27 / 127
アレンシア戦役
第27話 豚王暗殺計画
しおりを挟む
ようやく寒さが過ぎ去り、暖かい日々が訪れるようになった。国民たちは春の到来を祝う祭りで陽気に踊っていた頃……マコトの所へ訪問者がやってきた。
「閣下、元ビルスト国のメリル姫とアレックス王子が閣下との謁見を求めています。いかがいたしましょうか? 本人の確認はとれています」
「何? わかった、通してくれ。くれぐれも粗相の無いようにな」
「ハッ」
王の間に行ってみると、短く切った髪に鉄の胸当てにズボン、腰には剣に背中にはクロスボウという男のような恰好をした少女と、同じような格好をした少年がやってきた。
「貴方がハシバ国の王、マコト様ですね? お会いできて嬉しく存じ上げます。私はメリル。ビルスト国の元王女です。それと、弟のアレックスです。よろしくお願いします」
「初めまして、だな。想像してたよりずいぶん幼いな。まだ子供じゃないか。それに2人揃ってなんだその耳は? 猫の耳か?」
「そうです。私たちは獣の神からの加護として猫の耳を貰ったんです」
ビルスト国の住民は万色の神の下位神である「獣の神」を信仰している。そのお礼として獣の神は住民に加護と言う形で動物の能力を授けてくれるという。
メリルとアレックスはその加護として聴覚の鋭い猫の耳を貰ったのだ。
「そ、そうか。まぁいい、今回の用件を聞こう」
「単刀直入に申し上げます。私たちは10日後……豚王来兎を暗殺します」
「!!」
暗殺……物騒極まる言葉がまだ子供特有のあどけなさが残る顔から発せられる。マコトの背筋にピリリと衝撃が走った。
「10日後にあの豚王が元リシア国領内を視察するとの事です。その訪問中を狙って暗殺します。どうかご支援をお願いいたします。必ず仕留めて見せます!」
「閣下、上手くいけばアレンシア国を一気に崩壊させることが出来るチャンスですぞ。ぜひとも乗ってくれませんか?」
そばにいたディオールはここぞとばかりに推す。
「しかしディオール、彼らはまだ子供じゃないか! こんな子供に暗殺なんてさせるつもりか!?」
「閣下。時には正論が間違いである時もあります。今がその時ですぞ。アレンシア国を討つ最大のチャンスでございます。閣下、ご決断を!」
「……わかった。活動資金と武器は俺が持つ。必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ」
「ご協力感謝します。欲しい物は後でお伝えいたします。では失礼します」
結局ディオールの推しに折れる形でマコトは承諾してしまった。
「ディオール、お前相当な悪人だな。あんな子供に殺しをさせるなんて。今思うとあれがベストな回答だというのは分かってるけどさぁ」
「今は乱世。やむを得ないでしょうな。ましてや国を滅ぼした張本人が相手となればなおさら、ですな」
「そりゃ乱世で殺した殺されたが日常だってのはあるけどよぉ」
暗殺を支援するのが正解だとしてもマコトは渋々承知するという形でかかわることとなり、ディオール主導で計画を推し進めることとなった。
計画はこうだ。視察の日、豚王の周囲を警戒する斥候の中に、イトリー家支持派やカネで買収した者を混ぜてメリルたちが隠れていることを見逃してもらい、気付かれずに豚王一行が近づいてきたところをクロスボウで王の頭を射抜く。というものだ。
場所は森の中に敷いた道路の中でも特に狭い場所。ここなら列は縦に細長くならざるを得ず、豚王を狙撃しやすい。
視察までの間に買収工作を進め、さらに斥候の中に潜り込んだイトリー家支持派と連絡を取り当日の配置について入念に話し合った。
そして視察当日。予定通り斥候からの監視を逃れたメリルとアレックスは、森の茂みの中に隠れその時を待つ。
(来る! 豚王の奴が来るわ!)
(姉上! 伏せてください! ばれてしまいます!)
アレックスは、国を潰した張本人を目の前にしてはやる姉を抑える。2人は弦を引いたクロスボウに神経を集中させる。チャンスは1度だけという現実に緊張は隠せない。
メリルはあの日を思い浮かべる。父親が何故か無条件降伏を受理して城を明け渡してしまってからというもの、国内には重税と圧制の嵐が吹き荒れた。国民たちは見る見るうちに痩せていき、瞳からは精気が消えていった。
そんな生活はもう終わりだ。この手で終わらせてやる!
豚王がクロスボウの射程圏内まで近づいた時、メリルとアレックスはクロスボウの引き金を引いた。
「閣下、元ビルスト国のメリル姫とアレックス王子が閣下との謁見を求めています。いかがいたしましょうか? 本人の確認はとれています」
「何? わかった、通してくれ。くれぐれも粗相の無いようにな」
「ハッ」
王の間に行ってみると、短く切った髪に鉄の胸当てにズボン、腰には剣に背中にはクロスボウという男のような恰好をした少女と、同じような格好をした少年がやってきた。
「貴方がハシバ国の王、マコト様ですね? お会いできて嬉しく存じ上げます。私はメリル。ビルスト国の元王女です。それと、弟のアレックスです。よろしくお願いします」
「初めまして、だな。想像してたよりずいぶん幼いな。まだ子供じゃないか。それに2人揃ってなんだその耳は? 猫の耳か?」
「そうです。私たちは獣の神からの加護として猫の耳を貰ったんです」
ビルスト国の住民は万色の神の下位神である「獣の神」を信仰している。そのお礼として獣の神は住民に加護と言う形で動物の能力を授けてくれるという。
メリルとアレックスはその加護として聴覚の鋭い猫の耳を貰ったのだ。
「そ、そうか。まぁいい、今回の用件を聞こう」
「単刀直入に申し上げます。私たちは10日後……豚王来兎を暗殺します」
「!!」
暗殺……物騒極まる言葉がまだ子供特有のあどけなさが残る顔から発せられる。マコトの背筋にピリリと衝撃が走った。
「10日後にあの豚王が元リシア国領内を視察するとの事です。その訪問中を狙って暗殺します。どうかご支援をお願いいたします。必ず仕留めて見せます!」
「閣下、上手くいけばアレンシア国を一気に崩壊させることが出来るチャンスですぞ。ぜひとも乗ってくれませんか?」
そばにいたディオールはここぞとばかりに推す。
「しかしディオール、彼らはまだ子供じゃないか! こんな子供に暗殺なんてさせるつもりか!?」
「閣下。時には正論が間違いである時もあります。今がその時ですぞ。アレンシア国を討つ最大のチャンスでございます。閣下、ご決断を!」
「……わかった。活動資金と武器は俺が持つ。必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ」
「ご協力感謝します。欲しい物は後でお伝えいたします。では失礼します」
結局ディオールの推しに折れる形でマコトは承諾してしまった。
「ディオール、お前相当な悪人だな。あんな子供に殺しをさせるなんて。今思うとあれがベストな回答だというのは分かってるけどさぁ」
「今は乱世。やむを得ないでしょうな。ましてや国を滅ぼした張本人が相手となればなおさら、ですな」
「そりゃ乱世で殺した殺されたが日常だってのはあるけどよぉ」
暗殺を支援するのが正解だとしてもマコトは渋々承知するという形でかかわることとなり、ディオール主導で計画を推し進めることとなった。
計画はこうだ。視察の日、豚王の周囲を警戒する斥候の中に、イトリー家支持派やカネで買収した者を混ぜてメリルたちが隠れていることを見逃してもらい、気付かれずに豚王一行が近づいてきたところをクロスボウで王の頭を射抜く。というものだ。
場所は森の中に敷いた道路の中でも特に狭い場所。ここなら列は縦に細長くならざるを得ず、豚王を狙撃しやすい。
視察までの間に買収工作を進め、さらに斥候の中に潜り込んだイトリー家支持派と連絡を取り当日の配置について入念に話し合った。
そして視察当日。予定通り斥候からの監視を逃れたメリルとアレックスは、森の茂みの中に隠れその時を待つ。
(来る! 豚王の奴が来るわ!)
(姉上! 伏せてください! ばれてしまいます!)
アレックスは、国を潰した張本人を目の前にしてはやる姉を抑える。2人は弦を引いたクロスボウに神経を集中させる。チャンスは1度だけという現実に緊張は隠せない。
メリルはあの日を思い浮かべる。父親が何故か無条件降伏を受理して城を明け渡してしまってからというもの、国内には重税と圧制の嵐が吹き荒れた。国民たちは見る見るうちに痩せていき、瞳からは精気が消えていった。
そんな生活はもう終わりだ。この手で終わらせてやる!
豚王がクロスボウの射程圏内まで近づいた時、メリルとアレックスはクロスボウの引き金を引いた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる