全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

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『全マシ。チートを貰った俺』編

第32話『宣戦布告』

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◇◇◇◇◇


 とりあえずエレンを部屋に迎え入れて詳しい話を聞くことにした。

「で、一体どういうわけなんだ?」

 俺が訊ねると、エレンは勢いよく頭を下げてきた。
 ……ワッツ? 何事? 金の無心……ではないよなぁ。
 この子、貴族の娘だし。デルフィーヌみたいに没落してないし。

「話をする前に、私はヒロオカ殿に謝らなくてはいけないことがある。私の身分についてだ」

 美しい銀髪のなかに見え隠れするつむじを眺めながら、俺は彼女の懺悔に耳を傾ける。
 身分……とな?

「私の本名はエレオノール・エアルドレッド。私はただの冒険者ではなく、この土地を治める辺境伯、ブラッド・エアルドレッドの長女……つまり貴族なのだ……」

 なんかものすごく決死の覚悟で告白してくれてるけど……。うん、ごめん……それ、知ってるんだ、すまない。

「ヒロオカ殿は勇者であることを明かしてくれたのに私は素性を隠し、あなたを欺いて接していた……。本当に申し訳なかった」

 さらに深く頭を下げるエレン。
 そこまで謝られるとこっそりステータス覗いたのが申し訳なくなってくるんだが。
 どうしよう、勝手に盗み見たとか言ったら幻滅されそうだなぁ……。

「む……? あまり驚いていない様子だな? ヒロオカ殿、もしかして気づいていたのか?」

 僅かに顔を上げ、エレンが訝しそうに見てきた。
 げっ、勘付かれた!?

「ふふ、ジロー様は全知全能なのです」

 おい、ベルナデット、余計なことを言うんじゃねえ。

「あーほら。俺のいた世界には貴族がいなかったからさ。いまいちピンとこなかったんだよ」

「なんと、貴族がいない……? それはどういう――」

「あーそれはな……」

 適当に誤魔化したらエレンの興味が逸れたので有耶無耶にできた。
 鑑定能力を持っていることはとりあえず秘密にしておこう。
 覗きが趣味の男と思われたら嫌だからな。



 ――で、エレンがどうしてそんな話をしてきたのかというと。


「実は昨晩、ヒザマが上空に確認された後、魔王軍からヒザマの名前で辺境伯軍に宣戦布告が出されたのだ」


 この宣戦布告に対し、エレンの父親、エアルドレッド辺境伯は徹底抗戦の構えで兵を出すことを決めたらしい。

 ふむ、いいじゃない。戦うなら俺も参戦しよう。この街はうんこ臭い街だが、この世界に来て初めて暮らした街だ。

 それなりに愛着はある。
 魔物に荒らされるのを看過するわけにはいかない。

「今回の戦いは冒険者にも褒賞を出して参加を呼び掛けるつもりなのだが、そのなかでも有力な冒険者には協力体制を取るため個別に声をかけて招集することになったんだ」

 それでエレンはヘルハウンドを倒した俺のことを父親に聞かれ、知り合いだと答えると屋敷まで連れて来るように言われてしまったんだとか。
 
 魔王や勇者のことは信じてもらえないと考えて話してないということだが……。
 ううん、協力体制ねえ……。
 正直、俺が自由に動けるよう調整してもらえばいいだけなんだけど。

 作戦とか押し付けられたらかえって面倒だ。

「どうだろう? 来てもらえないだろうか。馬車はすでに外に止めてあるのだが……」

 ……そんなうるうるした目で見られて断れるかってんだ。

「わかったよ、準備するからちょっと待ってろ。あ、ベルナデット、お前は留守番な」

 ベルナデットが『そんな!』と喚いていたが、連れてっても面倒ごとが増えるだけだ。
 もう自分の身は自分で守れるんだし、留守番くらい平気だろう。

「ジロー様……ぐうう……エレン……ッ!」

「ヒロオカ殿。で、では、下で待っている!」

 ベルナデットから怨嗟のこもった視線を向けられたエレンは逃げるように部屋を出て行った。



 こうして、俺はこの地を治める辺境伯と対面することになってしまった。
 少し緊張するが、国王と謁見する前の予行演習と思えばなんてことはない。
 えーと、辺境伯ってどれくらい偉いんだっけ?

 伯爵より上で……侯爵? いや、公爵と……同じ? まあ、どっちでもいいか。
 エレンの親父さんなら悪い人じゃないだろうし、困ったことにはならんだろ。
 いざとなれば魔王を見せればいい。

 あれを使えば大抵の交渉事なら主導権を握れるはずだ。

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