全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

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『全マシ。チートを貰った俺』編

第35話『九割ほどで』

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「いい加減にせんかッ!」


 それまで黙っていたブラッド氏がビリビリと腹の奥に響いてくる低い声で一喝した。


「二人とも、そこまでだ。今は人間同士でいがみ合っている場合ではない。宣言通りなら、明日の朝にはヒザマを筆頭とした魔王軍の魔物が大挙してこの街に押し寄せてくるのだ。……それからフランク君、君は知らんのかもしれないが、この最前線の街は冒険者の活躍によって支えられている街だ。彼らを侮辱する発言は控えてもらおう」

 ブラッド氏の叱咤のおかげでひとまず場はおさまった。しかし、

「ぬぐぐっ……」

「ふんっ!」

 カルパスもクレマンスも不満たらたらなのが態度でまるわかりだった。

「……ところで……エアルドレッド卿。……ヒザマを筆頭とは? ……スザクはどうした?」

 バルバトスが威厳のある雰囲気を出しながらブラッド氏に訊ねる。
 お、やっと集まった意味がありそうな話題が出たな。
 さすがバルバトス。さすバトさすバト。

 ブラッド氏はそんなバルバトスの問いに、

「うむ、それは知らん!」

「…………」

「宣戦布告はヒザマの名で出されたものだったが、魔王がどう動くのかは謎だ! 万事をヒザマに任せてくるのか、出たとこ勝負になるな!」

 いや、そんな適当な……。バルバトスが固まってんじゃん。元気に返事すりゃいいってもんじゃないだろ。戦況が変わる重大なポイントだと思うぞ、それ。見た目通りに大ざっぱな性格をしてるな、このおっさん。

 エレンに視線を送ると、恥ずかしそうに眼を逸らされた。
 まあ、魔王は俺が倒してるから出てくるわけがないんですけどね。

「魔王が出てこないと仮定するなら……勝算はあるか……?」

 バルバトスが深く考え込み、唸った。

「だが、ヒザマだってその辺の魔物とは格が違うぞ? 超級魔物や上級魔物なら我々でも辛うじてどうにかなるかもしれんが、やつが出て来るとなるとな。ヒザマと同格のヘルハウンドはそこにいるヒロオカ殿が倒してくれたが……」

 ブラッド氏の言葉で部屋にいる全員の視線が俺に集まる。
 やだ、そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃん。
 ケツを掻くのもはばかられちゃう。

「ヒロオカ殿、単刀直入に訊こう。君はヒザマとやりあって勝てる自信はあるか? ヘルハウンドと同じように倒せる自信はあるか?」

 ブラッド氏は真剣な眼差しを俺に向ける。

「自信があるかないかで言えば……まあ、ありますよ。勝てます」

「それはどれほどの確率でだ?」

「…………」

 俺は答えに詰まった。
 この場合、なんて言ったらいいんだろう。
 多分、聖水ドバァーで楽勝なんだろうけど。

 絶対勝てますって言うのは逆に胡散臭いよな。
 でも、あまり謙遜し過ぎると自信がないみたいに思われるし……。
 考えた結果、俺はこう答えることにした。


「俺の読みどおりに戦局が動いてくれれば、九割ほどで(ドヤァ)」


 ざわざわ……。


「魔王幹部を相手に九割だと!? 信じらんねえ!」

「だが……あの男はヘルハウンドの他にも超級魔物を一人で複数体狩った実績がある……」

「そういえばクレマンスの鞭も軽々避けたって聞いたな」

「アタシを引き合いに出すんじゃないよ!」


 部屋にいるやつらは九割を高い確率と思って驚いていた。
 実際は一割ほど低めに逆サバ読んでるんだけど。
 俺のチートを知ってるエレンとデルフィーヌは周りの反応を複雑そうな顔で見ていた。

 いや、だって多分100パーセントとか言ったらふざけるなって怒られてたよ。
 低い数字を出してウキウキしてくれるって、楽でいいなぁ……。
 責任感が少し軽くなるよね。



「ヒロオカ殿……。今度の戦い、どうか我々にその力を貸してくれないだろうか? なんなら全ての指揮権を君に委ねてもいい」

 ブラッド氏が震える声で提案してきた。
 ええ……ぽっと出の俺にそんな大役任せちゃっていいの? 
 まあ、それだけヒザマって存在が人類の手に持て余す強敵ということなんだろうけど。

 普通にやってたら勝てないから、藁をもすがる思いというやつ?

「頼む……ヒロオカ殿、この街の危機なのだ……」

 ブラッド氏は乞うように俺を見つめ、歩み寄ってくる。
 そして俺の両肩をガシッと掴む。

 俺はそんなブラッド氏に――


「てめぇ、汚い手で触るんじゃねえ!」


 ペシッと手を叩いた。


「父上、さすがに不浄のあと洗い忘れたと言った手で触るのは……」

「わはは、すまんすまん! うっかりしてた!」

 豪快に笑うブラッド氏。
 この後、めちゃくちゃ浄化魔法をした。
 要求にはちゃんとイエスと返したよ。

 そりゃあな。

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