刈リ取ル者 ~俺をいじめた奴を悪魔の力で叩き潰した挙句正義の味方名乗ってるけど文句あるか?~

あがつま ゆい

文字の大きさ
35 / 56
刈リ取ル者としての生活

Scene.35 入籍

しおりを挟む
 ある日、ミストが乃亜のあに相談事を持ちかけてきた。

「なぁ乃亜、俺、自分の戸籍と住民票を作ろうと思うんだ」
「戸籍? 住民票? 何でだ?」
「ああ。あった方が何かと便利だろ? 健康保険とか言ったっけ? それにも入れるし」
「ミスト、お前悪魔だろ? 人間の病気にかかったりするのか?」
「俺も人間の病気とか薬とかはよく分かんないけどかかるかもしれないじゃん。無いよりはあった方が良いだろ?」

 ミストはあくまで万が一の時のための保険にしたいらしい。最も人間の薬が効くのか、そもそも人間の病気にかかるのか、といった彼女にとっても未知数だったが無いよりはマシだろう。といった程度に考えていた。

「でも戸籍とかどうやって手に入れるつもりなんだ?」
「こいつさ」

 ミストは見覚えのある魔法陣が描かれた木の板を取り出した。



「ごきげんよう。ミストさんに乃亜さん」

 メディエートと顔を合わせる。銃とRPG-7を購入してからも銃の弾丸やRPG-7の弾頭、更には日用品の購入などでずいぶんと世話になっている。

「戸籍と住民票が欲しいんだ。手配してくれねえか?」
「かしこまりました。新たに作るか、乃亜さんの籍に入るという形のどちらがよろしいでしょうか? お安く済ませたいのなら乃亜さんの籍に入る方が安上がりですが」
「乃亜の籍に入れる形をとってくれ」
「かしこまりました。手配しておきます」
「お、オイ! ちょっとま……!」

 乃亜の制止を無視してメディエートは魔法陣の中に消えてしまった。
 籍を入れるという事が一体どういう意味であるのを分かっているのか、問いただす。

「ミスト! お前、意味わかってんのか!?」
「ああ。分かってる。魔界にいたんじゃ今頃どんな目にあったか分からなかったけど今じゃこうして実体化できるまで力が付いた。それには感謝してるんだぜ。だからそのお礼ってのもあるよ。それに、金が払えなきゃ体でって言うだろ?」
「ば、バカ言ってんじゃねえ!」
「バカな事じゃねえよ。こんなノリだけど俺だって真剣に考えてるときだってあるぜ? まぁそんなんだから、これからはよろしくな」
「ハァ……分かったよ」



 3人とも寝静まった深夜、乃亜はぱちりと目を覚ました。

(やっべ。トイレトイレ)

 尿意を感じてトイレに向かう。
 その帰り、不意にミストが寝ている布団を見る。彼女は中ですやすやと寝息を立てて寝ていた。そう言えば今まで意識してこなかったが、ミストは女だ。

 胸だって大したこと無いし肉体的な女としての魅力なら真理と比べれば劣る。でも女である事には変わりない。
 あの時のやり取りを思い出してごくりと唾をのむ。乃亜の手が彼女の布団の中に入ろうとした、その時。ミストがぱちりと目を開けた。

「う、うわ!」

 乃亜はミストが目を覚ましたことに心の底から驚く。

「お前、起きてたのかよ」
「気配を察知するのは得意なんでね。こういうのはすぐ気づくさ。
 乃亜、お前俺の事を女として見てくれてるんだぁ。嬉しいねぇ。いや正直俺って胸も尻も真理に比べれば全然無いから女として見てくれねえんじゃねえのかと不安だったんだよ。いいんだぜぇ? 俺の事襲っても」
「わ、悪かった。悪かったってば!」
「別に謝る必要なんてないんだぜ? いつでも良いぜ。待ってるから。何だったら今すぐでもいいんだぜ?」
「……」

 乃亜の顔が真っ赤に染まる。

「テメェ……からかうんじゃねぇよ」
「からかってねぇってば。ま、そんな調子じゃ今日は無理そうだな。時間なんていくらでもあるからそのうちな。んじゃお休み」

 そう言って彼女は再び眠りについた。無防備のミストだったがどうこうする気にはもうなれなかった。



「お早う。乃亜」
「あ、ああ。お早う、ミスト」

 昨夜の出来事を思い出して思わず顔をそむける。そんなよそよそしい様子に真理が気付く。

「ねぇあんたたち、何かあった?」
「さぁ? 何のことで?」
「隠さないで」
「隠さないでって言われても……なぁ?」
「い、いや。別に何も。あ、そうだ。今朝はサバトの集会があるんだった。行くわ」

 気まずい雰囲気から逃げようと乃亜は嘘をついて出かける。

「ちょっと乃亜! ウソつかないでよ! コラッ! ミストも逃げるな!」
「じゃあねー! 行ってくるぜー!」

 ミストも乃亜について行ってしまった。

「もう!」

 一人になった真理はぼそりとつぶやく。

「……やっぱり、私じゃ無理なのかな?」

 誰にも気づかれないようにそっと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...