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『勇者伝』編
第168話『えらーいエルフ』
しおりを挟む「代わりにお金を払ってくれたことは感謝するわ。でも、悪いけど……あたしたちにはそんな大金を返す余裕はないの……」
経緯を聞き、消沈した面持ちになってボソボソ答えるフランソワ。
さすがにバツが悪いのだろう。
「別に返済はすぐじゃなくていいよ。ただ、俺に借金をしていることを忘れなけりゃいい」
「…………」
「ところで、ハスミが買ったっていう奴隷の子たちはどうしたんだ?」
鎧の青年、バブーフが訊いてきた。
「俺の屋敷で使用人として扱う予定だが?」
「その子たちと会わせてもらうことはできないのか?」
「ダメだな。俺が代わりに払った金をお前らが返さない限り会わせない」
「その奴隷の方たちを買ったのはハスミさんなんですよ!」
「でも、金払ったのは俺だし」
「みんな、仕方ないわよ……この人のおかげであたしたちは助かったんだから……」
フランソワが諦めたように肩を落とながら他の二人を諭した。
おお、さすがに考えを改めたか。
物わかりがよくなったな――と思っていたら、
「こうなったら、新しく買われた子たちを少しでも早く不幸な環境から連れ出してあげられるよう頑張るしかないわ!」
………………。
今いるメンツの食い扶持すら怪しくなってきているのに、自分たちのほうがいい生活をさせてやれると思ってる自信が少し怖いゾ……。
こうして、金の無心にきた共和国の勇者パーティは逆に多額の借金を背負ってトボトボと屋敷を去って行ったのだった。
「よかったのですか? あの請求書は共和国との交渉で持ち出す予定だったのでは?」
来客が全員いなくなった執務室でシルバリオンが俺に訊いてきた。
スチルはあれからさらに数杯ほどニホンシュを堪能した後、スシ折りをお土産に千鳥足で上機嫌になりながら帰って行きましたよ。
あいつ何しに来たんだ……。
「まあ、共和国とのやり取りで使うカードはツケの肩代わりだけで十分だろ」
ハスミは共和国から援助の仕送りがくること前提で奴隷を買っていた。
現代でいうリボ払いみたいなこともしていたのだ。
今回、そっちのぶんもついでに俺がまとめて代わりに支払ってやったのである。
これは債権を買い取ったという形になるのかな?
ちなみに俺が彼女たちに請求したのは最新の買い物のぶんだけ。
負担した全額を払えっていっても絶対無理だろうし。
共和国側に請求したほうが確実に返ってきそうだけど。
あの連中、ゴネたら意見が通ると思ってるフシがあったからな。
少しくらいは痛い目を見てもらわないとひたすら増長しかねない。
「まさか、ここに至るまで他の誰もハスミ様の金の使い方に疑問を抱かなかったとは……」
シルバリオンは呆れてるやら恥ずかしいやらで複雑な表情をしていた。
とりあえず、パーティメンバーを奴隷堕ちから救ったことも含めて共和国に提示しよう。
賠償金や交易の交渉でこっちに有利な条件を引き出すのに使えると思う。
「さて、共和国はいつ返事を送ってくるかねぇ……。ちなみにシルバリオン、どのくらいの立場の人が来ると思う?」
「どうでしょうか。勇者様の件ですし、議会からそれなりの人物が遣わされてくるとは思いますが……」
そして二日後。
共和国から使者がきたと連絡があった。
やってきたのは国家元首相談役という、えらーいエルフだった。
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