刈リ取ル者 ~俺をいじめた奴を悪魔の力で叩き潰した挙句正義の味方名乗ってるけど文句あるか?~

あがつま ゆい

文字の大きさ
44 / 56
美歌アメリカへ行く

Scene.44 結婚式

しおりを挟む
「なぁミスト、お前本当に悪魔なんだよな? お前、違和感ないのか?」

 乃亜のあとミストの2人がいるのは日本では比較的どこにでもある、思いっきりキリスト教の教会風の結婚式場だった。
 そこの「新婦」の控室で純白のタキシードを着た乃亜と、これまた純白のウェディングドレスを着たミストが話をしていた。

「俺の中の悪魔ってのは十字架見ただけで吐き気がするとか、洗礼を受けた日には苦痛でのた打ち回った末に死ぬとかそんなんだぞ?」
「ハッハー。残念でした。本物の悪魔はそんなヤワな奴じゃないさ。十字架もニンニクも聖書の音読も効かないぜ。それに、こんな式場にいる牧師や神父は適当なアルバイトとかなんだろ? 本職じゃねえ奴なんて屁でもねえって」
「何か悪魔のイメージがおかしくなりそうだな……」

 あまりにも十字架だの神父だのを恐れないミストに乃亜は本当にお前悪魔なのかとちょっと頭を抱えたくなる事になっている。

「それより見ろよ。俺の姿。似合ってるだろ?」

 そんな彼を気にせずにミストは自分の晴れ姿を見るよう促す。赤銅色しゃくどういろの肌に純白のウェディングドレスというのは似合うのかどうか正直不安だったが、いざ着てみたら案外しっくりと似合っていた。さすが「全ての女の子が憧れる服」なだけはある。
新郎はキレイか否かと言われると間違いなくキレイだと言い切れる新婦に向かっての、お世辞でも何でもない一言で返す。

「あ、ああ。似合ってる。キレイだよ」
天使あまつか 乃亜さん、霧さん。準備が整いましたのでお願いします」
「ああ。分かった」

 式場のスタッフに言われて、挙式場へと向かっていった。



 2人が挙式する場所は式場の中では一番安くて収容人数の少ない礼拝堂を模したスペース。というのも参列者は真理と篠崎しのざきと麗の3名だけなので、広いスペースは必要なかったのだ。

「新郎新婦、入場」

 ナレーションを務める女性のその一言で一度閉まった入り口が開き、乃亜とミストが例のBGMと共に入場してくる。

「ではこれより、主と友の前で婚礼の儀を執り行うとする」

 BGMと3人の拍手が一旦止むと、神父か牧師かいまいちよく分からないアルバイトが聖書の一部かこの式場オリジナルかどうかわからないセリフを芝居ががった口調で紡ぎだす。
 それに従い新郎新婦の「死が二人を分かつまで~」とかいう誓いの言葉、結婚指輪の交換、そして誓いの口づけまで何の問題も起きずに進行していった。

「乃亜! 結婚おめでとう!」
「おめでとうございます。お二人さん」
「私たちがこんなところで祝うのもどうかしてると思うけど、まぁいいわ。おめでとう」

 参列者の3人が祝福する。披露宴というにはかなりスケールは小さいがそれでも嬉しいし、名前だけしか知らない普段は顔も合わせないような連中に愛想笑いをしなくて済むため気楽さがあったので一般的な知り合いを呼んでの挙式とは決して見劣りするわけではない。

「来週は真理との結婚式か……その、結婚式を2度もやるってのは……どうなんだ?」
「いいんじゃねえのか? めでたい事なんだろ? それに1回しかやっちゃいけないなんていう規則とかがあるわけでもねえしさあ」

 一応法律を調べたところ婚姻届を2重に出す法律上の重婚は犯罪行為にあたるが事実婚、いわゆる内縁の妻を持つこと自体は合法らしい。
 なので正妻であるミストと内縁の妻である真理の2人を抱えることは法律の上では問題ないとの事だ。


「これからは3人、いや、5人で生きていくんだなぁ」
「乃亜、別に肩肘張らなくてもいいんだぜ?」
「そうよ。私たちも働いて家計を支えるから安心してよ。子育てだってちゃんとやるし」
「一応俺だってお前達2人を妊娠させちまった責任感はあるんだぜ?」
「皆さま盛り上がっているところお邪魔いたします。記念写真を撮らせてはいただけないでしょうか?」

 やや緊張気味の夫に対し、2人の妻は優しかった。作り笑顔なのか少し無理してる声でカメラマンが声をかけてきたので乃亜たちは素直にカメラの前に集まった。

「頼んだぞ」
「では写真を撮らせてもらいます。カメラを向いて……はい!」

 そうして撮れた写真を、真理はいつまでも持っている。特に彼女にとっては、ずっとずっと思い出として残さなくてはいけない写真なのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...