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『全マシ。チートを貰った俺』編
第7話『さしずめ、ここはうんこの街。』
しおりを挟む秘書さんが俺の隣にやって来た。
「ひとつ訊いてもよろしいですか?」
「なんすかね」
「そのバッグは一体なんなのでしょう? 明らかに大きさと容量が見合ってないですよね」
……まあ、そろそろ突っ込まれると思っていたよ。
どう言い逃れすっかな。
魔法のある世界だし、まったくありえない技術ではないはずだけど。
ここまでスルーされてたのがその証拠だ。
「魔法の効果が付与されたバッグです。大きさに関わらずいろんなものが入るんですよ」
とりあえず簡潔に説明。魔王から盗んだとか時間凍結の類は言わなくていいだろ。
なんでもペラペラ話す必要はない。
「すごいですね。帝国の品ですか?」
「帝国? はあ、そんなところかな」
「なるほど……ありがとうございました」
秘書さんは査定をしに戻っていく。……帝国ってなんだ?
踏み込まれると厄介なので適当にはぐらかしちゃったけど。
他の連中が送られた国に帝国なんてなかったよな。
他にも国はあるってことなんだろうか。
秘書さんは納得いったかな。ちょっと微妙な感じだ。
情報収集して、次はもっとうまい言い訳を考えておこう。
狩ってきた量が量なので査定には時間がかかるらしい。
とりあえず終わって用意できた査定分だけ頂いてまた明日取りに来ることにした。
合計で500万ゴールド。多分、日本円で500万くらい。
一日でサラリーマンの平均年収上回っちゃったな。
懸賞金と残りの査定額を合わせたらすごいことになりそう。
ギルドカードも発行してもらった。A~Fまでランクがあるそうだ。
本当はFから始まるんだけど、俺は魔王幹部を一人で倒したからいきなりAだって。
どうやら特例中の特例らしい。他の冒険者に妬まれたらいやだな。
リンチされたらどうしよう。
ギルドを後にして街の中を歩く。
夕暮れの空。石畳の通りはうんこの臭いがした。
中世っぽい時代設定に相応しく、排泄物は道にポイ捨てが当たり前。
さしずめ、ここはうんこの街。
お金をもらったら家でも買おうと思ったけど、こんなところに住みたくないな。
でも、この国はどこへ行ってもこんな感じらしい。
うんこの街じゃなくてうんこの国だったか。俺が領主なら厳しく取り締まるのに。
魔王を倒した報酬で領地でもくれないかな。もらっても管理が大変か。
意味もないよな。どうせそのうち帰るし。
うんこのポイ捨て禁止くらいは国令で出してもらおうか。
こんなん絶対病気になるぜ。
ダメって言われたら諦めるけど。
腹が減った。どっかで飯でも食おう。
いい匂いに釣られて入った店は飯屋じゃなくてバーだった。
けど、料理もあったので夕飯はそこで食べることにした。
カウンター席に腰かけてワインとソーセージセットを注文。
バーテンダーはふさふさの耳と尻尾を携えた活発そうな獣人の少女だった。
「お嬢さん、いい尻尾してるね。ひょっとして猫の獣人?」
先に出てきたワインを一口飲みながら訊いてみた。
「犬だよ。猫はこんなに尻尾ふさふさしてないでしょ。あとセクハラ」
うーん、犬かぁ。嫌いじゃないけど少し残念。やっぱり俺は猫派なんだよなぁ。つか、尻尾関係はセクシャルな話題なのね。
「俺の飼ってた猫はもふっとしてたよ。そういう種類だったんだけど」
「お客さん、猫なんか飼ってたんだ。変わってるね」
「え? 飼うでしょ。俺のいた国ではメジャーなペットだったよ」
「あんな生ごみを食い散らかしてく畜生を愛でるなんて、どこの未開の地だい?」
畜生とは散々な言いぐさだな。飼ってみたら可愛いんだぞ。
絶対病みつきになる。
あと、日本はこの国より遥かに発展した世界ですよ。
ウンコ臭くないし。魔法はないけど。
「ねえねえ。尻尾もふっていい?」
「ダメに決まってるでしょ! お客さん、もう酔ってるの? さっきからセクハラがすぎるよ!」
「だってさぁ……。寂しいんだもん。心にぽっかり穴が開いたみたいな感じでさ」
「そ、そんな甘えてきたって駄目なんだからねッ! ダメだよ。ダメダメ……。ウィンドベルの看板娘はそんなに安くないよ!」
なんか尻尾をピンと立ててソワソワしだした。ハイハイ、ダメなんでしょ。わかってるよ。しつこくしないから安心しなって。
……ウィンドベルってのは店の名前かな。
よく確認しないで入ったからわかんないや。
「もふもふがさ、足りないんだよね……」
「…………は?」
「でもさ、根無し草だとペット飼うのは難しいじゃん? 宿暮らしだと住む場所がしょっちゅう変わって動物にはストレスになっちゃいそうだし」
独り言のようにごちる。バーで愚痴をこぼすのは初めての体験だった。
一回やってみたかったんだよ。
「……寂しいって、猫が飼えないからなの?」
「そうだよ? 当たり前じゃん」
猫を飼うには家がないと無理だ。無責任な飼い方はできない。大体、元の世界に帰るときに連れて行けるかわからないし。
散々甘やかして野良に返すのは可哀想だ。
信じて預けていける知り合いがいればいいかもしれんけど。
ああ、コタロー。お前のもふもふが懐かしいよ。
お日様みたいな匂いのする、あのお腹に顔を埋めたい。ふわふわな尻尾をモミモミしたい。
元の世界に置いてきた愛猫を思い出して切なさを感じる。
「はぁ~」
バーテンダーの少女が溜息を吐いていた。
どうしたんだ? 肩透かしを食らったみたいな顔して。
溜息は幸せが逃げていくらしいぞ。
「じゃあ獣人の奴隷でも買ったら? いくらになるか知らないけど。奴隷なら好き放題触っても逆らわないよ」
「なるほど、奴隷か……」
こっちの世界にはあるんだな。現代人的な倫理観だと少し抵抗はあるが……。
「うわ、本気で考えてるよ」
「もふもふが摂取できないのは俺にとって死活問題なんだよ。こう、動悸が止まらない感じになるの、わかる?」
「わかんなーい」
くそ、自前の尻尾があるからって!
しばらくしてソーセージセットが運ばれてきた。
ソーセージはすげえうまかった。
パリッとして肉汁がジュワジュワでさ。また来よっと。
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