全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

文字の大きさ
81 / 169
『領地経営』編

第80話『人間とは複雑な生き物である。』

しおりを挟む



 悪酔いから覚めたゴルディオン氏はニコルコを訪れた経緯をポツポツと語り始めた。

「ワシは確かにミエルダ王国の勇者パーティに選ばれて旅に出ました。しかし、数週間ほど前に戦いの邪魔だと勇者殿に言われて追い出されてしまったのです……」

「な、なんですって!? ゴルディオン殿が邪魔!? ありえないだろう!」

「まあまあ、エレン、落ち着いて落ち着いて……」

 エレンを宥め、ゴルディオン爺さんから話の続きを聞く。

 ゴルディオン氏曰く、最初の頃は戦闘に慣れていない勇者を守りながら前衛で戦い、さらに剣の稽古をつけてやったりと頼りにされていたらしい。

「勇者殿は教えれば教えるだけ剣の腕が上がっていくもので。これは立派な武人になれるぞと思いまして。ワシは指導にかつてないほど熱を入れていたのです……」

 だが、勇者は剣の才能こそあったものの覇気に欠ける部分が多くあったのだという。

 ゴルディオン氏は精神面を鍛えるため生活態度から細かく言及し、剣の指導でもあえて厳しい言葉をかけて勇者の奮起を促してビシバシ鍛えた。

「勇者殿はメキメキと力を上げていき、やがてワシよりも強くなりました。すると、お前はもう用済みだから出て行けと……」

 嗚咽を漏らすゴルディオン氏。
 ゴルディオン氏に感情移入して目頭を押さえるエレン。
 いやぁ、なんだかなぁ……。

 思うところはあるけど最後まで聞くとしよう。

「勇者パーティをクビになったワシはおめおめと国に帰るわけにもいかず、かといって何をすればいいかもわからず。こうして誰も知り合いのいない辺境の地で飲んだくれていたというわけです……」

 なるほどね。
 ミエルダ王国ってウンコしてて選ばれたヤリチン大学生が行ったところか?
 あのヤリチンは見るからにウェーイな感じだったもんな。

 根性論とか間違いなく嫌いだろう。

「親身になって稽古をつけてくれたゴルディオン殿を邪魔者扱いするとは! ミエルダ王国の勇者には恩義を感じる心というものがないのか! ヒロオカ殿なら絶対そんな真似はしないのに!」

 プンスカと怒りを露わにするエレン。
 なんか俺の人格面が謎の高評価されてる。
 俺だって知らない世界に連れてこられて軍隊式のシゴキされたら普通に嫌だよ……。

 まあ、鍛えてもらった結果強くなって、弱いときは守ってもらったりで一応は世話になってたのにあっさり追い出すのはヤリチンも意地が悪いかな。

 俺はチートがいきなり無敵だったから問題なかったけど、この世界って子供が奴隷になっちゃうくらいにはシビアだし。

 現代の日本人がそのままの舐めた調子で生きてたら軽く死ねる。

 ヤリチンは最初から強いわけじゃなかったぽいし、まずは性根を叩き直そうと考えたゴルディオン氏の方針はあながち間違ってたとも言えないだろう。

 なんつーか、愛の鞭は相手に理解されないと難しいね。
 パワハラも受けた側が認識しなきゃパワハラにならないっていうし。
 人間とは複雑な生き物である。

「なあ、ヒロオカ殿……」

 エレンがコソコソ小さく耳打ちしてくる。

 なんだよ、吐息が耳に当たってくすぐったいぞ。

「ゴルディオン殿をニコルコの騎士団長することはできないか……? ちょうどゴードンがいなくなって空席だっただろう?」

 そういえば騎士団を引っ張っていける人材が欲しかったんだっけ。

 他国で団長やってたベテラン騎士って適役じゃん。

「俺は構わないけど……エレンはどうなんだ?」

「ん? 私が何か?」

「今まで騎士団をまとめてたのはエレンだろう。他のやつにやらせていいのか?」

「私は代理で引き受けていただけにすぎない。正直、私では力不足な面もあったし……。多くの騎士を育ててきたゴルディオン殿ならヒロオカ殿に相応しい格式高い騎士団に導いてくれるはずだ」

 エレンがそう言うなら……。
 てか、俺に相応しいってなんだろう?
 まあええか。

「えーと、ゴルディオンさん? よかったらウチで騎士団長やらない?」

「むむ……? お主は一体……?」

 俺がスカウトすると、ゴルディオン氏は訝しそうに首を捻った。
 そういや自己紹介してなかったね。
 ちぃーっす、広岡二郎です。

 この世界ではジロー・ヒョロイカです。

「ゴルディオン殿、ヒロオカ殿は公国の勇者でニコルコの領主なのですよ」

「なんと!? 公国の勇者殿でいらしたか! しかも領主とな!?」

 俺は魔王討伐の報酬で領地を貰ったこと。
 賠償金のことなどをゴルディオン氏に説明した。
 国王が魔王と繋がっていた可能性とかは話さなかったけど。

 それはまた、おいおいってことでね。

「私は魔王軍との戦いでウレアの街を救ってくれたヒロオカ殿をサポートするため、父の指示で領地経営を手伝っているのです」

「なるほど、そうだったのですか……。いやぁ、こんなところにいるのでワシはてっきりエレオノール嬢がこちらの領地に嫁いできたのかと思っておりましたぞ!」

 こ ん な と こ ろ 。

「と、とつ……っ!? そんなわけないでしょう! ゴルディオン殿、やめてください!」

「ガハハッ! 冗談ですぞい!」

 慌てふためくエレンと豪快に笑うゴルディオン爺さん。
 年配者によくある無神経ジョークが炸裂してらぁ……。
 こういうところもヤリチン大学生にウザがられてたんじゃないかな。

 それはそれとして。

「ウチはちゃんとした騎士団の空気を知ってる人がいないから、あんたみたいな人がいてくれると助かる」

「左様でございますか……。いいでしょう。このような厄介払いされた老いぼれを必要としてくださるなら是非とも力になりましょう」

 ゴルディオン氏は仰々しく頷いて俺の要請を了承した。

 ヤリチン大学生が戦力外にしてくれたおかげで他国の騎士団長だった人材をハンティングすることに成功したぜ。


「手を差し伸べてくださった御恩は全身全霊で返させて頂きまするッ!」


 ムキムキムキィッと筋肉を膨らませ、マッチョジジイことゴルディオン・トマホークはニコルコの騎士団長に就任した。





 翌日。

「これしきのことでへばってどうする! よいか、ワシの若い頃は――」

 騎士団長に就任したゴルディオンはニコルコの騎士たちを早速鍛え直していた。
 微妙に老害っぽい言い回しをしてるのがちょっと気になったが……。
 軍隊だし、あんなもんでいいのか?

 ちなみにゴルディオンの訓練にはなぜかエレンも参加していた。


「民を守るため、さらに強くなれるのだ! これほど喜ばしいことはない!」


 汗だくで泥まみれでヘトヘトになりながら、それでも彼女はとても幸せそうだった。

 俺には理解できない世界だ……。




しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。 そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。 両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。 気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが…… 主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...