったんだこいつは……とそんな感じで。俺も同じような気持ちだった。
俺は呆れかえりながらそいつの横を通り過ぎた。
「ぐぎゃああぁっ!」
枝が折れるようなポキッという音が足元から聞こえた。
横たわっていた男が野太い悲鳴を上げる。
何気なく足元を見てみると俺は眼帯の男の足首を踏んでしまっていた。
恐る恐る足をどかしてみる。うわぁ……。
男の足首は前衛的な感じに湾曲していた。
ああ、やっちまったぜ。エルフの森の獣道をものともしないトラックの馬力で人間の脆い骨を踏み砕いてしまった。
俺が現行でやらかしてしまった所業にテヘペロしていると、くすんだ金髪の男はぬるっとしたスピード感で眼帯の男に駆け寄っていった。
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