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アレンシア戦役
第32話 両雄 激突
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豚王の陣にマコトからの伝令兵がやってくる。例のメッセージを受け取ると……
「『貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ』だとぉ? あのジジィ、言ってくれるじゃねえか。
『機械』を動かせ! 魔物たちに指示を送るんだ!」
アレンシア国の強さを支える秘密兵器、とある装置を動かすよう指示する。更に豚王は神霊石をとりだし、王の勅命を発動させる。
「王が命ず! 我が家臣達よ! 敵を叩き潰せ!」
マコト軍の前線にいる兵が望遠鏡ごしに見た光景は武装したオークにトロル、ゴブリン達が大軍を成してこちらへ向かって進軍している。というものだった。
ゴブリンはろくに戦闘訓練を受けていない村人がナタでも倒せる位弱いし、オークもトロルもそれなりの冒険者なら退治できる程度の強さである。だがそれは相手が武装していない状態かつ1対1で戦った場合である。
彼らは普段群れで行動しているし、哀れな犠牲者の持っていた装備品で武装しているのが常だ。そうなると熟練の冒険者でも手こずる程強くなる。
ましてや魔物専用の装備品を身に着けているとなると軍事力としては十分すぎるほど機能する。
オークの馬鹿力やトロルの高い身体再生能力は人間には持ちようが無い大きなメリットだ。
魔物の中に混じっていた人間の兵士が進撃の合図を送る。太鼓のドンドンという音が駆け足気味に地に響き、「全軍突撃」を意味するメロディをラッパが奏でる。それを合図にオークやトロルが汚い雄たけびをあげつつ突撃してきた!
「閣下! 敵軍、来ます!」
「よし。王が命ず! 我が家臣たちよ! 敵に恐怖する事無く戦え!」
マコトは神霊石をとりだし、王の勅命で味方の恐怖を無くした。
「全部隊に伝えろ! 前進して敵を撃破せよ!」
「行くぞ! 一番槍はオレ達が取るぞ! ついてこい!」
手柄を取るべくナタルが自らが率いる班に発破をかける。降って来る矢の雨を大型の盾で防ぎつつ敵陣に斬りかかる!
「ゴブリンごときが相手になるか!」
オーガの群れがゴブリンの群れに牙を向き、次々とゴブリン達を斬り捨て、道を文字通り「切り開いて」いった。
右翼に展開する兵が敵のトロルに大斧による肩から胸に向かって深い傷を負わせる。が、敵のトロルの出血はあっという間に止まり、まだ動く。
これが人間だったらほぼ確実に命はない致命傷なはずだ。
「クソッ! なんて奴だ!」
トロルの身体能力に驚く兵士にウラカンはトロルの左腕を斬り飛ばすことでアシストする。
「怯むな! 人間よりもちょっとだけ頑丈な程度だ。手を緩めるな! 押し通せ!」
「今度はコボルドか!」
「へっへっへ、どうした? 喜べよ。銭の群れがヂャリンヂャリンと音を立てながら向こうから近づいてくるんだぜ?」
「さすがミノタウロス、考えるスケールが違うや」
ウラカンを待っていたのは敵軍のコボルドの群れ。押し寄せて来る戦果目当てに彼の目はギラギラと輝いていた。
左翼に展開するシュネー率いる部隊が敵と衝突する。
その敵というのが、鳥の王たるワシの上半身に獣の王たる獅子の下半身を持つ、堂々たる風格をした獣人だった。
彼は見た目に負ける事のない優れた剣技を身に着けており、それで次々と敵を斬り伏せていく!
「あの姿はまさか、ビルスト国王カーマイン!? 怯むなっ! いくぞ! ついてこい!」
シュネーは部下に発破をかけつつカーマインに斬り込む! が、相手はいともたやすく防ぎ、逆に反撃の一太刀を浴びせる。
「ぐうっ!?」
凄まじい1撃を喰らいガードをこじ開けられる!
まずい。
そう思った瞬間
「「エクスプロージョン!」」
「グォア!?」
ジャック・オー・ランタン達からの爆裂魔法のエクスプロージョンによる援護射撃が来る。だが爆風をまともに食らっても相手は少しのけぞる程度で微動だにしない。
「助かったわ! ありがとう!」
「グルルルル……」
仲間のここぞという援軍に感謝するシュネーに対し、獣のようなうなり声を上げながら襲い掛かる彼は攻め手を緩めることはなかった。
◇◇◇
おかしい。
本来は父親のモリスが戦場に出る手はずだったが、急に病を患ったと言い出して部屋の中に引きこもってしまい、代役としてエリックが出陣することになった。身内でなくてもわかる。誰がどう考えても仮病だ。
「妙だな」
普段なら今頃王の勅命が飛んでくるはず。それがいつまでたっても来ない。既に先頭の部隊は敵軍と衝突しているというのに。
ただでさえ士気の低い、王の勅命で何とか持っている軍だ。来ない方がおかしい。考えてはいるが、答えは出ない。そこへ伝令兵が答えを持ってやってくる。
「御注進! 緊急事態です! エリック様! お父上のモリス様が!」
「父上がどうした?」
「エリック様、どうか動揺なさらないでください。モリス様が……モリス様が、自刃なされました!」
「!? な、何だってぇ!?」
「エリック様、私はモリス様より最期のメッセージをエリック様に伝えよとの勅命を受けました。これをお受け取りください」
そう言って伝令兵はエリックに手紙を渡す。
「エリック、お前は私の部下だ。そして私はあの王の部下だ。このままではお前もあの王の部下の部下、王の操り人形だ。
だが王に忠誠を誓ってないお前は私が死ねば王とは無関係になる。お前は自由だ。お前の好きなように生きるがいい。
ろくに父親らしいことが出来なかった私からの最期の贈り物としてお前に自由をやろう。
愛する息子へ モリスより」
「父上……」
最期のメッセージを読んでエリックは無言でうつむく。しばらくして……。
「全軍! アレンシア軍の後ろから攻撃開始! 狙うは豚王の首だ! マコト殿の作戦通り、彼の軍に加勢しろ!」
「『貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ』だとぉ? あのジジィ、言ってくれるじゃねえか。
『機械』を動かせ! 魔物たちに指示を送るんだ!」
アレンシア国の強さを支える秘密兵器、とある装置を動かすよう指示する。更に豚王は神霊石をとりだし、王の勅命を発動させる。
「王が命ず! 我が家臣達よ! 敵を叩き潰せ!」
マコト軍の前線にいる兵が望遠鏡ごしに見た光景は武装したオークにトロル、ゴブリン達が大軍を成してこちらへ向かって進軍している。というものだった。
ゴブリンはろくに戦闘訓練を受けていない村人がナタでも倒せる位弱いし、オークもトロルもそれなりの冒険者なら退治できる程度の強さである。だがそれは相手が武装していない状態かつ1対1で戦った場合である。
彼らは普段群れで行動しているし、哀れな犠牲者の持っていた装備品で武装しているのが常だ。そうなると熟練の冒険者でも手こずる程強くなる。
ましてや魔物専用の装備品を身に着けているとなると軍事力としては十分すぎるほど機能する。
オークの馬鹿力やトロルの高い身体再生能力は人間には持ちようが無い大きなメリットだ。
魔物の中に混じっていた人間の兵士が進撃の合図を送る。太鼓のドンドンという音が駆け足気味に地に響き、「全軍突撃」を意味するメロディをラッパが奏でる。それを合図にオークやトロルが汚い雄たけびをあげつつ突撃してきた!
「閣下! 敵軍、来ます!」
「よし。王が命ず! 我が家臣たちよ! 敵に恐怖する事無く戦え!」
マコトは神霊石をとりだし、王の勅命で味方の恐怖を無くした。
「全部隊に伝えろ! 前進して敵を撃破せよ!」
「行くぞ! 一番槍はオレ達が取るぞ! ついてこい!」
手柄を取るべくナタルが自らが率いる班に発破をかける。降って来る矢の雨を大型の盾で防ぎつつ敵陣に斬りかかる!
「ゴブリンごときが相手になるか!」
オーガの群れがゴブリンの群れに牙を向き、次々とゴブリン達を斬り捨て、道を文字通り「切り開いて」いった。
右翼に展開する兵が敵のトロルに大斧による肩から胸に向かって深い傷を負わせる。が、敵のトロルの出血はあっという間に止まり、まだ動く。
これが人間だったらほぼ確実に命はない致命傷なはずだ。
「クソッ! なんて奴だ!」
トロルの身体能力に驚く兵士にウラカンはトロルの左腕を斬り飛ばすことでアシストする。
「怯むな! 人間よりもちょっとだけ頑丈な程度だ。手を緩めるな! 押し通せ!」
「今度はコボルドか!」
「へっへっへ、どうした? 喜べよ。銭の群れがヂャリンヂャリンと音を立てながら向こうから近づいてくるんだぜ?」
「さすがミノタウロス、考えるスケールが違うや」
ウラカンを待っていたのは敵軍のコボルドの群れ。押し寄せて来る戦果目当てに彼の目はギラギラと輝いていた。
左翼に展開するシュネー率いる部隊が敵と衝突する。
その敵というのが、鳥の王たるワシの上半身に獣の王たる獅子の下半身を持つ、堂々たる風格をした獣人だった。
彼は見た目に負ける事のない優れた剣技を身に着けており、それで次々と敵を斬り伏せていく!
「あの姿はまさか、ビルスト国王カーマイン!? 怯むなっ! いくぞ! ついてこい!」
シュネーは部下に発破をかけつつカーマインに斬り込む! が、相手はいともたやすく防ぎ、逆に反撃の一太刀を浴びせる。
「ぐうっ!?」
凄まじい1撃を喰らいガードをこじ開けられる!
まずい。
そう思った瞬間
「「エクスプロージョン!」」
「グォア!?」
ジャック・オー・ランタン達からの爆裂魔法のエクスプロージョンによる援護射撃が来る。だが爆風をまともに食らっても相手は少しのけぞる程度で微動だにしない。
「助かったわ! ありがとう!」
「グルルルル……」
仲間のここぞという援軍に感謝するシュネーに対し、獣のようなうなり声を上げながら襲い掛かる彼は攻め手を緩めることはなかった。
◇◇◇
おかしい。
本来は父親のモリスが戦場に出る手はずだったが、急に病を患ったと言い出して部屋の中に引きこもってしまい、代役としてエリックが出陣することになった。身内でなくてもわかる。誰がどう考えても仮病だ。
「妙だな」
普段なら今頃王の勅命が飛んでくるはず。それがいつまでたっても来ない。既に先頭の部隊は敵軍と衝突しているというのに。
ただでさえ士気の低い、王の勅命で何とか持っている軍だ。来ない方がおかしい。考えてはいるが、答えは出ない。そこへ伝令兵が答えを持ってやってくる。
「御注進! 緊急事態です! エリック様! お父上のモリス様が!」
「父上がどうした?」
「エリック様、どうか動揺なさらないでください。モリス様が……モリス様が、自刃なされました!」
「!? な、何だってぇ!?」
「エリック様、私はモリス様より最期のメッセージをエリック様に伝えよとの勅命を受けました。これをお受け取りください」
そう言って伝令兵はエリックに手紙を渡す。
「エリック、お前は私の部下だ。そして私はあの王の部下だ。このままではお前もあの王の部下の部下、王の操り人形だ。
だが王に忠誠を誓ってないお前は私が死ねば王とは無関係になる。お前は自由だ。お前の好きなように生きるがいい。
ろくに父親らしいことが出来なかった私からの最期の贈り物としてお前に自由をやろう。
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