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『全マシ。チートを貰った俺』編
第43話『ドッタンバッタン大騒ぎ』
しおりを挟むふう、やれやれ。
身体にだるさを覚えながら地上に降り立つ。
いろいろ反省の多い戦いだったが、どうにか終わらせることができた。
こういう合戦みたいな空気はジャパンで暮らしてた俺にはやっぱちょっとストレスだわ。
退屈だなんだ言われるけど、やっぱ平和が一番よ。
バッグに座布団をしまって辺りを見渡す。
聖水の霧を吸って残りの魔物も全滅。
味方の被害はゼロとはいかなかったが、本来ありえた数よりかはぐっと低く抑えられたはずだ。
トータルで見れば悪くない結果だったと思う。
『よぉ、兄ちゃん。お疲れさん』
巨大な狼がのっしのっしやってきた。
なんだ? 魔物の残党か?
「いや、オレだよ。オレ」
ポフンと音を立て、狼は銀髪のねーちゃんになる。
ああ、そういや味方にデカい狼がいたんだっけ。
やっぱこのねーちゃんだったか。
「この剣すげえな。なんか本物の狼になった気分で戦えたよ」
月牙の剣を地面に突き刺してねーちゃんは言った。
気分って、まんまなってたがな。
「つーか、あんた奴隷の首輪外れてね?」
「ん? おお、ホントだ! やったぜ! なんでだ? たくさん動いたから壊れたのか?」
いや、動いただけじゃ壊れねーと思うけど。
……思い当たるのは神獣化の影響か。
神の獣だし、あの状態だと奴隷の首輪が無効化されるのかも。
なんにせよ、よかったじゃん。これで自由の身だな。
「お、お前……フェリシテ? フェリシテじゃないか……!?」
振り返ると、バルバトスが茫然とした顔で佇んでいた。
返り血を浴びてあちこちに怪我を負い、かなりワイルドな外見になっていらっしゃる。
「おお、バルバトスじゃねーか。久しぶりだな!」
ねーちゃんは大きく手を振り、バルバトスに駆け寄っていった。
「また生きて会えるとは思わなかったぜ! お前も無事だったのか? 何年ぶりだよ?」
「フェリシテ……どうして生きて……今まで……どこにいたんだ……?」
「そうなんだよ~、ちょっと聞いてくれよ。あの後、飛ばされた先でさぁ……」
なんかバルバトスと知り合いだったみたいだ。
二人で思い出に花を咲かせてる。
微妙に会話が噛み合ってないけど。
バルバトス、号泣してんな……。
うわぁ。厳つい男の泣き顔って言っちゃ悪いけど直視してらんねーわ。
「ジロー! 大丈夫!?」
「ジロー様! お怪我はありませんか!?」
デルフィーヌとベルナデットがやってきた。
デルフィーヌは後衛、ベルナデットも戦闘スタイルが関係してか、バルバトスほど汚れてはいなかった。
ま、あんなバーサーカーみたいな血塗れはそうそうならんよな。
「デルフィーヌ、悪かったな」
「え? なにが?」
何も説明していないので首を傾げられた。そりゃそうか。
「ヒザマを目の前にしたのに何も聞き出せなかったよ」
「まったく……勇者の役目は魔王を倒すことでしょ。裏切り者はあたしが責任持って調べるから、ジローは気にしなくていいの!」
「だけど、俺が上手くやってりゃ調べるまでもなかったんだぜ?」
「ジローがいなければヒザマはそもそも倒せなかったのよ? それなのに誰がもっと上手くやれなんて言うと思ってるの?」
「お、おう……?」
「大体ジロー、かなり苦戦してたっぽいじゃない。ヒザマから情報を聞き出す余裕なんてあったの? あたしの魔法がなければ街が吹き飛んでたわよ?」
なんだろ、気にするなって言いたいのかな?
精一杯だったんだから仕方ないと納得させようとしてくれてんのかも。
はあ、逆に気を遣わせちまった。
みっともねえ……。
「ジローのおかげで魔法陣も手中にある。ジローがやるべきことをやったんだから、次はあたしが役目を果たす番よ」
でも、お前さ……。それには時間がかかる。
つまりデルフィーヌの親父さんの汚名をすぐには雪げない。
デルフィーヌを真には救えない。
「ジローは魔王を倒してくれた。その時点でわたしは十分に救われてる。もっと言えば、ジローがこの世界に来てくれたことが――」
デルフィーヌが良さげな何かを言いかけてる途中で、くらっと眩暈が起きた。
「……っ、やべ」
全身から力が抜けていく。
「ジロー様!?」
ベルナデットに抱えられ、俺は静かに目を閉じる。
薄れてゆく意識の中、冒険者たちが魔物の死体を一心不乱に漁っている姿が視界に入った。
おいこら、そいつは俺が倒した魔物だぞ。
我が物顔で手中におさめようとすんな。
聖水の霧で死んだ魔物は状態がいいから争奪戦っぽい。
金には困ってないけど、黙って持ってかれんのはなんか癪だ。
……ま、命がけで戦った祝儀として連中にくれてやるのもいいか。
すげえ疲れてるせいでどうでもよくなったわ。
どうせ壁のなかの魔物は手出しできないだろうし。
壊せるもんなら壊してみろ。
明日にでもゆっくり回収してやるぜ。
「ジローも弱ったりするのね……なんか新鮮だわ……」
「ジロー様。わたしがちゃんと運びますから、ゆっくりお休みください」
デルフィーヌとベルナデットがなんか言ってる。
こうして、気絶した俺は米俵みたいに担がれて街まで連れてかれた。
その日、最前線の街では勝利に沸いた盛大な宴が開かれたらしい。
けど、俺は翌朝まで爆睡してたので参加できなかった。
うんこの街め……勝利の立役者をほったらかしてドッタンバッタン大騒ぎとは。
最後までやってくれるじゃねえの。
んで、翌日。
すっかり体調の戻った俺は約束通りブラッド氏にこれまでの経緯を説明していた。
かくかくしかじか。
魔王城に略奪召喚されたこと、魔王を瞬殺したこと。
順番に話していく。
「……なるほど、そんなことが」
頷くブラッド氏。
続いてデルフィーヌたちと魔王城に調査へ行ったことや魔法陣の発動条件のこと、裏切り者の存在についてなどなど。
この辺はデルフィーヌたちにも補足してもらいながら伝えていった。
「王城に裏切り者が……許せんな!」
ドガンと力いっぱい机を殴るブラッド氏。
ブラッド氏はデルフィーヌの父親と親交があったようで、その怒りは相当なものだった。
「よし! 陛下との謁見には私も同席するぞ! 今回の戦いでのフィーちゃんの貢献を話せば陛下も耳を傾けてくれるはずだ!」
「おじさま……」
「私はフィーちゃんが辛いとき、力になれなかった。……今さらかもしれんが、君の助けにならせてはくれないだろうか?」
涙をちょちょぎらせるデルフィーヌ。
ブラッド氏の協力も取り付けたし、いよいよ魔王討伐を報告しに王都へ行くとしますかね。
いろいろ、上手くいくといいんだけどな。
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