刈リ取ル者 ~俺をいじめた奴を悪魔の力で叩き潰した挙句正義の味方名乗ってるけど文句あるか?~

あがつま ゆい

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刈リ取ル者としての生活

Scene.35 入籍

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 ある日、ミストが乃亜のあに相談事を持ちかけてきた。

「なぁ乃亜、俺、自分の戸籍と住民票を作ろうと思うんだ」
「戸籍? 住民票? 何でだ?」
「ああ。あった方が何かと便利だろ? 健康保険とか言ったっけ? それにも入れるし」
「ミスト、お前悪魔だろ? 人間の病気にかかったりするのか?」
「俺も人間の病気とか薬とかはよく分かんないけどかかるかもしれないじゃん。無いよりはあった方が良いだろ?」

 ミストはあくまで万が一の時のための保険にしたいらしい。最も人間の薬が効くのか、そもそも人間の病気にかかるのか、といった彼女にとっても未知数だったが無いよりはマシだろう。といった程度に考えていた。

「でも戸籍とかどうやって手に入れるつもりなんだ?」
「こいつさ」

 ミストは見覚えのある魔法陣が描かれた木の板を取り出した。



「ごきげんよう。ミストさんに乃亜さん」

 メディエートと顔を合わせる。銃とRPG-7を購入してからも銃の弾丸やRPG-7の弾頭、更には日用品の購入などでずいぶんと世話になっている。

「戸籍と住民票が欲しいんだ。手配してくれねえか?」
「かしこまりました。新たに作るか、乃亜さんの籍に入るという形のどちらがよろしいでしょうか? お安く済ませたいのなら乃亜さんの籍に入る方が安上がりですが」
「乃亜の籍に入れる形をとってくれ」
「かしこまりました。手配しておきます」
「お、オイ! ちょっとま……!」

 乃亜の制止を無視してメディエートは魔法陣の中に消えてしまった。
 籍を入れるという事が一体どういう意味であるのを分かっているのか、問いただす。

「ミスト! お前、意味わかってんのか!?」
「ああ。分かってる。魔界にいたんじゃ今頃どんな目にあったか分からなかったけど今じゃこうして実体化できるまで力が付いた。それには感謝してるんだぜ。だからそのお礼ってのもあるよ。それに、金が払えなきゃ体でって言うだろ?」
「ば、バカ言ってんじゃねえ!」
「バカな事じゃねえよ。こんなノリだけど俺だって真剣に考えてるときだってあるぜ? まぁそんなんだから、これからはよろしくな」
「ハァ……分かったよ」



 3人とも寝静まった深夜、乃亜はぱちりと目を覚ました。

(やっべ。トイレトイレ)

 尿意を感じてトイレに向かう。
 その帰り、不意にミストが寝ている布団を見る。彼女は中ですやすやと寝息を立てて寝ていた。そう言えば今まで意識してこなかったが、ミストは女だ。

 胸だって大したこと無いし肉体的な女としての魅力なら真理と比べれば劣る。でも女である事には変わりない。
 あの時のやり取りを思い出してごくりと唾をのむ。乃亜の手が彼女の布団の中に入ろうとした、その時。ミストがぱちりと目を開けた。

「う、うわ!」

 乃亜はミストが目を覚ましたことに心の底から驚く。

「お前、起きてたのかよ」
「気配を察知するのは得意なんでね。こういうのはすぐ気づくさ。
 乃亜、お前俺の事を女として見てくれてるんだぁ。嬉しいねぇ。いや正直俺って胸も尻も真理に比べれば全然無いから女として見てくれねえんじゃねえのかと不安だったんだよ。いいんだぜぇ? 俺の事襲っても」
「わ、悪かった。悪かったってば!」
「別に謝る必要なんてないんだぜ? いつでも良いぜ。待ってるから。何だったら今すぐでもいいんだぜ?」
「……」

 乃亜の顔が真っ赤に染まる。

「テメェ……からかうんじゃねぇよ」
「からかってねぇってば。ま、そんな調子じゃ今日は無理そうだな。時間なんていくらでもあるからそのうちな。んじゃお休み」

 そう言って彼女は再び眠りについた。無防備のミストだったがどうこうする気にはもうなれなかった。



「お早う。乃亜」
「あ、ああ。お早う、ミスト」

 昨夜の出来事を思い出して思わず顔をそむける。そんなよそよそしい様子に真理が気付く。

「ねぇあんたたち、何かあった?」
「さぁ? 何のことで?」
「隠さないで」
「隠さないでって言われても……なぁ?」
「い、いや。別に何も。あ、そうだ。今朝はサバトの集会があるんだった。行くわ」

 気まずい雰囲気から逃げようと乃亜は嘘をついて出かける。

「ちょっと乃亜! ウソつかないでよ! コラッ! ミストも逃げるな!」
「じゃあねー! 行ってくるぜー!」

 ミストも乃亜について行ってしまった。

「もう!」

 一人になった真理はぼそりとつぶやく。

「……やっぱり、私じゃ無理なのかな?」

 誰にも気づかれないようにそっと。
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