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天使と悪魔
Scene.9 対抗組織
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赤羽警察署 刑事組織犯罪対策課の一室。赤羽を守る男たちの険しい表情で会議が始まった。
「知っていると思うが3日前の夜9時ごろ、荒川区内で男子高校生2名とその高校生が通っていた学校の校長が惨殺される事件が起きた。
犯行に使われた凶器が何なのか不明な点、および犯人の目撃情報が皆無な点、犯行内容からして2ヶ月前に起こった北区立赤羽高校の生徒31名と教師が殺害された事件に極めて酷似している。
例の「刈リ取ル者」と呼ばれる連続殺人犯は北区周辺を根城にしている可能性も否定できないとして我々も捜査に加わることとなった。
これ以上の被害拡大は絶対に防がなくてはならない。各自全力で捜査にあたって欲しい。以上!」
課長からの状況説明と激励を受けて男たちは部屋を後にする。犯人をこれ以上赤羽で暴れさせるわけにはいかないという使命感と、一体どんな奴なんだという不安の両方を心に抱えながら。
東京、渋谷区にある小中高一貫教育のミッション系女子校、聖ルクレチア女学院。花が咲きほこる乙女達の楽園に今日も清々しい朝が来た。
「ごきげんよう。皆さん」
「ごきげんよう。先生」
少女たちは先生に向かってスカートの裾をつまみ可憐かつ優美な仕草で挨拶を交わす。清く正しく美しく。淑女にふさわしい立ち振る舞いで学び舎へと向かう。その特別進学科の教室でホームルームが開かれていた。
「先日、Dランクの真璃亜と朱里が主の元へと旅立ってしまいました。最近名前が挙がっている「刈リ取ル者」なる悪魔の毒牙にかかったと思います。ザカリエル様は真理さんを派遣することをご決断なされました。あなたたちは今まで通り各地の見回り、特に赤羽周辺の監視を徹底して頂きたいと思います」
明らかに普通の学校では使わない単語が飛び交う。しかしそれを当然のように生徒たちは受け止める。
特別進学科……表向きは一握りのエリートのみで編成された難関校進学のためのクラスとされているが実際には人ならざる邪悪な存在に信仰の力で対抗する者を育てるためのクラスだ。
力を持てる者は生まれつきの才能で限られた者にしか勤まらないので一応一握りのエリートと言うのは本当の事だが。
ホームルームが終わると少女たち数名が黒い長髪の少女の元へと駆け寄ってきた。
「真理お姉様、刈リ取ル者と戦うんですって? 気を付けてください」
「お姉様、どうが御無事で」
「大丈夫。私なら大丈夫よ。だから安心して」
真理は少女たちをやさしく諭す。
(Dランクとはいえ契約者を殺せたとなると楽な相手じゃ無さそうね)
もしぶつかることがあったら激戦になるだろうと雅原 真理は覚悟した。
朝のファミレス。人もまばらな時間帯に20代と思われる青年2名と大柄の女、そして背丈が低く顔にはまだあどけなさの残る少女がファミリーテーブルに腰掛け話をしていた。
「サマエル様から直々の命令よ。刈リ取ル者を探して配下にしろとの事。どう考えたって私たちと同じように悪魔の力を宿しているだろうから多分幹部待遇になるわ。私たちの同僚になるわけだから出来るだけ穏便に済ませてちょうだい」
その場を取り仕切る少女からの連絡を3人は黙って聞いていた。
「得た情報はパソコンかスマホのアプリで共有するようにしてちょうだい。……何か聞きたいことはある?」
「木林さーん。契約出来たら追加報酬はありますかー?」
「あるわけ無いでしょ! アンタ給料もらってるんだからきっちり働きなさい!」
「へいへい分かりました。給料分はキッチリ働きますんで安心して下さーい」
「ったく。でん、篠崎とリリムは何かある?」
「いえ。特に何も」
「私も特に」
張り付いた笑顔の青年と女は声をそろえて応える。
「分かったわ。じゃあ解散ね」
特に意見も無かったためこの日の集まりは終わりとなった。
「ったく! アイツときたら!」
彼女は毒を吐いた。自分と同じ悪魔の力を使いこなす才能を持ってるから幹部になっているだけで忠誠心が皆無な連中に悪態をつく。
「……今度のはアイツみたいなめんどい奴じゃなきゃいいけど」
ぼそりとつぶやいて会計を済ませ、彼女も町へと消えていった。
……ここはどこだ?
『彼女』は気が付いたら何もない真っ暗な空間の中にいた。手足や身体の感覚は無く、ただふわふわと宙に浮いている感覚だけがあった。
(聞こえ……ますか? 聞こえ……ますか?)
……誰だ?
(私の声が聞こえますか?)
「どなたですか?」
(私はザカリエル。始まりにして終わりである主に仕える者です)
変な名前だな。
(貴女は悪魔に命を奪われました)
悪魔? ああ。あの野郎の事か。
(貴女は選ばれた者です。貴女には邪悪な存在と戦う力があります。それもとてつもなく強い力が……)
アレと戦う?
「オレには……じゃねえ、私にはお兄ちゃんを止められる力があるのですか?」
アレはタダじゃおかねぇ。刃向った罰を与えないと。
(ええ。あります。望むのでしたらその力を開花させることが出来ます。ですが、力を持つのならば覚悟を決めなくてはなりません)
「覚悟?」
何だそれ?
(貴女には覚悟がありますか?血を分けた実の兄を討つ覚悟が)
「……あります。お兄ちゃんを止めたいんです! 力をください!」
覚悟?無いね。そんなもん。あの劣等生物をなぶり殺しにするのに覚悟なんて必要なわけないじゃん。
(良いでしょう。貴女の覚悟、受け止めました。では力を授けましょう)
ハッ。ちょろいな。
「知っていると思うが3日前の夜9時ごろ、荒川区内で男子高校生2名とその高校生が通っていた学校の校長が惨殺される事件が起きた。
犯行に使われた凶器が何なのか不明な点、および犯人の目撃情報が皆無な点、犯行内容からして2ヶ月前に起こった北区立赤羽高校の生徒31名と教師が殺害された事件に極めて酷似している。
例の「刈リ取ル者」と呼ばれる連続殺人犯は北区周辺を根城にしている可能性も否定できないとして我々も捜査に加わることとなった。
これ以上の被害拡大は絶対に防がなくてはならない。各自全力で捜査にあたって欲しい。以上!」
課長からの状況説明と激励を受けて男たちは部屋を後にする。犯人をこれ以上赤羽で暴れさせるわけにはいかないという使命感と、一体どんな奴なんだという不安の両方を心に抱えながら。
東京、渋谷区にある小中高一貫教育のミッション系女子校、聖ルクレチア女学院。花が咲きほこる乙女達の楽園に今日も清々しい朝が来た。
「ごきげんよう。皆さん」
「ごきげんよう。先生」
少女たちは先生に向かってスカートの裾をつまみ可憐かつ優美な仕草で挨拶を交わす。清く正しく美しく。淑女にふさわしい立ち振る舞いで学び舎へと向かう。その特別進学科の教室でホームルームが開かれていた。
「先日、Dランクの真璃亜と朱里が主の元へと旅立ってしまいました。最近名前が挙がっている「刈リ取ル者」なる悪魔の毒牙にかかったと思います。ザカリエル様は真理さんを派遣することをご決断なされました。あなたたちは今まで通り各地の見回り、特に赤羽周辺の監視を徹底して頂きたいと思います」
明らかに普通の学校では使わない単語が飛び交う。しかしそれを当然のように生徒たちは受け止める。
特別進学科……表向きは一握りのエリートのみで編成された難関校進学のためのクラスとされているが実際には人ならざる邪悪な存在に信仰の力で対抗する者を育てるためのクラスだ。
力を持てる者は生まれつきの才能で限られた者にしか勤まらないので一応一握りのエリートと言うのは本当の事だが。
ホームルームが終わると少女たち数名が黒い長髪の少女の元へと駆け寄ってきた。
「真理お姉様、刈リ取ル者と戦うんですって? 気を付けてください」
「お姉様、どうが御無事で」
「大丈夫。私なら大丈夫よ。だから安心して」
真理は少女たちをやさしく諭す。
(Dランクとはいえ契約者を殺せたとなると楽な相手じゃ無さそうね)
もしぶつかることがあったら激戦になるだろうと雅原 真理は覚悟した。
朝のファミレス。人もまばらな時間帯に20代と思われる青年2名と大柄の女、そして背丈が低く顔にはまだあどけなさの残る少女がファミリーテーブルに腰掛け話をしていた。
「サマエル様から直々の命令よ。刈リ取ル者を探して配下にしろとの事。どう考えたって私たちと同じように悪魔の力を宿しているだろうから多分幹部待遇になるわ。私たちの同僚になるわけだから出来るだけ穏便に済ませてちょうだい」
その場を取り仕切る少女からの連絡を3人は黙って聞いていた。
「得た情報はパソコンかスマホのアプリで共有するようにしてちょうだい。……何か聞きたいことはある?」
「木林さーん。契約出来たら追加報酬はありますかー?」
「あるわけ無いでしょ! アンタ給料もらってるんだからきっちり働きなさい!」
「へいへい分かりました。給料分はキッチリ働きますんで安心して下さーい」
「ったく。でん、篠崎とリリムは何かある?」
「いえ。特に何も」
「私も特に」
張り付いた笑顔の青年と女は声をそろえて応える。
「分かったわ。じゃあ解散ね」
特に意見も無かったためこの日の集まりは終わりとなった。
「ったく! アイツときたら!」
彼女は毒を吐いた。自分と同じ悪魔の力を使いこなす才能を持ってるから幹部になっているだけで忠誠心が皆無な連中に悪態をつく。
「……今度のはアイツみたいなめんどい奴じゃなきゃいいけど」
ぼそりとつぶやいて会計を済ませ、彼女も町へと消えていった。
……ここはどこだ?
『彼女』は気が付いたら何もない真っ暗な空間の中にいた。手足や身体の感覚は無く、ただふわふわと宙に浮いている感覚だけがあった。
(聞こえ……ますか? 聞こえ……ますか?)
……誰だ?
(私の声が聞こえますか?)
「どなたですか?」
(私はザカリエル。始まりにして終わりである主に仕える者です)
変な名前だな。
(貴女は悪魔に命を奪われました)
悪魔? ああ。あの野郎の事か。
(貴女は選ばれた者です。貴女には邪悪な存在と戦う力があります。それもとてつもなく強い力が……)
アレと戦う?
「オレには……じゃねえ、私にはお兄ちゃんを止められる力があるのですか?」
アレはタダじゃおかねぇ。刃向った罰を与えないと。
(ええ。あります。望むのでしたらその力を開花させることが出来ます。ですが、力を持つのならば覚悟を決めなくてはなりません)
「覚悟?」
何だそれ?
(貴女には覚悟がありますか?血を分けた実の兄を討つ覚悟が)
「……あります。お兄ちゃんを止めたいんです! 力をください!」
覚悟?無いね。そんなもん。あの劣等生物をなぶり殺しにするのに覚悟なんて必要なわけないじゃん。
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