15 / 169
『全マシ。チートを貰った俺』編
第15話『生きるために戦え!』
しおりを挟む痴女との決闘。
結果だけ言うと俺は圧勝だった。
ほとんど語ることはないくらいに。
痴女は鞭の使い手であった。
回避スキルを持つ俺は痴女の連続した鞭の攻撃を簡単に避けまくった。
そして痴女の体力が尽きたところで懐に飛び込み、喉元に剣を突き付けて勝利を宣言した。
おわり。
……こんな感じで一瞬だった。
あっけねえよなぁ。
一撃も加えられなかった痴女は泣きそうな顔で逃げ帰っていった。
まあ、これでもう変な言いがかりはつけてこないだろう。
ふう、やれやれ。まったく、余計なことに体力と時間を使ってしまった。
金を受け取ったらすぐ依頼を探して出立するつもりだったのに。
「ご主人様、本当に強かったんですね……。Bランク冒険者をあんな簡単に」
「だって俺はAランク冒険者だよ?」
昨日なったばかりだけど。
「そ、そうでしたね」
「俺のことより、今日はこれからが本番だぞ」
「は、はい!」
俺たちは門を抜けて森に向かった。
休憩しつつ歩いて数時間。森の浅いところで散策を始める。
「いいか、俺が最初に弱らせるから止めはお前が刺すんだぞ」
「わかりました……」
ベルナデットはショートソードを握りしめて不安そうに答えた。
怯えてるみたいだけど大丈夫かな。
今回の依頼内容は初級魔物であるジャッカロープという角の生えたウサギの素材をいくつか手に入れること。
成功報酬は少ないが目的は金じゃない。
ベルナデットを戦いに慣れさせ、魔物を斬ることへの恐れをなくすことが狙いだ。
ターゲットである角の生えたウサギを発見した。
……デカいな。牛と同じくらいの大きさじゃないか?
表情は凶悪でブサイク。これならあんまり躊躇わずに済みそう。
もふもふで可愛かったらどうしようと思ってたんだよ。
『ブモオォオォォォォ――ッ!』
「ベルナデット。俺が呼ぶまでそこで大人しくしてろよ」
コクコク頷くベルナデットを置いて俺はジャッカロープに飛びかっていく。
今回は剣を用いた接近戦でいく。
幼い子供に生き物を斬らせようとしているのに自分だけ魔法で楽をしては示しがつかん。
俺も覚悟を持って戦おう。自らの手で生き物を殺す感触をこの身に刻むのだ。
「どりゃあああああ!」
スパーンッと素材の一つである角を根元からぶった切る。
『ピギィィィィ――ッ!』
剣術スキルを使い、洗練された動作でザクザク傷を負わせていく。
残酷なことだとは思うが、すまんな。弱らせないとベルナデットが危ないんだ。
魔法と違い、生きている肉を切り裂く嫌な感覚が手に残る。
ジャッカロープの血が吹き出して森の地面を赤く濡らしていった。
殺戮の匂いが辺りに広がっていく。
『ピギッ……ピギッ……』
ほとんど動けなくなるまで弱らせ、ベルナデットのほうを向く。
「出番だ」
「ひぐっ……ううぅ……」
涙と鼻水を流してガタガタ震えていた。
……これ、PTSDとかにならんだろうか。
もう少し訓練させてから臨むべきだったか?
「やっぱり止めとくか?」
「……や、やりばぁすっ! うばあああああぁ――っ!」
ベルナデットは泣き叫びながらジャッカロープに剣を突き刺した。
やる気あるな。だったら俺も厳しくいこう。
「刃の通りが甘い。死んでないぞ。もう一回!」
「ふぐう……」
「生きるために戦え! 死にたくないなら心を強く持て! 奴隷から自由になりたきゃ敵をぶっ倒せ!」
「あああああああああ――ッ!」
ベルナデットは涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながらジャッカロープに何度も剣を突き刺していったのだった。
その後の狩りは順調だった。
俺が弱らせてベルナデットが息の根を止める。
半ば作業めいた連携で次々と素材を回収していった。
ただ、トラブルが一回ほどあった。
まあ、ちょっとしたやつだったけど。
そのトラブルとは。
『ピギャアアアアア――ッ!』
ベルナデットと交代した途端、十分弱らせたはずだった何体目かのジャッカロープが最後の力を振り絞って暴れ出したのだ。
即座に俺が割って入り、首をスパッと斬り落としたことで大事には至らなかったが、あれは肝が冷えた。
「危なかったな。大丈夫だったか?」
「あ、ありがとうございました……」
助けた直後のベルナデットは腰を抜かしたまま静かに頷いていた。
恩を感じてトクンときたか?
そんなわけねえか。
自作自演もいいところだし。
俺の詰めが甘かっただけだもんな。
すまぬ。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに
試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。
そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。
両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。
気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが……
主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる