40 / 67
勇者パーティを追放されたらツイてツイてツキまくり!? 「超爆運」スキルが無敵すぎる!
第3話 風邪を治しただけで英雄扱い
しおりを挟む
兄と別れて数日……フォルトゥーナはソロ冒険者として活動していた。もちろん元A級冒険者パーティメンバーだったので実力も折り紙付きだ。
いつものようにギルドに寄って依頼を確認する。
「依頼主:国王 内容:娘が病気になってうなされている! 誰か助けてくれ!」
貼り出されたばかりのクエストにそう書いてあった。
「……妙な依頼だな」
フォルトゥーナは疑問に思う。出来立てほやほやの新興国ならまだしも、この国は大きさから言ったらそれなりに財力があるはずだ。
となると王族にはお抱えの医者の1人や2人はいるはず。どこの馬の骨とも分からん冒険者に大事な姫君を診断してもらうなんて事、普通はしない。
が、報酬の高さにひかれて依頼を受けることにした。
「おお! 君か! よく来てくれたな! 娘が倒れたんだ! 頼む! 彼女の命を救ってくれ!」
国王は今にも泣き出しそうな必死の形相でフォルトゥーナにすがりつくように言う。
「王族ならお抱えの医者の1人や2人いるとは思うのですが……」
「1週間前まではいたんだが年を取り過ぎて老衰で死んでしまったんだ。そこで代わりの者を探している最中だったんだ」
「そうですか。ではちょっと診察してみますね」
なるほどそういう事か。医者の代わりを探す前に姫君が病に倒れたと言う事か。なら納得がいく。
フォルトゥーナは錬金術師、特に薬を作るのに長けた「薬剤師」と呼ばれる技能を持っていた。材料さえあれば風邪薬から痛み止め、さらには爆薬といった危険なものまで大抵の薬は作れる。
さらには本職には及ばない程度だが、医師として病気の診断をする事も出来た。彼には患者を診て薬を作る、という医者の面も持ち合わせており、パーティの健康に大きな役割を果たしていた。
「これは……ただの風邪、だよなぁ?」
そのフォルトゥーナが下した診察結果は……ただの風邪であった。彼は熱を出して寝込んでいる娘が心配でまともに仕事に手が付かない国王に告げる。
「見た感じ、ただの風邪だと思います。とりあえず風邪薬と軽い解熱剤を処方しておきますね。これで様子を見ましょう」
「な、なんだ……ただの風邪か。よかったぁ~」
国王は娘の病気がただの風邪だと分かって胸のつかえがとれたようにスッキリとした顔になる。余程気になっていたんだろう。
薬を飲みベッドですやすやと眠る姫君を見て安心したのか王が機嫌よくフォルトゥーナに声をかける。
「では前金の報酬を払おう。持っていってくれ」
国王はフォルトゥーナに前金を払う。が、その金額がおかしかった。
「あのー。前金は4000ゴールドと聞いていますが、どう考えたって20000ゴールドはありますよ」
「前報酬の4000ゴールドとチップ代だ。受け取ってくれ。完治した後もきちんと報酬は払うぞ」
「は、はぁ……」
随分とまぁ豪勢な「チップ」だがせっかくくれるというのなら有り難くもらっておこう。そう思い報酬をすんなりと受け取った。
翌日……
解熱剤が効いたのか、熱が下がって楽になった姫君がベッドから体を起こしてフォルトゥーナに声をかける。
「あなたね。お父様が呼んだ医者っていうのは。ごめんなさいね変なことに巻き込んじゃって」
「いやいいんですよ。クエストの任務をこなしているだけですから」
「お父様ったら昔から大げさなんだから。子供の頃算数の授業で3ケタの足し算が出来ただけで『天才だ!』なんてはしゃいだり、
料理の授業で指を少し切っただけで『大けがをした! 重傷だ!』だなんて騒ぐんだから」
「は……はは……」
2~3度しか会ってないにも関わらず、いかにもあの国王のやりそうな事だ。
「これからどうするの?」
「しばらく滞在してあなたの病状を見て治していきます。まぁ、食欲もあって朝食もしっかり食べたそうですから1~2日もすれば完治するでしょう。ご安心ください。
あと今日の薬はこちらになりますね。1日3回朝昼晩に飲んでください」
「分かったわ。昨日も飲んだけど結構苦いわねこれ……何とかならないの?」
「いい薬っていうのは大抵苦いものですよ。どうしても無理なら砂糖やハチミツを混ぜて飲んではいかがでしょうか?」
「ん~。わかった、そうするわ」
その後、その国の姫は順調に回復し無事にクエストをクリアーすることになった。依頼報酬の3倍はする「チップ代」付きで。
【次回予告】
何故か運に見放されてばかりのパーティリーダーであるフォルトゥーナの兄。流れを変えるべく休暇を取るがそれでも「超凶運」スキルは手を抜かない。
第4話 「僧侶 再起不能」
いつものようにギルドに寄って依頼を確認する。
「依頼主:国王 内容:娘が病気になってうなされている! 誰か助けてくれ!」
貼り出されたばかりのクエストにそう書いてあった。
「……妙な依頼だな」
フォルトゥーナは疑問に思う。出来立てほやほやの新興国ならまだしも、この国は大きさから言ったらそれなりに財力があるはずだ。
となると王族にはお抱えの医者の1人や2人はいるはず。どこの馬の骨とも分からん冒険者に大事な姫君を診断してもらうなんて事、普通はしない。
が、報酬の高さにひかれて依頼を受けることにした。
「おお! 君か! よく来てくれたな! 娘が倒れたんだ! 頼む! 彼女の命を救ってくれ!」
国王は今にも泣き出しそうな必死の形相でフォルトゥーナにすがりつくように言う。
「王族ならお抱えの医者の1人や2人いるとは思うのですが……」
「1週間前まではいたんだが年を取り過ぎて老衰で死んでしまったんだ。そこで代わりの者を探している最中だったんだ」
「そうですか。ではちょっと診察してみますね」
なるほどそういう事か。医者の代わりを探す前に姫君が病に倒れたと言う事か。なら納得がいく。
フォルトゥーナは錬金術師、特に薬を作るのに長けた「薬剤師」と呼ばれる技能を持っていた。材料さえあれば風邪薬から痛み止め、さらには爆薬といった危険なものまで大抵の薬は作れる。
さらには本職には及ばない程度だが、医師として病気の診断をする事も出来た。彼には患者を診て薬を作る、という医者の面も持ち合わせており、パーティの健康に大きな役割を果たしていた。
「これは……ただの風邪、だよなぁ?」
そのフォルトゥーナが下した診察結果は……ただの風邪であった。彼は熱を出して寝込んでいる娘が心配でまともに仕事に手が付かない国王に告げる。
「見た感じ、ただの風邪だと思います。とりあえず風邪薬と軽い解熱剤を処方しておきますね。これで様子を見ましょう」
「な、なんだ……ただの風邪か。よかったぁ~」
国王は娘の病気がただの風邪だと分かって胸のつかえがとれたようにスッキリとした顔になる。余程気になっていたんだろう。
薬を飲みベッドですやすやと眠る姫君を見て安心したのか王が機嫌よくフォルトゥーナに声をかける。
「では前金の報酬を払おう。持っていってくれ」
国王はフォルトゥーナに前金を払う。が、その金額がおかしかった。
「あのー。前金は4000ゴールドと聞いていますが、どう考えたって20000ゴールドはありますよ」
「前報酬の4000ゴールドとチップ代だ。受け取ってくれ。完治した後もきちんと報酬は払うぞ」
「は、はぁ……」
随分とまぁ豪勢な「チップ」だがせっかくくれるというのなら有り難くもらっておこう。そう思い報酬をすんなりと受け取った。
翌日……
解熱剤が効いたのか、熱が下がって楽になった姫君がベッドから体を起こしてフォルトゥーナに声をかける。
「あなたね。お父様が呼んだ医者っていうのは。ごめんなさいね変なことに巻き込んじゃって」
「いやいいんですよ。クエストの任務をこなしているだけですから」
「お父様ったら昔から大げさなんだから。子供の頃算数の授業で3ケタの足し算が出来ただけで『天才だ!』なんてはしゃいだり、
料理の授業で指を少し切っただけで『大けがをした! 重傷だ!』だなんて騒ぐんだから」
「は……はは……」
2~3度しか会ってないにも関わらず、いかにもあの国王のやりそうな事だ。
「これからどうするの?」
「しばらく滞在してあなたの病状を見て治していきます。まぁ、食欲もあって朝食もしっかり食べたそうですから1~2日もすれば完治するでしょう。ご安心ください。
あと今日の薬はこちらになりますね。1日3回朝昼晩に飲んでください」
「分かったわ。昨日も飲んだけど結構苦いわねこれ……何とかならないの?」
「いい薬っていうのは大抵苦いものですよ。どうしても無理なら砂糖やハチミツを混ぜて飲んではいかがでしょうか?」
「ん~。わかった、そうするわ」
その後、その国の姫は順調に回復し無事にクエストをクリアーすることになった。依頼報酬の3倍はする「チップ代」付きで。
【次回予告】
何故か運に見放されてばかりのパーティリーダーであるフォルトゥーナの兄。流れを変えるべく休暇を取るがそれでも「超凶運」スキルは手を抜かない。
第4話 「僧侶 再起不能」
0
あなたにおすすめの小説
この国を護ってきた私が、なぜ婚約破棄されなければいけないの?
柊
ファンタジー
ルミドール聖王国第一王子アルベリク・ダランディールに、「聖女としてふさわしくない」と言われ、同時に婚約破棄されてしまった聖女ヴィアナ。失意のどん底に落ち込むヴィアナだったが、第二王子マリクに「この国を出よう」と誘われ、そのまま求婚される。それを受け入れたヴィアナは聖女聖人が確認されたことのないテレンツィアへと向かうが……。
※複数のサイトに投稿しています。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】瑠璃色の薬草師
シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。
絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。
持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。
しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。
これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる