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無能ジョブ「宝石使い」が実は最強ジョブでした ~強くてかわいい宝石娘に囲まれて幸せです~
第3話 嘘つき勇者と嘘を憎悪する国王
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時間はさかのぼって、勇者アルヌルフ一行がシュムックを切り捨てて逃亡し、町までたどり着いた時。
「そうですか。シュムックさんは……」
「そうだ。俺たちを生かすために……」
シュムックを見捨てた勇者アルヌルフ一行はギルドに寄って彼の死亡による冒険者登録抹消手続きを行っていた。
無事に手続きが終わり後は寝るだけ、という時に大事件が起きる。
「……無い。……無い!」
アルヌルフはようやく気付いた。祖国一の秘宝である「幸運のダイヤモンド」を姫から渡された彼であったが、それを入れた小袋が丸ごと消えていたのだ。
「シュムックを切り捨てるまでは確かにあった! もしかしてあの時落としたのか!?」
「オイオイ、うっかり落としたにしてはちょっとヤバいぜ!?」
「今すぐ国を発とう! 今なら気づかれずに……」
「ちょっといいですか?」
緊急会議を開いていた勇者パーティに宿屋の店主が割って入ってくる。
「何だこんな大事な時に!?」
「国王陛下からのご勅命です。明日顔が見たいから朝一で城まで来てくれ、とのことです」
「……」
陛下直々にして順調にいけば将来の義父のご命令。こうなったら無視するわけにはいかない……行くしかなさそうだ。
翌朝……
「やぁアルヌルフ。娘が会いたがっていたぞ? 最近の調子はどうだ?」
何も知らない国王は勇者相手に気さくに語りかける。だが勇者は知っている。国王は必ず最後に「幸運のダイヤモンドを見せてくれ」と言うのだ。
国王と話している間中、常に「針のムシロ」の上に座っているかのような居心地だった。そして最後の言葉が放たれる。
「最後になるが、幸運のダイヤモンドを見せてくれ。持ってるはずだろ?」
「!!」
どう弁解すればいいんだ。国一の秘宝だ。うっかり落とした、なんて口が裂けても言えない。
「え……いや……その……」
「ん? どうした? 正直に言え。嘘さえつかなければどんなことでも許してやるぞ? ……もしかして盗まれたのか?」
「そ、そうです。盗まれたんです!」
「誰に?」
「そ、それは……シュムック! そうだ! シュムックがパーティを脱走する際に持ち逃げしたんですよ!」
勇者は嘘をついた。ついてしまった。
「オイオイいいのか嘘ついて? あの国王はウソだけは絶対に許さないお方だぜ?」
「しょうがないだろ! ハッキリ言ってシュムックが盗んだとしか思えないだろ!? 宝石を欲しがる魔物なんてドラゴン位だぜ? ミノタウロス程度の脳ミソじゃ宝石の価値を理解しているのかどうか……」
勇者の祖国の国王は嘘をつかれるのを何よりも嫌い、嘘を「憎悪している」とさえ言ってもいい。
その意志は「嘘つきにはギロチン台か絞首台のどちらかを選ばせてやる」という極端な思想で表現されており、実際過去に2回報告に虚偽があったとして配下をギロチン台に送っている。
「昨日のダンジョンを再調査するぞ! しんどいけどもう一度あの現場まで潜るぞ、いいな!?」
勇者はパーティメンバーにそう指示した。
が、この日以降彼らが積み上げてきた栄光はもろくも崩れさり、際限なく転落の坂を転げ落ちることになるのだがこの時の彼らは知らなかった。
【次回予告】
シュムックとダイヤモンドは仲間を探すためにドラゴンの巣に空き巣をするという普通の考えからすれば無謀1択の行為に出る。
発案者のダイヤモンドは「内容によっては充分勝ち目はある」と豪語するが……。
第4話 「仲間探しのための空き巣」
「そうですか。シュムックさんは……」
「そうだ。俺たちを生かすために……」
シュムックを見捨てた勇者アルヌルフ一行はギルドに寄って彼の死亡による冒険者登録抹消手続きを行っていた。
無事に手続きが終わり後は寝るだけ、という時に大事件が起きる。
「……無い。……無い!」
アルヌルフはようやく気付いた。祖国一の秘宝である「幸運のダイヤモンド」を姫から渡された彼であったが、それを入れた小袋が丸ごと消えていたのだ。
「シュムックを切り捨てるまでは確かにあった! もしかしてあの時落としたのか!?」
「オイオイ、うっかり落としたにしてはちょっとヤバいぜ!?」
「今すぐ国を発とう! 今なら気づかれずに……」
「ちょっといいですか?」
緊急会議を開いていた勇者パーティに宿屋の店主が割って入ってくる。
「何だこんな大事な時に!?」
「国王陛下からのご勅命です。明日顔が見たいから朝一で城まで来てくれ、とのことです」
「……」
陛下直々にして順調にいけば将来の義父のご命令。こうなったら無視するわけにはいかない……行くしかなさそうだ。
翌朝……
「やぁアルヌルフ。娘が会いたがっていたぞ? 最近の調子はどうだ?」
何も知らない国王は勇者相手に気さくに語りかける。だが勇者は知っている。国王は必ず最後に「幸運のダイヤモンドを見せてくれ」と言うのだ。
国王と話している間中、常に「針のムシロ」の上に座っているかのような居心地だった。そして最後の言葉が放たれる。
「最後になるが、幸運のダイヤモンドを見せてくれ。持ってるはずだろ?」
「!!」
どう弁解すればいいんだ。国一の秘宝だ。うっかり落とした、なんて口が裂けても言えない。
「え……いや……その……」
「ん? どうした? 正直に言え。嘘さえつかなければどんなことでも許してやるぞ? ……もしかして盗まれたのか?」
「そ、そうです。盗まれたんです!」
「誰に?」
「そ、それは……シュムック! そうだ! シュムックがパーティを脱走する際に持ち逃げしたんですよ!」
勇者は嘘をついた。ついてしまった。
「オイオイいいのか嘘ついて? あの国王はウソだけは絶対に許さないお方だぜ?」
「しょうがないだろ! ハッキリ言ってシュムックが盗んだとしか思えないだろ!? 宝石を欲しがる魔物なんてドラゴン位だぜ? ミノタウロス程度の脳ミソじゃ宝石の価値を理解しているのかどうか……」
勇者の祖国の国王は嘘をつかれるのを何よりも嫌い、嘘を「憎悪している」とさえ言ってもいい。
その意志は「嘘つきにはギロチン台か絞首台のどちらかを選ばせてやる」という極端な思想で表現されており、実際過去に2回報告に虚偽があったとして配下をギロチン台に送っている。
「昨日のダンジョンを再調査するぞ! しんどいけどもう一度あの現場まで潜るぞ、いいな!?」
勇者はパーティメンバーにそう指示した。
が、この日以降彼らが積み上げてきた栄光はもろくも崩れさり、際限なく転落の坂を転げ落ちることになるのだがこの時の彼らは知らなかった。
【次回予告】
シュムックとダイヤモンドは仲間を探すためにドラゴンの巣に空き巣をするという普通の考えからすれば無謀1択の行為に出る。
発案者のダイヤモンドは「内容によっては充分勝ち目はある」と豪語するが……。
第4話 「仲間探しのための空き巣」
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