全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

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『領地経営』編

第68話『地域猫ならぬ領地猫』

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 なでなで。
 モノノフは少し痩せてるな。
 やはり野良猫は食料を得るのが大変なのだろう。

 可哀想に……。
 俺が飼い主になったからにはたくさん食わせてやるぞ。
 もちろん肥満にならない程度に。

 けど、それじゃ他の猫はひもじいままだよなぁ……。
 さすがに俺も全部の猫を飼うわけにはいかない。
 ならば、いっそニコルコの町の野良猫は手厚く保護する決まりでも作ってしまおうか?

 いや、違う……。
 作るんだ! 作るしかない!
 いわゆる、地域猫ならぬ領地猫だッ!

 水場に餌場、もちろんトイレの砂場まで。
 猫の生活に必要なすべてを領地で賄い、用意する素晴らしい施策……。
 すぐに午後の会議で提言しよう。

 速やかに可決させて明日から施行せねば。


「じゃ、俺、帰るわ。今日はありがとな、シスター」

「あ、はい……! 領主様、お疲れさまでした」


 俺はモノノフを抱きしめ、転移スキルを使って屋敷に戻った。



◇◇◇◇◇



 午後の会議を経て、俺とジャードは魔境の前に佇んでいた。


「そんじゃ、こっちの方角にまっすぐ行けばいいんだな?」

「はい、そちらに直進すれば連邦との国境に辿り着くはずです」


 俺たちが行なおうとしているのは他国との道を繋ぐ開通工事。
 最初に繋げるのは大陸最大の経済大国『エビ連邦』である。
 なぜ連邦を選んだかというと、膨大な資源を取り引きするなら連邦から相手を探すのが一番だとジャードが進言したからだ。
 公国の商人だと小デブ王の横槍がいつ入らないとも限らないしな。

 ちなみに領地猫はジャードが反対してきたので見送りとなった。
 いいもん。当分は俺のポケットマネーで個人的にやっていくもん。
 だが、いつかは公的な制度として認めさせてやる……。

 この領地を猫の楽園にしてやるんだからな……。


「いっちょやるか!」


 俺は木をスパスパやって道を作り始めた。



◇◇◇◇◇



 街道が完成したぞ! 
 あっという間に見えるかもしれないが数時間かかってるぞ!


 ニコルコの領地から続く、均等にならされた道。
 真っ平で馬車も走りやすい丁寧なクオリティ……。
 我ながらよい仕事をした。

 これぞ匠の技。

 近いうちに連邦だけではなく大聖国や共和国、王国とも道を繋げる予定である。
 帝国は公国を挟んだ反対側なのでどうにもならんが……。
 とりあえず、他国に向かうための中継地点として人を集められたらいいな。

 人の行き来がなくては発展もクソもないし。

「この大掛かりな整備を数時間で済ませてしまうなんて……くっ、ありえない……」

 ジャードが眉間に指を当てて常識と戦っていた。
 ふはっ、面白い顔になっとるwww
 普段スカしてる男が困惑するサマはそれなりに愉快なものがあった。

 ジャード君はもう少し修業が必要かなぁ? 
 俺がニヤニヤ見ていると、

「ま、よく考えたら今さらですかね――」

 シュパッと真顔にチェンジ。
 あっさり平常心を取り戻しやがった。
 偏屈に見えて意外と柔軟性の高いやつだ……。

「さて、道も繋がったことですし……近日中に連邦のいくつかの商会と連絡を取って契約する相手を選ぶとしましょう。できることなら現在連邦で最も勢いがあるウレザム商会と契約を結べるのが理想ですが――」

 持ち直したジャードはいろいろ難しいことを言ってくる。
 その辺は任せるよ。
 聞いてもよくわからんし。

「……では、私の裁量で進めさせて頂きます」

 なんだ、その呆れたような目は。
 役割分担、適材適所だよ。
 そういうのは大事だろ?




 夜、夕飯を食べ終えて。俺は自室で寛いでいた。

『クルルル……』

 拾った猫、モノノフが気持ちよさそうな声を上げてベッドで丸まっている。
 ここが今日からお前の家なんやで。

 モノノフは毛がふさふさの長毛種。
 尻尾も腹も長い毛でフカフカだ。
 さわさわ、ナデナデ、すんすんすん。

 ほふぅ……。
 干した布団のような温かい匂いを嗅いで安らぐ。
 しふくぅぅぅ。やっぱ猫はこれだなぁ……。

 シャンプーの香りとかはやっぱちょっと違うんだよね。

「…………ん?」

 ふと、謎の気配を感じて振り返る。

「ブツブツブツ…………」

 ヒェッ……。

 見ると、半開きのドアからベルナデットが虚ろな表情をして覗いていた。

「ベ、ベルナデット……? こ、これは……その――」

 なぜか浮気現場を見つけられたような心境になる。

 瞳のハイライトが消えている気がするんだけど。
 俺、刺されたりしないよね。
 大丈夫だよね?

「ふふふ……なんでもございませんよ……なんでも……」

 ベルナデットは乾いた笑い声を上げて――


 キキィ……バタン。


 ゆっくり扉が閉められる。


 …………。


 俺は震えながらモノノフの顔の横の毛を触った。
 モノノフは安心しきった顔で目を細めていた。




 翌朝。


 俺は居間のソファで寝そべるモノノフに向かって『あなたには負けませんよ!』と宣戦布告するベルナデットの姿を見た。


 そのうち彼女としっかり話し合うことにしよう。
 そう、そのうちね……。


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