刈リ取ル者 ~俺をいじめた奴を悪魔の力で叩き潰した挙句正義の味方名乗ってるけど文句あるか?~

あがつま ゆい

文字の大きさ
51 / 56
終章

Scene.51 降臨

しおりを挟む
 麗が事切れてから間もなく、テーマパーク全体が地鳴りのような振動で震える。
 揺れが収まるとテーマパークのシンボルである城の前にある広場上空に血のように紅い魔法陣が形成される。そこから巨大な足が出てきた。
 やがてゆっくりと脚部、腰と魔法陣から現れ1分ほどかけて全長が10メートルはあろうかという巨大な悪魔がその姿を現した。ズズーンという巨大な低い轟音を立てて奴が着地する。

「こいつが……サマエル!?」

 動揺する少女と悪魔たちをよそにそいつが腹に響く低い声で叫ぶと同時に凄まじい濃度の悪魔の魔力が周辺に放出される。

「ぐっ!?」

 超高濃度の邪悪な魔力は生身の人間にとっては致命的とも言える害であり、特殊部隊の隊員たちやサバト団員、逃げ損ねた客の生き残り、それに報道機関のヘリの乗組員たちは生体機能を大きく狂わされ次々と倒れていき、2度と動くことは無かった。パイロットを失ったヘリが次々と墜落していった。

「……とんでもねえ事になったな。こいつを倒さないと東京、いや日本は滅ぶな。美歌、足手まといにならない程度には協力するよ」
「ハッ。テメェは足手まといになれれば上出来だよ。ついて来い!」

 兄妹にとって初めての共同作業だ。天使と悪魔が共同戦線を張って魔王と呼んでもおかしくない強敵に挑む!



 サマエルは真正面から向かってくる大鎌を持った少女に口から赤黒い魔力の光線を吐き出す。美歌の結界を貫通し、胴体を直撃する!
 体が蒸発して無くなった残りがアスファルトの地面にグショリ! という音と共に落ちる。が、傷口からアメーバのように肉が伸び、魔法少女の様な服も一緒に瞬く間に「修復」されていく。

「ククククク……ヒャハハハ! 楽しい! 楽しいねぇ! オレをマジで殺せるかもしんねえ奴と戦うってのはなぁ!」

 こんな状況で、美歌は……笑った。天使の加護を受けて以来1度も無かった、100%の力を出して戦う必要のある敵に。彼女はすぐに空を飛び、戦線に復帰する。

「よし、今だ!」

 それを見て乃亜のあの合図とともに真理の大斧と彼の拳が同時にサマエルの足の小指に叩きつけられる。
 人間が小指を何かの角にぶつけて痛がるのと同様に奴が足元を見る。大したダメージにはならないが、気をらすだけで十分だ。

「消し飛びやがれ! ウララララララァ!」

 一瞬だけ悪魔が下を向いた瞬間、その隙に美歌が両手を交互に突き出しながら彼女の魔力が凝縮された光の球を連射する。
 球は彼の身体に触れると凄まじい爆発を起こして身体を吹き飛ばしていく。

「オラオラオラオラオラオラオラァ!」

 光の球の乱打が終わると接近してチェーンソーのように刃が回転する大鎌で残ったサマエルの身体をズタズタに切り裂いていく。早くも勝敗が決したかに見えた……が、バラバラになった肉片の残りが寄り集まりブクブクと音を立てて膨張する。
 そして9メートルはあろうかという巨大な肉体へと再生されていった。

「その調子だ! もっとオレを楽しませろ!」

 その頃、遅れてやって来たザカリエルは自らが率いる少女たちの力を自身に集めていた。少女たちとザカリエルの力が美歌と1本の光の線でつながる。

「美歌! 私たちの力全てをあなたに託すわ! 行きなさい!」
「任せろ!」

 サマエルが咆哮をあげると同時に彼の背後から十数個の魔法陣が展開され、赤黒い光のシャワーが美歌に降り注がれる!
 聖ルクレチア女学院特別進学科全員の力を受け取った彼女の結界ですら、魔王と言っていいほどの力を持つ悪魔の攻撃を完全には防ぎきらずに彼女は穴あきチーズのように穴だらけになるが瞬時に再生する。

 お返しと言わんばかりに大鎌で5体を切り裂き、胴体に光の球を乱射して塵ひとつ残らず蒸発させるが、そこまでやっても残った両腕両脚の傷口から肉がアメーバ状に伸び、胴体が再生されていく。
 肉体をいくら細切れにしてもそのたびに再生されるサマエルだが……

「何かアイツの身体縮んでないか?」
「今頃気付いたのかよ鈍すぎだぜ。再生速度も遅くなってんぞ」

 再生するたびに身体が縮んでいく。手ごたえはおそらく「有り」だろう。

 乃亜と真理、ミストの3名は跳躍し悪魔の瞳目がけてRPG-7を撃ちこむ。
 敵は目を閉じて爆風に耐えたため目を潰すことは出来なかったが視界を遮らせるだけでも十分だった。
 美歌がその隙にサマエルの頭頂部から股間にかけて大鎌で一直線に両断、さらに真っ二つに割れた身体の両方に光の弾を何十発も撃ちこみ粉砕していく。

 そうやって戦い続ける事、30分。粉砕しては再生し、また潰しては再生を繰り返すサマエルや美歌だったが悪魔は再生するたびに身体は縮み、再生速度も遅くなっていく。
 そしてバラバラにすること、8回。ついに全ての悪魔の肉片から鼓動が消えた。

「勝った……のか?」
「で、いいんじゃね? いてもいなくても一緒だったろうけど……ま、オメーにしちゃ上出来なんじゃねえの?」

 多少の功績はあったであろう兄を犬を追い払うようなしぐさで追い返した。



「あったあった」

一方、ミストが見つけたのは赤黒い光を放つ球体。

「まさか、サマエルの魂?」
「ピンポーン。大正解」

彼女はそれを結界の中に封じて持ち帰る。普通なら魂は取り込むものだと思ってたのにそれをしない事を真理は不思議に思って尋ねる。

「喰わないの?」
「力が強すぎるから一気に喰うと逆に魂を乗っ取られるかもしれない。少しずつ溶かして消化していくんだ」
「ふーん。じゃあ私たちも帰りましょう。優や愛も心配してるだろうし」

彼女たちもまた自分のねぐらへと戻ろうとした、その時だった。

「待ちなさい。貴女たち」

ザカリエルの冷たい声が聞こえてきた。振り返ると、100人以上の聖ルクレチア女学院特別進学科の生徒たちが銃を構えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...