全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

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『全マシ。チートを貰った俺』編

第26話『本当に勇者様なのか?』

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◇◇◇◇


「今からお前たちに少々刺激の強いものを見せることになる。覚悟してくれ」

 ミートパイが目を覚ます前にギルドを退散した俺たち。
 現在はそのままの足で高級宿の一室に集まり、第一回パーティ会議を開催していた。
 目的は当然、デルフィーヌに魔王討伐がすでに完了していることを伝えるためだ。

「ふっ、案ずるな。私はもう大抵のことでは驚かんぞ」

「ええ。あたしも十分耐性はできたわ」

 なんでもござれとドヤ顔で二人は言い切った。
 念のためベルナデットにも視線を送ると、彼女も問題ないと頷く。

「そうか。なら安心だな。いくぞ」

 ガサゴソとアイテムバッグを漁る。
 全部を出すのは億劫なので頭部だけでいいだろう。
 俺は目当てのモノを見つけて引っ張り出した。


「…………」
「…………」
「…………」


 三人が動きを止めていた。
 硬直ってこういうことを示すんだと俺は初めて理解した。


「これ、魔王スザクなんだけど……」


 死体となった魔王の頭部を掴みながら悠々と説明を始める。
 おふぅwwwデルフィーヌ、エレンwww
 自信満々だったのに縮み上がっとるわwww

 ベルナデットも故障したロボットみたいな感じで小刻みに震えている。
 フッ、成し遂げたぜ!

「実は俺、勇者でさ。最初に召喚されたのが魔王城で……おっと」

 うっかり手を滑らせて魔王の頭を放してしまう。
 頭の重さでバッグが傾き、ずるっと魔王の上半身が這い出て床に転がった。


 ごとん。
 

「ああ、仕舞い直すのが大変だぁ……ん?」


「「「ひ――っ!!!!」」」


 三人の時が落下音によって再び動き出した。


「「「ひぃいぃいぃぃぃぃいぃっ! それ魔王うぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅっ!!!!????」」」


 やれやれ。ちゃんと覚悟しろって言ったのに。
 お前らも大丈夫だって言ってたのに。
 部屋の外まで聞こえそうな悲鳴を上げやがって。

 事件と思われたらどうすんだよ、困ったやつらだ。
 俺は魔王をバッグに詰め直しながら息を吐いた。



「……ヒ、ヒロオカ殿は本当に勇者様なのか?」

 しばらくして落ち着くと、エレンが半信半疑に訊いてきた。

「そうだよ。なんか魔王どもが転移のときに邪魔したらしくてな。本来の場所じゃなくて魔王城に召喚されたんだ」

「いきなり魔王城に呼ばれてよく無事だったな……」

「ああ。なんかめっちゃ囲まれてたけど、聖水をかけたら楽勝だったよ」

「えぇ……」

 だから何でみんな俺の成果を聞くと呆れるんだよ。
 そろそろ正当に褒めてほしいゾ。

「さすがジロー様です」

 ベルナデット、お前、最初に話したとき冗談扱いしたよね? 
 俺、ちゃんと覚えてるよ。

「ヘルハウンドの他に超級や上級の魔物も一斉に討伐したと聞いていたが、まさか魔王城で一網打尽にしてきたものだったとは……」

 エレンがブツブツ言っている。どうせ褒めてくれないんだから放っておこう。
 そんなことよりも――

「……おい、デルフィーヌ? どうしたんだ?」

 先ほどから、一番喜ぶべき人間が一言も発していなかった。
 ここは喜びを爆発させていいところだと思うのだが。
 デルフィーヌはそれほど浮かれていない様子だった。

 むしろ消沈しているようにすら思える。なぜだろう?

「……召喚、失敗してなかったんだなってね、そう思ってね」

「そうだな。この国の召喚は失敗してない。俺はここにいる」

 見ればわかることだ。それがどうしたというのか。

「……場所が違うだけで、成功してたんだよね。それで、どこの国の勇者よりも早く、ヒョロ……ジローは魔王を倒した。そんなすごい勇者を召喚したんだよ。なのにどうして……。失敗してないなら、父さんは何も悪くなかったのに……」

「…………」

 俺は言葉をなくした。エレンもベルナデットも口を閉ざす。
 重い空気が部屋を包んだ。
 ……そうだよな。

 俺がちゃんとした場所に召喚されていれば彼女は辛い思いをしなくて済んだのだ。

 ポークステーキの言葉ではないが、普通に行けば勇者のパーティとして多くの人々から尊敬され、褒め称えられるような未来があったかもしれない。

 だが、現実は正反対。
 王に睨まれ、父を失い、民からは疎まれる存在になってしまった。
 とてもじゃないが晴れやかとは程遠い結果になっている。

 そう考えると嬉しさよりも歯痒さ、悔しさが先に来てしまうのだろう。

「フィー……無理をしなくてもいいんだ。泣きたいときは泣いてもいいんだぞ」

 エレンがデルフィーヌの肩に手を置き、そっと抱き寄せた。

「ごめん、エレン。ジローも……今だけだから」

 デルフィーヌは親友の腕の中で静かに嗚咽を漏らした。
 きっと、俺はこのとき初めて彼女の味方になろうと本気でそう思ったのだろう。
 振り返ってみるとそうだったんだなってのがよくわかる。


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