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第二章
才媛と塔4『「ぶひぃ! ごめんなさい!」』
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本日は午前中のトレーニングを済ませた後、皆で集まって昼食をとることにした。
こういう交流の時間は大事だぜ。
王立魔道学園の食堂は貴族の子弟が多く通っているだけあって、出てくる食事の内容は一級品である。
しかもほとんどタダでいい大盤振る舞い。
こういうところには金をかけてるんだよなぁ……。
「はぐはぐ……もぐもぐ……」
正面に座るツインテ少女はやたらカロリーの高そうなメニューばかりをチョイスして皿に盛りつけ大量に口へ運んでいた。
「なんでそんなにいっぱい食べてんだ?」
「うっ、グレン君……」
俺が訊ねると言葉を詰まらせるツインテ少女。
見た感じ苦しそうに食べてるし大食いってわけじゃなかろうに。
「なんかね、ここのところたくさん筋トレしたせいで腹筋が割れてきちゃったんだって。でも筋トレの量は減らせないから食べて脂肪をつけることに――」
「このデブゥ――ッ! 余計なこと言ってんじゃないわよッ!」
「ぶひぃ! ごめんなさい!」
勝手に喋った小太りの男子生徒は脛を蹴り飛ばされて泣いた。
それを見て他の生徒たちは愉快そうに笑っていた。
そういや、このデブは筋トレして走ってるのに全然痩せないな。
ある意味で才能だ。
と、まあそんな感じで、彼ら彼女らは心なしか以前より生き生きとした表情を見せるようになっていた。
徐々に、それでも確実に成果が出ていることで自信というものを持ち始めたのかもしれん。
緩やかな雰囲気。閉塞感のない和気あいあいとした会話。いい傾向じゃないか。
こんな光景があちらこちらで見られるようになれば、俺もこの学園に来た甲斐があったというものだ。
……ん? 俺はこんなことをしに来たんだっけ?
自分の行動に少々疑問符を掲げながら俺はフォークに肉を突き刺した。
ザッザッザッ――
…………!?
和やかな団欒。
そこに揃った足音を立てて謎の集団が近づいてきた。
逆三角形になるような列を組み、こちらに向かってくる。
お、先頭のオールバックのデカい鼻は見覚えがあるぞ。
どこで見たのかは忘れたが。
彼らは俺たちのテーブル付近までやってくるとピタっと停止をした。
なんだ? 俺たちに用事か?
「君たち。聞いたよ。平民のくせに我々と同じ学び舎に通うことを許されている立場で、随分と勝手なことをしているそうだね?」
集団の先頭にいたオールバック鼻でか金髪が口を開いてそう言った。
おいおい、こいつ、せっかく可能性の光が見えてきたやつらに因縁つけようっていうのか?
「学園が落ちこぼれどものために用意してやった慈悲、基礎魔法の授業を集団でボイコットしたというのは由々しき事態だよ?」
ぎろりと鋭い視線で金髪オールバック鼻でかは平民たちを見回す。
「そ、それは……だって、あんな……」
ポーンが代表して異を唱えようとするが、
「ほう、この学園のカリキュラムに何か不満でもあるのかな? それなら僕が直に学園長に君たちの声を伝えてやろうかい?」
「……っ」
平民であるポーンは権力をちらつかせた脅しの前には何も言えない。
ここは俺が言うしかないか?
いざとなったらテックアート家の名前を出すことも考えよう。
ただ、こいつの家が伯爵より偉かったらどうにもならん。
使いどころを間違えるとレグル嬢たちに迷惑をかけてしまうことになる。
「一体何の騒ぎなのだよ?」
どう出るべきか、対応に悩んでいると食堂にラルキエリがやってきた。
みんなで食ってるから来いと声をかけたのだが、珍しく乗ってきたようだ。
きっと隣に並んでいるエルーシャやフィーナが引っ張り出してきたのだろう。
「およ? なんか思ったより大勢いるね?」
「ふむ、ひょっとして新たな実験体……被験者希望かな、なのだよ?」
暢気な二人。
似た者同士だから惹かれ合ったんだろうな。
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