138 / 169
『勇者伝』編
第137話『軽く炎上しそうな熱いバトル』
しおりを挟む「ヒョロイカ……本当にやるのか……?」
リクとある程度の距離を取って準備していると、訓練場にいないんじゃないかと錯覚するくらい空気だったバルバトスが俺に訊ねてきた。
「正直……勝敗がどうであれあいつをSSSランクする認可は下りないと思う。この手合わせに意味はまったくないぞ……?」
それはリクに言ってやれよ。
まあ、聞いて貰えないので俺に言ってるのだろう。
「俺が勝てばあいつも諦めるしかないだろ。ランクを上げろって二度と言えないようにするにはコレが一番いいと思うけど」
「そうか……なるほど……。面倒をかける……お前の力を見せつけてやれ……」
てっきり止めに入ってくると思ったけど。
バルバトスは俺の勝利を微塵も疑っていないようだ。
万が一、俺が負けたら言質は取ってたとか言われてもっと面倒なことになるのに。
いや、まさか……。
その可能性に気付いてないだけじゃないよな?
さて、俺が使う武器だが。
じゃじゃーん。
空間魔法のスキルで取り出したのは白い無骨な感じの剣。
その名もブラックドラゴンソード――とでも言っておこうか。
ほら、初対面でブラックドラゴンと戦ったときに斬り落とした尻尾あったじゃん?
実はアレ、こっそり回収してたんだよねぇ。
そんで、その骨や鱗を素材にしてカンカンっと作っちゃったのよ。
鍛冶屋のオヤジから指導を受けつつ、全マシの鍛冶スキルLV5で錬成した一級品の剣。
勇者を相手取るなら、素材共々、これくらいの武器は必要だろう。
「じゃあ行くぞ!」
「うぃーす、いつでもカモーンっすよ!」
審判をバルバトスに任せ、俺とリクは一気に間合いを詰めて激しく剣をぶつけた。
「へえ、その剣……なかなか頑丈じゃないっすか?」
「そうかい?」
「ええ、オレの聖剣と打ち合って壊れないって大したもんっすよ」
「そりゃどうも」
この言い方、剣の強度でゴリ押しして勝つつもりがあったってことか。
侮られてるな。
「ジロー!」
「ヒロオカ殿!」
「ジロー様!」
デルフィーヌたちの声援が飛んでくる。
「リク! いつもみたいサクッとやっちゃえ!」
「かっこいいとこ見せてー!」
「…………」
リクもパーティメンバーからエールを送られていた。
紺髪の美少女は無言だけど。
あの子、パーティで浮いてる感じなのかな……?
俺とリクは剣をぶつけ合って勝負を続けていた。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン! と。
そんなふうに戦っていた。
軽く炎上しそうな熱いバトルであった。
いや、嘘だわ。
それほどじゃないわ。
「ふーん、オレの剣技にここまでついてこれるのか……。イージーモードとはいえ、魔王を倒しただけあるみたいっすね?」
「ま、俺も勇者だから多少はね?」
なんて、平然と話しているけど。
剣を交えてみてわかったことが一つある。
それは、剣術に関してはリクのほうが僅かだが確実に上だということ。
ステータスを盗み見る。
【名前:ノムラ・リク】
【固有スキル:勇者の剣才(剣術スキルの効力・成長率アップ)】
【ステータス:剣術LV3 言語理解LV3 料理LV2】
リクの剣術スキルはLV3……。
俺よりもレベルが低い。
なのに、剣の腕はリクが勝っている
これはつまり、リクのステータスにある『勇者の剣才』という神様から貰ったチートでそうなっているのだろう。
剣術スキルの効力と成長速度が上がるらしいし。
どれくらいの倍率で上乗せされるのかは不明だが、少なくともLV3がLV5を上回る程度に効果があるのは間違いない。
「まさか、ヒロオカ殿が押されている……!? ありえん……ッ!」
「その辺のやつがリクに勝てるわけないのは当然でしょ?」
「ジローはその辺のやつじゃないわよ! だって、勇者なんだから!」
「はいはい、国から認めて貰えなかった勇者ね。ま、その割には頑張ってると思うわよ?」
「それでも最強はジロー様です……」
ギャラリーの声を耳にしながら。
さて……。
ベルナデットから『と、思ったけどやっぱちげーわ』なんて言われないように。
そろそろ本気出すかね?
まあ、剣術ではリクに分があることは認めるが。
俺にはやつが持っていないスキルが腐るほどあるのだ。
「にーさん、悪いけど、これで仕舞いだよ!」
「よいしょっと」
「うわっ」
リクは俺がスッと置いた足に引っかかって無様にすっころんだ。
ああ、顔面からいっちゃってるよ……。
すげえ痛そうだ。
「ぐ、いてて……なんだ今の動き!?」
リクが鼻を押さえながらフラフラ立ち上がる。
体術LV5です。
回避LV5も組み合わせてるかな。
「ははっ、変な名前の力だけでオレに一発入れるなんて大したもんだよあんた……」
なんか感心された。
てか、そもそもコイツ『全マシ』がどんな力か知らないで下に見てるんだよなぁ。
聞いてもこないし。
「おりゃあああ!」
「…………」
サクッと躱す。
「くそっ! なんでだ! 見切られてるのか!?」
ひょいひょいっとリクの剣を避け続ける俺。
転移で背後を取ってみたりもする。
そして――
剣をブンブンと無駄に振り回しまくったリクはやがて肩で息をするようになった。
まあ、馬鹿正直に正面から剣で勝負しなければ全然大したことないな。
「はあはあ……! オレはSランクの冒険者なんだぞ!」
俺はSSSだぞ!
さっきなったばかりだけど。
疲労が重なったリクの剣は明らかに弱体化していた。
こういうのが、太刀筋が寝ぼけているよって感じなんですかね?
これなら地力に差があっても余裕だな。
俺はリクの聖剣をブラックドラゴンソードで弾き飛ばした。
「うおおおおお!」
剣を失ったリクは諦めるかと思いきや、素手で殴りかかってきた。
いや、お前、剣以外は一般人やろがい。
謎の根性見せてきたのビビるわ。
「大体、お前の力がどんなもんかはわかったよ」
俺は水で砲弾を作ってぶっ放した。
水の砲弾が腹にぶち当たったリクは『くの字』になりながらクルクルと吹っ飛んでいく。
ムーンサルトォォオォオ――ッ!
ドサリ。
リクは地面に大の字になって落下した。
「おーい、大丈夫か?」
「く、くそっ……魔法まで使うなんてずりーぞ……」
ピクピクしながら負け惜しみを残し、リクは意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに
試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。
そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。
両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。
気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが……
主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる