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美歌アメリカへ行く
Scene.44 結婚式
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「なぁミスト、お前本当に悪魔なんだよな? お前、違和感ないのか?」
乃亜とミストの2人がいるのは日本では比較的どこにでもある、思いっきりキリスト教の教会風の結婚式場だった。
そこの「新婦」の控室で純白のタキシードを着た乃亜と、これまた純白のウェディングドレスを着たミストが話をしていた。
「俺の中の悪魔ってのは十字架見ただけで吐き気がするとか、洗礼を受けた日には苦痛でのた打ち回った末に死ぬとかそんなんだぞ?」
「ハッハー。残念でした。本物の悪魔はそんなヤワな奴じゃないさ。十字架もニンニクも聖書の音読も効かないぜ。それに、こんな式場にいる牧師や神父は適当なアルバイトとかなんだろ? 本職じゃねえ奴なんて屁でもねえって」
「何か悪魔のイメージがおかしくなりそうだな……」
あまりにも十字架だの神父だのを恐れないミストに乃亜は本当にお前悪魔なのかとちょっと頭を抱えたくなる事になっている。
「それより見ろよ。俺の姿。似合ってるだろ?」
そんな彼を気にせずにミストは自分の晴れ姿を見るよう促す。赤銅色の肌に純白のウェディングドレスというのは似合うのかどうか正直不安だったが、いざ着てみたら案外しっくりと似合っていた。さすが「全ての女の子が憧れる服」なだけはある。
新郎はキレイか否かと言われると間違いなくキレイだと言い切れる新婦に向かっての、お世辞でも何でもない一言で返す。
「あ、ああ。似合ってる。キレイだよ」
「天使 乃亜さん、霧さん。準備が整いましたのでお願いします」
「ああ。分かった」
式場のスタッフに言われて、挙式場へと向かっていった。
2人が挙式する場所は式場の中では一番安くて収容人数の少ない礼拝堂を模したスペース。というのも参列者は真理と篠崎と麗の3名だけなので、広いスペースは必要なかったのだ。
「新郎新婦、入場」
ナレーションを務める女性のその一言で一度閉まった入り口が開き、乃亜とミストが例のBGMと共に入場してくる。
「ではこれより、主と友の前で婚礼の儀を執り行うとする」
BGMと3人の拍手が一旦止むと、神父か牧師かいまいちよく分からないアルバイトが聖書の一部かこの式場オリジナルかどうかわからないセリフを芝居ががった口調で紡ぎだす。
それに従い新郎新婦の「死が二人を分かつまで~」とかいう誓いの言葉、結婚指輪の交換、そして誓いの口づけまで何の問題も起きずに進行していった。
「乃亜! 結婚おめでとう!」
「おめでとうございます。お二人さん」
「私たちがこんなところで祝うのもどうかしてると思うけど、まぁいいわ。おめでとう」
参列者の3人が祝福する。披露宴というにはかなりスケールは小さいがそれでも嬉しいし、名前だけしか知らない普段は顔も合わせないような連中に愛想笑いをしなくて済むため気楽さがあったので一般的な知り合いを呼んでの挙式とは決して見劣りするわけではない。
「来週は真理との結婚式か……その、結婚式を2度もやるってのは……どうなんだ?」
「いいんじゃねえのか? めでたい事なんだろ? それに1回しかやっちゃいけないなんていう規則とかがあるわけでもねえしさあ」
一応法律を調べたところ婚姻届を2重に出す法律上の重婚は犯罪行為にあたるが事実婚、いわゆる内縁の妻を持つこと自体は合法らしい。
なので正妻であるミストと内縁の妻である真理の2人を抱えることは法律の上では問題ないとの事だ。
「これからは3人、いや、5人で生きていくんだなぁ」
「乃亜、別に肩肘張らなくてもいいんだぜ?」
「そうよ。私たちも働いて家計を支えるから安心してよ。子育てだってちゃんとやるし」
「一応俺だってお前達2人を妊娠させちまった責任感はあるんだぜ?」
「皆さま盛り上がっているところお邪魔いたします。記念写真を撮らせてはいただけないでしょうか?」
やや緊張気味の夫に対し、2人の妻は優しかった。作り笑顔なのか少し無理してる声でカメラマンが声をかけてきたので乃亜たちは素直にカメラの前に集まった。
「頼んだぞ」
「では写真を撮らせてもらいます。カメラを向いて……はい!」
そうして撮れた写真を、真理はいつまでも持っている。特に彼女にとっては、ずっとずっと思い出として残さなくてはいけない写真なのだから。
乃亜とミストの2人がいるのは日本では比較的どこにでもある、思いっきりキリスト教の教会風の結婚式場だった。
そこの「新婦」の控室で純白のタキシードを着た乃亜と、これまた純白のウェディングドレスを着たミストが話をしていた。
「俺の中の悪魔ってのは十字架見ただけで吐き気がするとか、洗礼を受けた日には苦痛でのた打ち回った末に死ぬとかそんなんだぞ?」
「ハッハー。残念でした。本物の悪魔はそんなヤワな奴じゃないさ。十字架もニンニクも聖書の音読も効かないぜ。それに、こんな式場にいる牧師や神父は適当なアルバイトとかなんだろ? 本職じゃねえ奴なんて屁でもねえって」
「何か悪魔のイメージがおかしくなりそうだな……」
あまりにも十字架だの神父だのを恐れないミストに乃亜は本当にお前悪魔なのかとちょっと頭を抱えたくなる事になっている。
「それより見ろよ。俺の姿。似合ってるだろ?」
そんな彼を気にせずにミストは自分の晴れ姿を見るよう促す。赤銅色の肌に純白のウェディングドレスというのは似合うのかどうか正直不安だったが、いざ着てみたら案外しっくりと似合っていた。さすが「全ての女の子が憧れる服」なだけはある。
新郎はキレイか否かと言われると間違いなくキレイだと言い切れる新婦に向かっての、お世辞でも何でもない一言で返す。
「あ、ああ。似合ってる。キレイだよ」
「天使 乃亜さん、霧さん。準備が整いましたのでお願いします」
「ああ。分かった」
式場のスタッフに言われて、挙式場へと向かっていった。
2人が挙式する場所は式場の中では一番安くて収容人数の少ない礼拝堂を模したスペース。というのも参列者は真理と篠崎と麗の3名だけなので、広いスペースは必要なかったのだ。
「新郎新婦、入場」
ナレーションを務める女性のその一言で一度閉まった入り口が開き、乃亜とミストが例のBGMと共に入場してくる。
「ではこれより、主と友の前で婚礼の儀を執り行うとする」
BGMと3人の拍手が一旦止むと、神父か牧師かいまいちよく分からないアルバイトが聖書の一部かこの式場オリジナルかどうかわからないセリフを芝居ががった口調で紡ぎだす。
それに従い新郎新婦の「死が二人を分かつまで~」とかいう誓いの言葉、結婚指輪の交換、そして誓いの口づけまで何の問題も起きずに進行していった。
「乃亜! 結婚おめでとう!」
「おめでとうございます。お二人さん」
「私たちがこんなところで祝うのもどうかしてると思うけど、まぁいいわ。おめでとう」
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「いいんじゃねえのか? めでたい事なんだろ? それに1回しかやっちゃいけないなんていう規則とかがあるわけでもねえしさあ」
一応法律を調べたところ婚姻届を2重に出す法律上の重婚は犯罪行為にあたるが事実婚、いわゆる内縁の妻を持つこと自体は合法らしい。
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「乃亜、別に肩肘張らなくてもいいんだぜ?」
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「一応俺だってお前達2人を妊娠させちまった責任感はあるんだぜ?」
「皆さま盛り上がっているところお邪魔いたします。記念写真を撮らせてはいただけないでしょうか?」
やや緊張気味の夫に対し、2人の妻は優しかった。作り笑顔なのか少し無理してる声でカメラマンが声をかけてきたので乃亜たちは素直にカメラの前に集まった。
「頼んだぞ」
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