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若葉の芽生え
第1話 統一王国の芽生え
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「なぁ大将、アタシ酒飲みたいんだよ。給料前借りしてくんない?」
「駄目だ。もう5日分前借りしてるだろ? これ以上は無理だ。諦めろ」
「そんな事言わないでさぁ。アタシと大将の仲でしょうに」
「お虎、財政事情知ってて言ってんのか? 無い袖は振れん。……っと、ついた。ここだ」
お虎という『女』から大将と呼ばれた男……貴族風ながらもかなり安っぽく、なおかつくたびれた服を着た黒髪黒瞳、髪は角刈り、そしてどっしりとした体型の中年男は、自分の事を大将と呼ぶ『女』とやりとりをしながら潮風の吹く街、都市国家シューヴァルを歩いていた。
目的の場所……街で一番大きい商会の館にたどり着き、中に入ると先客の商人数名を相手にしている館の人と1人の老人がいた。
「よぉじいさん。例のやつを仕入れたって聞いたんで来たぞ。アレはある?」
「ああ。あるとも。こっちは商品を用意した。今度はそっちの番だ。8000ゴールド持って来たかい?」
「ああ。持ってきた」
中にいた老人は古びた1冊の本を、中年の男は財布から1万ゴールド金貨を1枚、テーブルに置いた。
「これで文句は無いな?」
「ああ。無いね」
「ところで、本当に本1冊で8000ゴールドもするのか? 桁1つ間違ってねーか?」
「間違ったりするもんか。最近は活版印刷で安い本が出回り始めたらしいがまだまだ本はこれくらいの値段はするよ」
「マジかよ……」
交渉成立。つり銭と共に本を受け取る。
「国語の教科書を手に入れました」
中年男のスマホにはそんな無機質なメッセージが表示された。
帰り道、人ごみの中を歩いていたら誰かと肩がぶつかった。
「馬鹿野郎! どこに目ん玉つけて歩いてんだボケ!」
昼間から酒を飲んでいる図体の良い酔っ払いが怒鳴り散らす。そんな男に脅し文句と共に女……正確に言えば軽く2メートルは超える大柄の身体に赤みがかった肌、そして額に生える2本のツノを持つ女鬼、お虎が酔っ払いの頭を鷲づかみにしながら鋭くにらみつける。
「オイ兄ちゃん。うちの大将に手ぇ出すってんなら容赦しないよ? 取って喰うからね!」
「ヒッ! しゅ……しゅいません。しゅいません」
お虎に気付いた男は情けない声で謝りながらヘコヘコとした足取りで去って行った。
街……都市国家シューヴァルを抜け、歩き続ける事1時間。男とお虎の家……いたるところに穴が空いたほぼ廃城と言っていいボロボロの城にたどり着いた。
「ただいま」
「お! 大将! 帰ったんですかい。見てくだせえ。自慢の弓でウサギを仕留めてきました。今夜はウサギのシチューになりやすぜ」
「ははっ。お手柄だな」
出迎えたのは小柄な体に縦に尖った耳、深緑色の肌をしたゴブリンのゴブー。彼の右手にはウサギが握られていた。男は彼に100ゴールド銅貨を4枚渡す。
「いやぁー有り難い話ですねぇ大将殿。あっしみてえなゴブリンにもきちんと給金を渡してくれるなんて」
「なぁ大将、アタシにも給料くれよ」
「わかった。ほらよ」
「ちょっと! 足りないよ!」
「オメーは給料前借りしてんだろーが! 半額でも出すだけ感謝しろ!」
「はぁ……いけずだねぇ」
「だれがいけずだ。それとお前今日のメシ当番だろ。準備しろ」
「はーい」
ゴブリンとオーガ。それに自分を加えた3人、いや1人と2匹がこの国の住人だ。国王というよりは魔物使いと言った方が正しい言い方になると思うが。
後の世、この国は戦乱の続く西大陸を統一支配する大王国となるのだがこの時はそうなるとは2匹の国民も、国王であるマコトすら知らない。
「駄目だ。もう5日分前借りしてるだろ? これ以上は無理だ。諦めろ」
「そんな事言わないでさぁ。アタシと大将の仲でしょうに」
「お虎、財政事情知ってて言ってんのか? 無い袖は振れん。……っと、ついた。ここだ」
お虎という『女』から大将と呼ばれた男……貴族風ながらもかなり安っぽく、なおかつくたびれた服を着た黒髪黒瞳、髪は角刈り、そしてどっしりとした体型の中年男は、自分の事を大将と呼ぶ『女』とやりとりをしながら潮風の吹く街、都市国家シューヴァルを歩いていた。
目的の場所……街で一番大きい商会の館にたどり着き、中に入ると先客の商人数名を相手にしている館の人と1人の老人がいた。
「よぉじいさん。例のやつを仕入れたって聞いたんで来たぞ。アレはある?」
「ああ。あるとも。こっちは商品を用意した。今度はそっちの番だ。8000ゴールド持って来たかい?」
「ああ。持ってきた」
中にいた老人は古びた1冊の本を、中年の男は財布から1万ゴールド金貨を1枚、テーブルに置いた。
「これで文句は無いな?」
「ああ。無いね」
「ところで、本当に本1冊で8000ゴールドもするのか? 桁1つ間違ってねーか?」
「間違ったりするもんか。最近は活版印刷で安い本が出回り始めたらしいがまだまだ本はこれくらいの値段はするよ」
「マジかよ……」
交渉成立。つり銭と共に本を受け取る。
「国語の教科書を手に入れました」
中年男のスマホにはそんな無機質なメッセージが表示された。
帰り道、人ごみの中を歩いていたら誰かと肩がぶつかった。
「馬鹿野郎! どこに目ん玉つけて歩いてんだボケ!」
昼間から酒を飲んでいる図体の良い酔っ払いが怒鳴り散らす。そんな男に脅し文句と共に女……正確に言えば軽く2メートルは超える大柄の身体に赤みがかった肌、そして額に生える2本のツノを持つ女鬼、お虎が酔っ払いの頭を鷲づかみにしながら鋭くにらみつける。
「オイ兄ちゃん。うちの大将に手ぇ出すってんなら容赦しないよ? 取って喰うからね!」
「ヒッ! しゅ……しゅいません。しゅいません」
お虎に気付いた男は情けない声で謝りながらヘコヘコとした足取りで去って行った。
街……都市国家シューヴァルを抜け、歩き続ける事1時間。男とお虎の家……いたるところに穴が空いたほぼ廃城と言っていいボロボロの城にたどり着いた。
「ただいま」
「お! 大将! 帰ったんですかい。見てくだせえ。自慢の弓でウサギを仕留めてきました。今夜はウサギのシチューになりやすぜ」
「ははっ。お手柄だな」
出迎えたのは小柄な体に縦に尖った耳、深緑色の肌をしたゴブリンのゴブー。彼の右手にはウサギが握られていた。男は彼に100ゴールド銅貨を4枚渡す。
「いやぁー有り難い話ですねぇ大将殿。あっしみてえなゴブリンにもきちんと給金を渡してくれるなんて」
「なぁ大将、アタシにも給料くれよ」
「わかった。ほらよ」
「ちょっと! 足りないよ!」
「オメーは給料前借りしてんだろーが! 半額でも出すだけ感謝しろ!」
「はぁ……いけずだねぇ」
「だれがいけずだ。それとお前今日のメシ当番だろ。準備しろ」
「はーい」
ゴブリンとオーガ。それに自分を加えた3人、いや1人と2匹がこの国の住人だ。国王というよりは魔物使いと言った方が正しい言い方になると思うが。
後の世、この国は戦乱の続く西大陸を統一支配する大王国となるのだがこの時はそうなるとは2匹の国民も、国王であるマコトすら知らない。
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