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『領地経営』編
第98話『ヘイスティール・E・アルカディア』
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聖騎士ダスクを冒険者デビューさせてから五日ほどが経った。
この期間は特筆するような事件は何も起きず、至って平和であった。
俺がジゼルと新しい名産品候補の相談をしてから徒歩で屋敷に帰ってくると、一人の少女が門番の獣人女性騎士に突っかかっていた。
「だから! なんでよ! 入れなさいよ! あたしは領主に用があるの!」
「駄目です」
「あああああああああああああっ!」
なんだありゃ……。
よく見ると、騒いでいるのはダスクと一緒にいた緑髪の少女だった。
「おい、何やってんだ」
「はあ? あんた誰?」
緑髪少女は胡散臭そうな目で俺を見てくる。
「ジロー様、おかえりなさいませ。不審者の足止めをしておりますが、目障りでしたら即刻に排除致します」
この門番、淡々とした口調なのに物騒なことを言うなぁ……。
ベルナデットのインスパイア系ですか?
俺は門番に労いの言葉をかけ、それから緑髪少女の方を向く。
「俺がニコルコの領主だが。どんな要件だ?」
「え? あんたが?」
少女は目をぱちくりさせ、
「なら話が早いわ! あんたにあたしを雇わせてあげる!」
ふふん、と小ぶりな胸を張ってそんなことを言ってきた。
雇わせてあげる、と謎の上から発言をしてきた少女を俺は屋敷に入れた。
面倒だから追っ払ってもよかったんだけどな。
でも、ダスクは聖女を守る聖騎士だったわけじゃん?
そのダスクが従者のように付き添ってたってことはつまり……。
【名前:ヘイスティール・E・アルカディア】
【職業:聖女 旧聖女 元聖女 劣化聖女】
【ステータス: 神聖回復魔法LV2 水魔法LV4 光魔法LV2】
やっぱり聖女でした。
だけど職業のところヒデェなおい。
大聖国には聖女の力をもらったJKが行ってたはずだが……。
…………。
何となくではあるが。
どうして彼女がこんなステータスになっているのか察することができた。
恐らく、ビッチJKの貰った聖女チートが彼女の能力より優れていたのだろう。
そんで周囲から下位互換扱いされて――っていう。
居づらくなって自分で出てきたのか追い出されたのかは知らんけど。
どっちにしても悲しいなぁ。
聖女コンビで魔王を倒しに行く尊い展開にはならなかったようだ。
神のやつもキャラが被るところに送ってやるなよ。
まあ、聖女と言われてたからには異世界基準ではすごい力を持っているはず。
なので話くらいは……と判断したわけなのだが。
果たして。
応接間に通した聖女ヘイスティールとテーブル越しに面談を始める。
癖のある緑の髪とクリっとした赤い瞳。
年齢は15歳くらいだろうか?
小生意気でアホっぽい話しぶりだが、黙っていれば理知的にも見えそうな整った外見の美少女である。
「あたしはスチルよ。大聖国から来て、少し前に屋敷を買ってニコルコの住民になったの」
ふうん? ステータスだとヘイスティール・E・アルカディアってなってたんだが。
こいつもダスクと同じで身分を隠していくスタイルなのね。
ま、簡単に明かせない素性だろうし別に構わんけど。
「ところで雇わせてやるとか言ってたのは、ありゃどういう意味だ?」
「え? そのまんまよ? 実はダスクっていう同居人がうるさくてね。彼女は働き口がないから冒険者を始めたみたいなんだけど、『私が汗水たらして魔物を狩っている間、家で食っちゃ寝してどんな気持ちです?』とか『働かないで食べるご飯はどれくらい美味なのです?』とか。あの子に相談しないで家を買ったのをまだ根に持ってるのか毎日グチグチ言ってくるのよ。だからあの子よりたくさん稼いで、これで文句ないでしょ! って黙らせたいわけ」
そりゃお前のせいで特殊な銭湯の勧誘に引っかかったり、不本意な労働を強いられるハメになったんだから嫌味も言いたくもなるだろうよ。
「ずっと暮らすつもりなら宿代を払い続けるより早いうちに屋敷を買ったほうが得でしょ? 一括払いのほうがローンを組むより払う金額が少なくて済むでしょ? あの子はそういう全体を見通す考えもできないくせにごちゃごちゃ言ってきて困っちゃうのよね」
無計画に蓄えを使い果たしたツケを従者に押し付けている分際が何かのたまっていた。
どこら辺からツッコミ待ちなのか……。
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