トラックエルフ ~走行力と強度を保ったままトラックがエルフに転生~

のみかん

文字の大きさ
31 / 126
第一章

逃走と治療6『今宵、攻め入るは領主邸なり。』

しおりを挟む


「…………」

 どうしたもんかと俺が呆けていると、

「そ、そういえばエルフのお兄さんはエルフを襲って無理やり奴隷にする奴隷商人のことを調べてるんだって! お母さん、何か知らない?」

 リリンが唐突に間に割り込んできた。

 なぜここでその話になるのか。そんな会話の流れをぶった切ってするほどお前にとって重要な話ではあるまい?

「エルフを奴隷に……?」

 一方、リリンの母親は初耳だったようで驚きの表情となって口を押さえ、黙り込んだ。

「ごめんね、お母さんがあの話を始めると長いからさ」

 こそこそとすり寄ってきたリリンが小声で耳打ちしてくる。なるほど、母親の長話を阻止するために利用されたのか。

「ちなみにあの話とは?」

「若い頃にエルフの友達と3pしたって話」

「…………」

「リリン、聞こえてるわよ。お母さんの遠い青春の思い出を下品な言い方で脚色しないでちょうだい」

「でも結局は三人でヤッたんでしょ?」

「違うわ。三人で変わらない愛と友情を誓い合ったの」

「だから一緒じゃん。そう思うよね、お兄さん?」

 どっちでもいいし、反応に困るからそういう生々しい話を母娘で俺に振ってくるな……。

 エルフが人間を嫌っているという話について訊ねたかったのだが、蒸し返すことになりそうだしやめとくか。


――ここで訊いておけばと俺が後悔するのはもっと先の話である。





 俺が明日の奴隷商訪問に照準を合わせて切り替えようとしていると、

「お前、エルフを扱う奴隷商を探してるのか? それなら耳よりの話があるぜ」

 空気を読んで空気に徹していたルドルフがタイミングを見計らったように口を開いた。

「耳よりな話? 心当たりでもあるのか?」

 厳密にはエルフを扱う奴隷商ではなく、エルフを襲って奴隷に貶める悪徳奴隷商を探しているのだが。

「実はエルフの奴隷を多く取り扱ってる奴隷商人が領主の家に出入りしてるみたいでよ」

「……なぜお前がそれを知ってるんだ」

 こいつ、そういえば輩どもと同じ粉を持っていたな。

 まさか俺に罠を仕掛けてきてるんじゃなかろうな。

「領主のおっさんに呼ばれて奴隷の首輪についていろいろ訊かれたんだよ。どうやら最近新しい奴隷を買ったみたいでな。首輪の設定を奴隷商に内密でいじるにはどうすればいいのか、かなり食い気味に訊いてきたぜ」

 こいつは結構なボンボンという話だったっけ。それでいて魔法の才能に優れているのなら領主からそういう相談をされてもおかしくはないか。

「首輪の設定ってなんだ?」

 エルフの里で危機管理のために習った気もする。

 しかしながら今や記憶の遥か彼方である。呪文もそうだが、いろんな知識の抜け落ち具合がやばいという自覚がでてきた。

 こんなに厄介なことに首を突っ込むとは思ってなかったんだよ……。気ままにドライブをするだけの旅で終わると思ってたんだよ……。

 これはどっかで一度勉強し直したほうがいいのかもしれん。魔法に関しても威力の高い呪文とかを覚えておいたほうがいざというときに役立ちそうだし。

「設定ってのは奴隷に対する制限だよ。視力や聴力を封じたり、感情を抑えるようにしたりとかな」

「どうしてそんな制限をかける必要があるんだ? 耳が聞こえなかったり目が見えなかったりしたら満足に働けないじゃないか」

「そりゃ都合の悪いことを見られたり聞かれたりしないようにするためだろ。奴隷を買うのは裕福じゃないとできないからな。立場を守るためにいろいろ黒いことをやってる連中もいるんだよ」

「奴隷商に内密にっていうのはどういうことなんだ? 設定をいじるのは持ち主ができるわけじゃないのか?」

「基本的に術を施すのは奴隷商に雇われてる職人が客に要望を受けて事前に行うもんだ。もちろん設定が変えたくなったら奴隷商に行けば後から変更もできる」

「なら、どうして領主は奴隷商に秘密にしたがってるんだ?」

「そりゃ知らねえよ。でも怪しいだろ? オレも変なことを訊いてくると思ったもんだぜ」

 領主といえばゴブリンの群れから助け出した御令嬢との約束だが、もしルドルフの話が本当なら彼女の誘いは狼の巣に羊を呼び寄せたのと同義だ。

 いや、きっと領主の素性を詳しく知らなかっただけだろう。そう信じたい。

「気になるならオレが領主に渡りをつけてやるよ。あのおっさんには顔が効くんだ。貸しってことにしておいてやるぜ?」

 ルドルフが逡巡する俺にそんな提案を持ちかけてくる。『どうだありがたいだろう?』という態度が透けて見えるのが気に食わない。

 隙あらば俺に貸しを作ってやろうとする精神はなんなんだよ。

「どうしてお前が俺に協力してくれるんだよ。胡散臭すぎて奴隷商と組んで罠にかけようとしてるとしか思えないぞ」

「でっかいもんをぶっ潰すとか、最高にアウトローで格好いいじゃねえか。それに領主のおっさんが黒いことやってんならたくさん強請り取れそうだしな」

 恐らく後者が本音だろう。そうだね、確かに君ってそういうやつだったもんね。

 新米の冒険者を狙って金をむしり取ろうとするクズだったもんね。

「まあ、いっか……」

「決まりだな」

 握手を求めてきたルドルフを俺はスルーした。

 リリンとリリンの母親は吹き出して笑いルドルフは俺の脛を蹴り飛ばした。


 いろいろ遠回りした感じもあるが――今宵、攻め入るは領主邸なり。

しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...