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悪を裁くのはいじめじゃない
scene.24 復讐
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「乃亜、ちょっといいかな?」
恵理との通話が途切れた後、木林 麗が乃亜に電話をかけてきた。
「何だ?」
「渋谷で人が飛び降りたそうよ。魂が回収できるかもしれないから一緒に来てくれる?」
「あ、ああ」
乃亜は二つ返事で向かう事にした。
現場へと結界の中に身を隠しなが降り立つ。野次馬の中、警察官が作業していた。
血の跡がついたコンクリートのそばに、それはあった。
夜の闇に溶け込んでしまいそうなほど真っ黒な魂だった。
乃亜は≪魂読≫で記憶を読む。
「これは……やはり恵理か!」
予想通り、魂が雅原 恵理のものであると同時に何故飛び込んだかもわかった。彼女は一方的な友人からいじめを受けていたのだ。
「ちょっといいかな?」
≪魂読≫で読み終えたのを見て麗は一言ことわり、魂を受け取ると隠し持っていた黒いナイフで魂を真っ二つに斬る。
「半分はあなたの。もう半分はサマエル様への捧げものよ。上質な魂だからもったいない使い方は辞めてよね」
乃亜はミストに魂のカケラを渡す。
「ふぅ。量は少な目だけどジューシーな魂だなこれ。ところで恵理ってあの恵理? 真理の妹?」
「ああそうだ。行くぞ」
恵理の記憶にあったメンバーの家、そこ目がけて飛び立っていった。
刈リ取ル者は闇夜を駆け、1人目の家へとたどり着く。
復讐を始めようとしたら、すでに先客がいた。大斧を持って立っている少女。その足元には頭部、胸部、腹部に激しい破壊跡のある死体が転がっていた。
「よぉ」
「どうして……どうしてお前は私の邪魔ばかりするの!?」
狂気に呑まれた真理が刈リ取ル者に怒りをぶつける。
「邪魔はしない。むしろ協力するよ」
「協力……? 何のつもり?」
意外な言葉に真理は不思議そうに尋ねる。
「信じようが信じまいが関係ないが、俺はいつでも虐げられた人間の味方だ。妹さんの件は聞いている。残念な結果になっちまったな。救えなくてすまなかった。せめてもの償いってやつだ。一緒に妹さんの敵討ちに行こうぜ」
「何で、アンタなんかと……」
不満気につぶやく真理に刈リ取ル者は出来るだけ優しい口調で諭す。
「追い詰められてたんだよ。彼女は。耐えて、耐えて、耐えて、ただひたすら耐え続ける。死ぬか耐えきるかのどちらかしか選べないんだ。そして耐えきれなくなったものが死んでいく。
学校も警察も、追い詰められた人間の事なんて理解しようともしないし、そもそもできないのさ。実際に追い詰められた経験が無い限り分からないもんだ。俺には分かる。かつて虐げられていた側の人間だったからな」
「……」
しばらくの間沈黙が続いた後、真理が口を開けた。
「そう。分かった。じゃあついてきて」
「ああ。分かった。例え嫌だと言ったところで無理矢理にでもついていくさ。ところで……その恰好はどうしたんだ?」
桃色を基調としたコスチュームは闇の黒と血の赤を基調とした色に変わり、背中の純白の翼も黒に染まっていた。
「これじゃあ堕天使ね……」
妹の仇の部屋にあった鏡を覗き込んでまぁそうだろうなと思った。一応は自分は罪を犯した。その現れなんだろうと。
最近の検索機能は本当に便利で住所を入力して検索をかければマップで表示してくれる。
「スマホというのはつくづく便利なものだな」
「何を今さら」
「しゃあねえだろ。ほんの2ヵ月前まで持ってなかったんだから」
「ふーん」
そうこうしているうちに瀬川 有紫亜の家にたどり着く。2階の部屋の窓ガラスをぶち破り侵入する。異変に気付いた駆除対象物が目を覚ます。
「お姉様……? 何? その恰好?」
妙な格好をしているお姉様に疑問を持つ少女に何も説明せずに憧れの人は大斧を振るう。絶叫が響く。が、その声は誰にも届かない。
「この程度で終わると思ってんじゃねーぞ。恵理の苦しみはこんなもんじゃねーんだぞ分かってんのか? ええ!?」
更に攻撃を加える。大量の血を噴き出しながら女は釈明しだす。
「ごめんなさい。お姉様。私はただ……恵理がうらやましかった。お姉様の愛を一身に受けている恵理が、まぶしい位にうらやましかったんです」
真理は容赦なくさらに大斧の一撃を加える。
「だから何だよ!? テメェが何言ったって恵理はもう戻ってこねーんだぞ!? 悪いと思ってんなら恵理を生き返らせろ!」
「お姉様……許して……許してください……お姉様」
「例え主がテメェを許そうが私は絶対許さない!」
有言実行。復讐を果たす。四肢の破損と頭部及び胸部の激しい損壊。当然、生存しているはずがなかった。彼女の身体から魂が出てくる。紅い霧がそれを回収する。
「終わったわ」
「じゃあ次行こうか。モタモタしてると追手が来るだろうし」
乃亜と真理は闇夜を飛び、復讐先へと向かう。
そして4人目の家にたどり着き、侵入しようとしたその瞬間、結界に覆われる。
「来たか……」
真理の衣裳とはだいぶ地味だが同じような服を着た少女たちが金髪の女に率いられながら現れた。
「姉ね……もうやめて……」
「お姉様のやってることはただの人殺しです。そこの悪魔と何一つ変わりませんよ!」
「黙れ! お前なんかに何が分かる!? 恵理を殺された私の気持ちが! お前なんかに分かってたまるか!」
説得するかつての仲間たちに罵声と怒声が入り混じった声で答える。
「雅原 真理」
普段の慈母のようなものではない冷たい口調の女の声が響く。
「ザカリエル……」
「憎しみにとらわれ人を殺めた貴女は主のしもべとして相応しくありません。貴女との契約は破棄します。捕えなさい!」
天使の加護を受けた少女たちが襲いかかった。
「真理! コイツらは俺が何とかする! ミスト! 行くぞ!」
「任せろ!」
ミストが実体化し、乃亜と共に戦いに臨む。
刈リ取ル者とミストは真理を連れ戻そうとする少女たちを彼女から守る様に立ちはだかる。
わきをすり抜けようとした者には髪の毛を掴んて拳を振るい、また銃やRPG-7をぶっ放す。
DランクやCランクが多数だったために数では不利だったが質では大幅に有利だった。
銃撃、あるいはRPG-7の弾頭を食らって1人、また1人と天使の加護を受けた少女たちが倒れていく。そうこうしているうちに復讐を遂げた真理が合流する。
「真理!」
「終わったわ」
「ついでにこいつらも片づけてくれれば助かるんだが?」
「いいわ。どうせ私はあちら側には戻れないんだし。」
天使と悪魔が共闘しようとしている。それを見たザカリエルは奥の手を出すことにする。
「やはり彼女でないと相手になりませんね」
ザカリエルは転送魔法を使う。地面に光で魔法陣が描かれる。しばらくするとそこから美歌が現れた。
「美歌……」
彼女を見た刈リ取ル者にあの時のトラウマがよみがえる。が、今は引くわけにはいかないという気力だけが彼の支えとなっている。
相方も相棒が完璧なワンサイドゲームで蹂躙されたのを見て緊張感を隠せない。
「例え相手がお姉様だったとしても、私は容赦しないわ。どきなさい」
周りに人がいるせいか、本来の傲慢極まる態度ではなく作り物のそれを見せる。
「くたばりやがれ!」
ミストはRPG-7を美歌目がけて撃ち出す。が、直撃したにもかかわらず彼女の結界に傷一つつける事すらかなわなかった。
刈リ取ル者は美歌に拳を繰り出す。が、彼女はあえて結界を解除し、それを素手で受け止める。そして握りつぶす。中身の拳ごとクシャクシャになった。
「ぐっ!」
刈リ取ル者は右腕を≪癒しの手≫で癒しながら蹴りで対抗しようとする。が、それも無駄だった。
同じように素手で受け止められ、握りつぶされた。彼は力なくアスファルトの地面に転がる。
「おい! しっかりしてくれよ!」
ミストが不安な声を上げて≪癒しの手≫で刈リ取ル者の手当てを始める。2人で治療をすると効果は高いようで素早く傷は治った。
傷は治ったものの、相手が圧倒的に強すぎる。回復速度を上回る速度で痛めつけられるのでは話にならない。
「あれ? お姉様とやらは?」
美歌が一見丁寧そうに見える口調で真理がいなくなったのを不思議に思う。
注意深く探してみると真理は渾身の力を込めて結界目がけて斧で斬りつけていた。そして何とか人が通れる程度の隙間が出来ると彼女は叫んだ。
「刈リ取ル者! あなただけでも逃げて!」
「いいのか?」
「いいのよ! 私は大丈夫。でもアンタは早く逃げないと殺されるわよ!」
「……すまない。おいミスト、引き上げるぞ」
刈リ取ル者はそう言って逃げて行った。
美歌は真理と対峙する。が、彼女は防御用の結界は張らない。
「……何のつもり?」
「よくよく考えたらテメーごときに結界使うのもオーバーだなと思っただけだ」
周りの人間に聞こえないよう、小声でつぶやくように言う。舐められたものだ。真理は少しだけ怒りながら大斧の一撃を食らわせる。美歌はそれを手で受け止める。かすり傷一つ負わない。
「お姉様とやらも大したことねえな。まぁオ・レ・が・強・す・ぎ・る。からしゃあねえか」
やはり周りの人間には聞こえないように、小さな声で勝ち誇る。美歌の拳が真理へと繰り出される。真理はそれを大斧を構えてガードする。
斧と拳が勢いよくぶつかり、砕け散った。……真理の魔力が結晶化した大斧が。ガードを割られた真理目がけて流れるように左の拳が彼女の腹に吸い込まれるように入る。真理はその場で崩れ落ち、倒れた。
「雅原 真理。貴女に授けた力、返してもらいます」
動けない真理を中心とした魔法陣が張られる。すると服が光の粒となって狩りの身体から剥がれ落ちていく。軽かった身体もだんだんと重くなり、疲労感が増していく。
やがて天使の服は完全に消え去り変身前に着ていた女学院の制服へと戻っていった。
「力が……消えた?」
「もうあなたに私たちの力は使えません。学校の居場所もありません。本日付けで退学と致します。後はどこへでも行きなさい」
それだけ言うと彼女は他のメンバーに解散するよう指示を出す。美歌もそれにしたがって帰って行った。一人取り残された真理はふらふらとした足取りでその場を去る。とりあえず家へ帰ろう。そう思いつつ。
恵理との通話が途切れた後、木林 麗が乃亜に電話をかけてきた。
「何だ?」
「渋谷で人が飛び降りたそうよ。魂が回収できるかもしれないから一緒に来てくれる?」
「あ、ああ」
乃亜は二つ返事で向かう事にした。
現場へと結界の中に身を隠しなが降り立つ。野次馬の中、警察官が作業していた。
血の跡がついたコンクリートのそばに、それはあった。
夜の闇に溶け込んでしまいそうなほど真っ黒な魂だった。
乃亜は≪魂読≫で記憶を読む。
「これは……やはり恵理か!」
予想通り、魂が雅原 恵理のものであると同時に何故飛び込んだかもわかった。彼女は一方的な友人からいじめを受けていたのだ。
「ちょっといいかな?」
≪魂読≫で読み終えたのを見て麗は一言ことわり、魂を受け取ると隠し持っていた黒いナイフで魂を真っ二つに斬る。
「半分はあなたの。もう半分はサマエル様への捧げものよ。上質な魂だからもったいない使い方は辞めてよね」
乃亜はミストに魂のカケラを渡す。
「ふぅ。量は少な目だけどジューシーな魂だなこれ。ところで恵理ってあの恵理? 真理の妹?」
「ああそうだ。行くぞ」
恵理の記憶にあったメンバーの家、そこ目がけて飛び立っていった。
刈リ取ル者は闇夜を駆け、1人目の家へとたどり着く。
復讐を始めようとしたら、すでに先客がいた。大斧を持って立っている少女。その足元には頭部、胸部、腹部に激しい破壊跡のある死体が転がっていた。
「よぉ」
「どうして……どうしてお前は私の邪魔ばかりするの!?」
狂気に呑まれた真理が刈リ取ル者に怒りをぶつける。
「邪魔はしない。むしろ協力するよ」
「協力……? 何のつもり?」
意外な言葉に真理は不思議そうに尋ねる。
「信じようが信じまいが関係ないが、俺はいつでも虐げられた人間の味方だ。妹さんの件は聞いている。残念な結果になっちまったな。救えなくてすまなかった。せめてもの償いってやつだ。一緒に妹さんの敵討ちに行こうぜ」
「何で、アンタなんかと……」
不満気につぶやく真理に刈リ取ル者は出来るだけ優しい口調で諭す。
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学校も警察も、追い詰められた人間の事なんて理解しようともしないし、そもそもできないのさ。実際に追い詰められた経験が無い限り分からないもんだ。俺には分かる。かつて虐げられていた側の人間だったからな」
「……」
しばらくの間沈黙が続いた後、真理が口を開けた。
「そう。分かった。じゃあついてきて」
「ああ。分かった。例え嫌だと言ったところで無理矢理にでもついていくさ。ところで……その恰好はどうしたんだ?」
桃色を基調としたコスチュームは闇の黒と血の赤を基調とした色に変わり、背中の純白の翼も黒に染まっていた。
「これじゃあ堕天使ね……」
妹の仇の部屋にあった鏡を覗き込んでまぁそうだろうなと思った。一応は自分は罪を犯した。その現れなんだろうと。
最近の検索機能は本当に便利で住所を入力して検索をかければマップで表示してくれる。
「スマホというのはつくづく便利なものだな」
「何を今さら」
「しゃあねえだろ。ほんの2ヵ月前まで持ってなかったんだから」
「ふーん」
そうこうしているうちに瀬川 有紫亜の家にたどり着く。2階の部屋の窓ガラスをぶち破り侵入する。異変に気付いた駆除対象物が目を覚ます。
「お姉様……? 何? その恰好?」
妙な格好をしているお姉様に疑問を持つ少女に何も説明せずに憧れの人は大斧を振るう。絶叫が響く。が、その声は誰にも届かない。
「この程度で終わると思ってんじゃねーぞ。恵理の苦しみはこんなもんじゃねーんだぞ分かってんのか? ええ!?」
更に攻撃を加える。大量の血を噴き出しながら女は釈明しだす。
「ごめんなさい。お姉様。私はただ……恵理がうらやましかった。お姉様の愛を一身に受けている恵理が、まぶしい位にうらやましかったんです」
真理は容赦なくさらに大斧の一撃を加える。
「だから何だよ!? テメェが何言ったって恵理はもう戻ってこねーんだぞ!? 悪いと思ってんなら恵理を生き返らせろ!」
「お姉様……許して……許してください……お姉様」
「例え主がテメェを許そうが私は絶対許さない!」
有言実行。復讐を果たす。四肢の破損と頭部及び胸部の激しい損壊。当然、生存しているはずがなかった。彼女の身体から魂が出てくる。紅い霧がそれを回収する。
「終わったわ」
「じゃあ次行こうか。モタモタしてると追手が来るだろうし」
乃亜と真理は闇夜を飛び、復讐先へと向かう。
そして4人目の家にたどり着き、侵入しようとしたその瞬間、結界に覆われる。
「来たか……」
真理の衣裳とはだいぶ地味だが同じような服を着た少女たちが金髪の女に率いられながら現れた。
「姉ね……もうやめて……」
「お姉様のやってることはただの人殺しです。そこの悪魔と何一つ変わりませんよ!」
「黙れ! お前なんかに何が分かる!? 恵理を殺された私の気持ちが! お前なんかに分かってたまるか!」
説得するかつての仲間たちに罵声と怒声が入り混じった声で答える。
「雅原 真理」
普段の慈母のようなものではない冷たい口調の女の声が響く。
「ザカリエル……」
「憎しみにとらわれ人を殺めた貴女は主のしもべとして相応しくありません。貴女との契約は破棄します。捕えなさい!」
天使の加護を受けた少女たちが襲いかかった。
「真理! コイツらは俺が何とかする! ミスト! 行くぞ!」
「任せろ!」
ミストが実体化し、乃亜と共に戦いに臨む。
刈リ取ル者とミストは真理を連れ戻そうとする少女たちを彼女から守る様に立ちはだかる。
わきをすり抜けようとした者には髪の毛を掴んて拳を振るい、また銃やRPG-7をぶっ放す。
DランクやCランクが多数だったために数では不利だったが質では大幅に有利だった。
銃撃、あるいはRPG-7の弾頭を食らって1人、また1人と天使の加護を受けた少女たちが倒れていく。そうこうしているうちに復讐を遂げた真理が合流する。
「真理!」
「終わったわ」
「ついでにこいつらも片づけてくれれば助かるんだが?」
「いいわ。どうせ私はあちら側には戻れないんだし。」
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「やはり彼女でないと相手になりませんね」
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「美歌……」
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相方も相棒が完璧なワンサイドゲームで蹂躙されたのを見て緊張感を隠せない。
「例え相手がお姉様だったとしても、私は容赦しないわ。どきなさい」
周りに人がいるせいか、本来の傲慢極まる態度ではなく作り物のそれを見せる。
「くたばりやがれ!」
ミストはRPG-7を美歌目がけて撃ち出す。が、直撃したにもかかわらず彼女の結界に傷一つつける事すらかなわなかった。
刈リ取ル者は美歌に拳を繰り出す。が、彼女はあえて結界を解除し、それを素手で受け止める。そして握りつぶす。中身の拳ごとクシャクシャになった。
「ぐっ!」
刈リ取ル者は右腕を≪癒しの手≫で癒しながら蹴りで対抗しようとする。が、それも無駄だった。
同じように素手で受け止められ、握りつぶされた。彼は力なくアスファルトの地面に転がる。
「おい! しっかりしてくれよ!」
ミストが不安な声を上げて≪癒しの手≫で刈リ取ル者の手当てを始める。2人で治療をすると効果は高いようで素早く傷は治った。
傷は治ったものの、相手が圧倒的に強すぎる。回復速度を上回る速度で痛めつけられるのでは話にならない。
「あれ? お姉様とやらは?」
美歌が一見丁寧そうに見える口調で真理がいなくなったのを不思議に思う。
注意深く探してみると真理は渾身の力を込めて結界目がけて斧で斬りつけていた。そして何とか人が通れる程度の隙間が出来ると彼女は叫んだ。
「刈リ取ル者! あなただけでも逃げて!」
「いいのか?」
「いいのよ! 私は大丈夫。でもアンタは早く逃げないと殺されるわよ!」
「……すまない。おいミスト、引き上げるぞ」
刈リ取ル者はそう言って逃げて行った。
美歌は真理と対峙する。が、彼女は防御用の結界は張らない。
「……何のつもり?」
「よくよく考えたらテメーごときに結界使うのもオーバーだなと思っただけだ」
周りの人間に聞こえないよう、小声でつぶやくように言う。舐められたものだ。真理は少しだけ怒りながら大斧の一撃を食らわせる。美歌はそれを手で受け止める。かすり傷一つ負わない。
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斧と拳が勢いよくぶつかり、砕け散った。……真理の魔力が結晶化した大斧が。ガードを割られた真理目がけて流れるように左の拳が彼女の腹に吸い込まれるように入る。真理はその場で崩れ落ち、倒れた。
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動けない真理を中心とした魔法陣が張られる。すると服が光の粒となって狩りの身体から剥がれ落ちていく。軽かった身体もだんだんと重くなり、疲労感が増していく。
やがて天使の服は完全に消え去り変身前に着ていた女学院の制服へと戻っていった。
「力が……消えた?」
「もうあなたに私たちの力は使えません。学校の居場所もありません。本日付けで退学と致します。後はどこへでも行きなさい」
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