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一夜だけの愛奴隷

5.心の支配

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「みなさん、おはようございます、本日のご両家は伊集院様、白鳥様。新郎、伊集院優様、新婦、白鳥恵様のご結婚披露宴です。多くのVIPがご列席です。くれぐれも粗相のないようにお願いします」
「よろしくお願いします」

今日私が担当するのは超VIPのご結婚式。
列席者500人、めったにない規模の結婚披露宴である。
お色直しも4回、白無垢、十二単からのカラードレス、ウエディングドレスである。

いかにもお金持ちのご子息らしい紋付羽織袴の新郎と清楚で美しい白無垢姿の新婦である。

「本日はおめでとうございます、本日の披露宴の担当をいたします、マネージャーの福山と申します。本日一日よろしくお願いします」

「福山さん、よろしくお願いします」
「福山さんとおっしゃるんですね、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」

お金持ちの披露宴は挨拶が多く、長いのが相場。
その間の白無垢と十二単は正直かなりつらいのである。
そのため私は新婦に特に気をかける。

「次に十二単へのお色直しですが、体調は大丈夫ですか?」
「はい、福山さんがいらっしゃれば大丈夫です」
「そうですか、嬉しいお言葉ありがとうございます」

そんなことを話しながら着付け室に送り届けた。

着付けが終わった新婦は何とも艶やか。
一段と宴会を盛り上げた。

着物の間、新婦はほとんど食事ができない。
それがゆえに、カラードレスに着替えたあとに軽食を準備するのが常である。

「新婦様、お着替えが終わりましたらので、軽食をお持ちしました。しばらくお時間ございますので今のうちにお食事してくださいね」
「ありがとうございます、福山さん」
彼女が笑顔で振り向いた。

「あっ!」
「しーっ」
「あの時の…」
「はい、恵です」
「ははは、恵さん。お互い今日名前がわかりましたね」
「そうですね、ご主人様」
「やめてくださいよ」

その時なぜか私は嫌な気はしなかった。
心は私のもの。
そう思っていたからかもしれない…彼女はどんな思いなのだろう?

ウェディングドレスのお着替えのあともしばらく話した。
なぜか昔から知っている親友のような感じだった。

美しい新婦の素晴らしい結婚式は滞りなく執り行われた。

「伊集院様、白鳥様ご両親様、新郎新婦様、本日はおめでとうございました。本日はありがとうございました」

「新郎様、本日はおめでとうございました」
「ありがとうございました」
「新婦様、本日はおめでとうございました」
「ありがとうございました。・・・・・・今後ともよろしくおねがいします」
「あっ、はい、こちらこそよろしくおねがいします」

ありがとうございますのあとに、彼女は確かにご主人様と言っていた…

今後ともよろしく?
まさかね...







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