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『勇者伝』編

第131話『どんどんうどん♪』

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 そっちの世界のみんなー!
 王都から転移で騎士団の部隊が攻めてきたり、色々面倒なこともあったけど、俺は元気でやってるよー。



 今日、俺は教会の炊事場を借りてスシに続くニコルコのご当地メニューを試作していた。
 なんで教会かっていうと、教会の子供たちに試食して貰いたいから。

 デルフィーヌたち? 
 あいつらはダメだよ。
 日本食を絶対に受け付けない系女子だってことが経験上わかってるから。

 もう、受け入れて貰えないのは嫌なんだ……!
 あんな思いをするくらいなら最初から期待なんてしない――ッ!
 暗い過去を背負ってる感じに言ってみた。

 特に意味はない。




 俺はグツグツと煮えている鍋の中を覗いた。

 どんどんうどん♪
 うどんうどーん♪
 うどんの汁でおのれ知る~っと。

 まあ、作ってるのはラーメンの汁なんですけど。

「いい感じになってるな」

 鍋には沸騰する黒い液体と魔獣の肉が入っていた。
 それだけが入っていた。
 本当は昆布とかニンニクとか、他にも色々入れるのが一般的なんだが……。

 今回は醤油に肉をぶち込んだだけのシンプルなスタイルでやってみた。
 元の世界では○岡式と言われていたラーメンスープの作り方だな。
 ちなみに広岡式ではない。

 あしからず。

 麺は領主邸の料理長に『スパゲッティの麺とはなんか違うんだよ、なんかこう、つるつるしてない感じで!』と注文をつけたら試行錯誤してそれっぽいのを用意してくれた。

 灰汁がどうのこうのやったらできたらしい。

 説明されても俺にはちんぷんかんぷんだったので、とりあえずねぎらいのボーナスを渡しておいた。

 ふわっとしたイメージだけで現代のモノを再現してくれる現地人こそが最強のチートだと俺は思いました。まる。


「りょうしゅさま、お手伝いすることはありますか?」


 炊事場にひょっこりと顔を出したのは、元聖女であるスチルのプライドを無自覚でボコボコにしたり冒険者ギルドで治療係として活躍中の幼女、アンナだった。


「おお、ありがとな。じゃあ、刻んだ玉ねぎを麺を入れた後の丼に入れてくれるか?」

「はい!」

 元気よく返事をした後、

 アンナは俺の用意している材料を見て、

「わあ! ラーメンだぁ!」

 ぱぁっと表情を輝かせた。
 ふふ、いい反応をしてくれるぜ。
 子供はラーメン好きだよな。

 知らんけど。

「ん? 待てよ……。アンナ、ラーメン知ってるのか……?」

 もしかしてラーメンってこっちの世界にあった?
 いや、料理長は知らないと言ってた。
 世界のどこかにあったとしても、ニコルコで育ったアンナが知っているのは妙だ。

「…………」

「アンナ?」

「う、うわぁ~、はじめてみるお料理です!」

「もう遅いが?」

「はい……」





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