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未来を変えろ
第46話 ハシバ国空軍
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「ああ、ジェイクさん! ここにいたんですか」
「何だよダークエルフの姉ちゃん、俺になんか用か?」
「システィアーノ様があなたの事を探していました。私たちの居住区にいるから顔を出して欲しいとの事です」
「システィアーノ? ああ、最近マコトの配下になった白髪のエルフか? 分かった。ついでに連れてってくれないか? どこにいるのか分かんねえんでな」
ターバン頭と不敵な目つきがトレードマークのジェイクは女の案内の元、ダークエルフが出るとの事で特に人間の親は子供たちには絶対に近寄らせない森の中に踏み入る。
森の中には前見た時よりも多くの移動式住居が建っていて、取り換え子として捨てられた子供やジェイクのつてをたどって、あるいはダークエルフを受け入れているという噂を聞きつけこの国にやってきた者などで順調に数が増えていたようだ。
森の中心に建つひときわ大きな住居に足を踏み入れた。そこにシスティアーノが待っていた。
「そなた、ジェイクとか言ったな」
「おうよ。アンタ最近マコトの部下になったって言う、確かシスティアーノとか言うエルフだっけ? 何の用だい?」
ある意味誰に対しても平等な、敬語を使わないというよりは知らないという口調でシスティアーノに問う。
「お主はこの国に魔物を受け入れるための窓口をしているそうじゃな? わらわの知り合いの中に仕事と住み処を探している魔物がおる。彼らも配下に加えてはどうじゃ?」
ジェイクは不定期ながらも国周辺に住む魔物の中で、移住希望者を国民として受け入れている仕事をしているので窓口なのだと思われたのだろう。
「ふーん。そういう事か。詳しく話してくれないか?」
「連れてきてくれ」
システィアーノに言われ、ダークエルフの1人が移住希望者を連れてくる。
人間の背中に鳥の翼が生えたような姿をした女の魔物と、小柄の人間にリスの尻尾が生えたような姿をした男の魔物という2人がジェイクの前に現れた。
「ふーん。ハーピーにラタトスクか。ハーピーは珍しいな。まぁマコトの事だから両方とも受け入れるだろうぜ」
「彼らが持ってきた外界の情報や本の執筆の仕事はわらわにとっては貴重なものだった。今後はそなた達の役に立ててやってくれ」
ハーピーは世界的に見ても珍しい魔物だ。
この空を自在に飛べる鳥の性質を持つ魔物はかつては人里にも住むほど身近な存在だったが、彼らは1200年前に流行した「エルフの厄災(地球で言うインフルエンザ)」をあちこちにばらまく死の使者という「半分正しい誤解」が広まり、人間やエルフやドワーフ、あるいはほかの魔物の手で無差別に虐殺された暗い歴史がある。
この誤解はエルフの厄災に罹ったハーピーが飛び回ることで周囲に感染を拡大させてしまう事が実際にあったので、完全にデタラメな話というわけではなかった。
現在は誤解も解け、頭数も順調に増え、相互理解も進んだが今でもお互いしこりが残っており、ハーピーの多くはドワーフですらまともに立ち入らないけわしい山脈地帯に巣を作っているという。
一方ラタトスクはリスに似た性質を持つ魔物で、「情報」を種族の中で貯め込み共有し、必要に応じて取り出すという独自の習性を持っている。
これを利用して「情報屋」という仕事を人間やエルフ、ドワーフの間でやっているため、見る機会は意外と多い。
実際都市国家シューヴァルにも彼らの活動拠点である「情報局」があるそうだ。
「ところで移住希望者ってのはこいつらだけか? もっといるんだろ?」
「うむ。それなんじゃが……」
◇◇◇
「ふーむ。空を飛べる魔物に情報を扱う魔物か」
「ああ。俺としては両方とも移住させるべきだと思うんだが、どうだい?」
「俺も賛成だな。「全員」受け入れよう」
「ちょ、ちょっと待て。ぜ、全員ですかい? せめて抽選制にするとかした方がいいんじゃねえのか?」
「構わん。全員だ」
ラタトスクの移住希望者は20名程度で、ハシバ国内に情報局を作るのであれば情報提供の面で役に立とうという事ですんなりと決まった。
問題はハーピーでその数、子供や老人を含めるとおよそ200名。
彼らは人間や他の魔物の手から逃れるためシスティアーノの住んでいた樹海内に巣を作っていたのだが肝心のシスティアーノがいなくなることで結界(ハーピーは結界を空を飛んで軽々と超えることが出来たそうだ)が無くなり、集落丸ごと安住の地を求めているとの事だ。
「さすがに急にここまでの数入れるとなると混乱が起きますぜ?」
「ならいくつかのグループに分けて少しずつ入れるか? いずれにせよ1名でも多く受け入れたい」
「マコトさんよぉ。ハーピーに相当入れ込んでるけど何かあるのか?」
「まぁな。ちょっとした思い付きだけどな」
数日後、移住者の第1隊がやってきた。
「ようこそ、我がハシバ国へ。君たちには居住スペースと仕事を提供しよう。君たちには我が国の『空軍』として働いてもらいたい。もちろん強制はしないがな」
「くうぐん?」
ハーピーの若者が聞き慣れない言葉に反応する。
「陸で活躍する軍が陸軍、海で活躍する軍が海軍、そして空で活躍する軍が、空軍だ。君たちハーピーの空を飛べる能力を最大限に発揮でいる仕事だ。給金も弾むぞ」
「は、はぁ。要は軍隊ですね。具体的にどう戦えばいいんでしょうか?」
「いや、敵と直接剣を交えることはない。まぁ簡単に言えば、偵察兵だな。空から相手を偵察して欲しい。死ぬ危険性は少ないと思う。西大陸ではおそらく初の空軍だ、これからは君たちが軍の主役とも言える活躍が出来るだろう」
魔物の国の王はそう新入り達に説く。
後にこの空軍がハシバ国の強さを支える心臓部とも言える程強力な部隊となるのは、そこそこ先のお話。
【次回予告】
マコトにとって視察はあちこちを見て回り
国が正常に機能しているかどうかのチェックであり、欠かさないものだ。
第47話「マコトの1日」
「何だよダークエルフの姉ちゃん、俺になんか用か?」
「システィアーノ様があなたの事を探していました。私たちの居住区にいるから顔を出して欲しいとの事です」
「システィアーノ? ああ、最近マコトの配下になった白髪のエルフか? 分かった。ついでに連れてってくれないか? どこにいるのか分かんねえんでな」
ターバン頭と不敵な目つきがトレードマークのジェイクは女の案内の元、ダークエルフが出るとの事で特に人間の親は子供たちには絶対に近寄らせない森の中に踏み入る。
森の中には前見た時よりも多くの移動式住居が建っていて、取り換え子として捨てられた子供やジェイクのつてをたどって、あるいはダークエルフを受け入れているという噂を聞きつけこの国にやってきた者などで順調に数が増えていたようだ。
森の中心に建つひときわ大きな住居に足を踏み入れた。そこにシスティアーノが待っていた。
「そなた、ジェイクとか言ったな」
「おうよ。アンタ最近マコトの部下になったって言う、確かシスティアーノとか言うエルフだっけ? 何の用だい?」
ある意味誰に対しても平等な、敬語を使わないというよりは知らないという口調でシスティアーノに問う。
「お主はこの国に魔物を受け入れるための窓口をしているそうじゃな? わらわの知り合いの中に仕事と住み処を探している魔物がおる。彼らも配下に加えてはどうじゃ?」
ジェイクは不定期ながらも国周辺に住む魔物の中で、移住希望者を国民として受け入れている仕事をしているので窓口なのだと思われたのだろう。
「ふーん。そういう事か。詳しく話してくれないか?」
「連れてきてくれ」
システィアーノに言われ、ダークエルフの1人が移住希望者を連れてくる。
人間の背中に鳥の翼が生えたような姿をした女の魔物と、小柄の人間にリスの尻尾が生えたような姿をした男の魔物という2人がジェイクの前に現れた。
「ふーん。ハーピーにラタトスクか。ハーピーは珍しいな。まぁマコトの事だから両方とも受け入れるだろうぜ」
「彼らが持ってきた外界の情報や本の執筆の仕事はわらわにとっては貴重なものだった。今後はそなた達の役に立ててやってくれ」
ハーピーは世界的に見ても珍しい魔物だ。
この空を自在に飛べる鳥の性質を持つ魔物はかつては人里にも住むほど身近な存在だったが、彼らは1200年前に流行した「エルフの厄災(地球で言うインフルエンザ)」をあちこちにばらまく死の使者という「半分正しい誤解」が広まり、人間やエルフやドワーフ、あるいはほかの魔物の手で無差別に虐殺された暗い歴史がある。
この誤解はエルフの厄災に罹ったハーピーが飛び回ることで周囲に感染を拡大させてしまう事が実際にあったので、完全にデタラメな話というわけではなかった。
現在は誤解も解け、頭数も順調に増え、相互理解も進んだが今でもお互いしこりが残っており、ハーピーの多くはドワーフですらまともに立ち入らないけわしい山脈地帯に巣を作っているという。
一方ラタトスクはリスに似た性質を持つ魔物で、「情報」を種族の中で貯め込み共有し、必要に応じて取り出すという独自の習性を持っている。
これを利用して「情報屋」という仕事を人間やエルフ、ドワーフの間でやっているため、見る機会は意外と多い。
実際都市国家シューヴァルにも彼らの活動拠点である「情報局」があるそうだ。
「ところで移住希望者ってのはこいつらだけか? もっといるんだろ?」
「うむ。それなんじゃが……」
◇◇◇
「ふーむ。空を飛べる魔物に情報を扱う魔物か」
「ああ。俺としては両方とも移住させるべきだと思うんだが、どうだい?」
「俺も賛成だな。「全員」受け入れよう」
「ちょ、ちょっと待て。ぜ、全員ですかい? せめて抽選制にするとかした方がいいんじゃねえのか?」
「構わん。全員だ」
ラタトスクの移住希望者は20名程度で、ハシバ国内に情報局を作るのであれば情報提供の面で役に立とうという事ですんなりと決まった。
問題はハーピーでその数、子供や老人を含めるとおよそ200名。
彼らは人間や他の魔物の手から逃れるためシスティアーノの住んでいた樹海内に巣を作っていたのだが肝心のシスティアーノがいなくなることで結界(ハーピーは結界を空を飛んで軽々と超えることが出来たそうだ)が無くなり、集落丸ごと安住の地を求めているとの事だ。
「さすがに急にここまでの数入れるとなると混乱が起きますぜ?」
「ならいくつかのグループに分けて少しずつ入れるか? いずれにせよ1名でも多く受け入れたい」
「マコトさんよぉ。ハーピーに相当入れ込んでるけど何かあるのか?」
「まぁな。ちょっとした思い付きだけどな」
数日後、移住者の第1隊がやってきた。
「ようこそ、我がハシバ国へ。君たちには居住スペースと仕事を提供しよう。君たちには我が国の『空軍』として働いてもらいたい。もちろん強制はしないがな」
「くうぐん?」
ハーピーの若者が聞き慣れない言葉に反応する。
「陸で活躍する軍が陸軍、海で活躍する軍が海軍、そして空で活躍する軍が、空軍だ。君たちハーピーの空を飛べる能力を最大限に発揮でいる仕事だ。給金も弾むぞ」
「は、はぁ。要は軍隊ですね。具体的にどう戦えばいいんでしょうか?」
「いや、敵と直接剣を交えることはない。まぁ簡単に言えば、偵察兵だな。空から相手を偵察して欲しい。死ぬ危険性は少ないと思う。西大陸ではおそらく初の空軍だ、これからは君たちが軍の主役とも言える活躍が出来るだろう」
魔物の国の王はそう新入り達に説く。
後にこの空軍がハシバ国の強さを支える心臓部とも言える程強力な部隊となるのは、そこそこ先のお話。
【次回予告】
マコトにとって視察はあちこちを見て回り
国が正常に機能しているかどうかのチェックであり、欠かさないものだ。
第47話「マコトの1日」
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