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富国強兵
第52話 魔物図鑑
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・ホルスタウロス
・危険度:やや低い
・利用価値:高い
白黒のまだら模様の毛をもつ牛頭の魔物で、ミノタウロスのメスである。
かつてはミノタウロスとは別種と考えられていた時代もあり、
ホルスタウロスという名前が現在でも残っているのはその名残である。
オスと比べて凶暴性は薄く、筋力も弱い。とはいえ人間の一般人からすれば十分力が強い方だと言える程度には
腕力や脚力は高いため油断は禁物である。
搾れる乳は濃厚で美味、栄養も豊富なため主に王侯貴族相手に高値で取り引きされている。
ちなみに妊娠していなくても成体なら常時母乳が出て子を孕むとさらに出がよくなるため、乳母をしている者が多い。
乳は加工するとさらに美味となり、ホルスタウロスの乳を使ったチーズは高級食材として有名である。
オス同様雑食性だが草食性に近い食性で肉はあまり食べたがらず、食べ物が無く飢えを凌ぐ時ぐらいしか食べたくないのだそうだ。
彼女らに限った話ではないが草食性の魔物のほとんどは人間が食べる野菜を好んで食す。
牧草やその辺に生えている野草、雑草でも食べられるが
彼女らが言うには味があまり良くないらしいので出来れば野菜を食べたいそうだ。
・ダークエルフ
・危険度:とても高い
・利用価値:高い
褐色の肌をしたエルフ。普通のエルフの中からもたまに産まれる事があり、その子は呪われた子供と忌み嫌われ、殺されこそしないが物心がつく年齢になったら集落から追放される。
一般的にエルフは繁殖力が低いとされているが、それはダークエルフとして生を受けた子供は正式な子供と認められない。という事情があるのだそうだ。
普通のエルフ同様、知識と魔力に長けており高度な魔法を操る。彼らの肉体そのものには価値は無いが、人間が使うお金の価値を全員が良く理解しているためカネを払って仕事を依頼する事が出来る。
文字通り人間離れした魔力の高さを活かした彼らにしか出来ない仕事を頼めるという点では有用だろう。
余談になるが彼らと密に接して分かった事だが彼らは非常に文化的な生活を営んでおり、肌の色以外は普通のエルフと何ら変わりないと言ってよい位であった。仮説の域を出ないが南大陸に住むとされる肌の黒い人間同様、ただ肌の色が違うだけの普通のエルフと言ってよいのではないかとさえ思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅ、今日はこの辺にしておくか」
研究者ではあるが見た目も気にしており、几帳面にまとめられた髪と清潔な服装をしたクローゼは羊皮紙に集めた情報をまとめてページにしている。それらが集まれば立派な図鑑になる……予定である。
その几帳面な彼の性格は仕事机にも色濃く出ており、キッチリと整理整頓がされていた。
「お父さんお仕事お疲れ様。晩ご飯持ってきたよ、一緒に食べよ」
彼が養っている最近オシャレに目覚め始めたゴブリンの養女、シャーレは自分用とクローゼ用のパンとスープをもって部屋の中に入ってきた。
ゴブリンを1から育てた上で得られたデータは希少だ。
授乳期が終わるまで1ヵ月、離乳食を卒業するまではそこからさらに1ヵ月。性成熟(要は生理)も生後9ヵ月で迎え、1年も経てばもう立派な成人と言える位にまで成長した。
ゴブリンは筋力も知能も俊敏性も無く、死にやすいからすぐ成長してたくさん産むという生存方法をとっているのだろう。
「そういえば、お父さんってどうしてこんな仕事するようになったの?」
「……わからん。物心ついたころからこうで、魔物のすべてを知りたかったんだ」
いつのころからそうだったのか。40年近く生きてはいるがいまだにこれだという物は無い。
物心ついたころから、魔物という存在は彼の知的好奇心を刺激し続けていた。
やがてその漠然とした知的好奇心は、いつか魔物のすべてがこれ1冊で分かるような本を作りたい。という具体的な夢へと成長した。
ただ、魔物研究のために資金を出す数奇な金持ちはいなかったため、昼間は別の仕事をして夜に研究をする。という生活を送っていたためなかなか進まなかった。マコトの国に移り住んでからは魔物が身近にいる生活を送れるようになり研究速度は劇的に早くなったのは嬉しい事だった。
「マコトには感謝しかないよ。昔住んでた場所だったら一生かかっても完成しなかっただろう」
「そうなんだ」
そこで一呼吸つく。お互いに無言でスープをすすった後、シャーレが話を切り出す。
「ねぇお父さん、そのうち紹介したい人がいるんだけど、連れてきてもいいかな?」
「シャーレ、お前もそろそろお嫁に行ってしまうのか」
「お父さんとしてはやっぱり人間の方がうれしい?」
「長い人生を共に歩む伴侶だ。種族関係なく、お互いに良いと思った男について行きなさい」
「そう。わかった」
シャーレはあどけなく笑う。もうすぐ彼女は結婚して巣立っていくだろう。義理だが一応は父親であるクローゼにはかなりさびしく感じていた。
【次回予告】
相次ぐ戦争に次ぐ戦争。それに民たちは心底疲弊しきっていた。
直訴されるのを見てマコトが下したある計画とは?
第53話「慰民祭」
・危険度:やや低い
・利用価値:高い
白黒のまだら模様の毛をもつ牛頭の魔物で、ミノタウロスのメスである。
かつてはミノタウロスとは別種と考えられていた時代もあり、
ホルスタウロスという名前が現在でも残っているのはその名残である。
オスと比べて凶暴性は薄く、筋力も弱い。とはいえ人間の一般人からすれば十分力が強い方だと言える程度には
腕力や脚力は高いため油断は禁物である。
搾れる乳は濃厚で美味、栄養も豊富なため主に王侯貴族相手に高値で取り引きされている。
ちなみに妊娠していなくても成体なら常時母乳が出て子を孕むとさらに出がよくなるため、乳母をしている者が多い。
乳は加工するとさらに美味となり、ホルスタウロスの乳を使ったチーズは高級食材として有名である。
オス同様雑食性だが草食性に近い食性で肉はあまり食べたがらず、食べ物が無く飢えを凌ぐ時ぐらいしか食べたくないのだそうだ。
彼女らに限った話ではないが草食性の魔物のほとんどは人間が食べる野菜を好んで食す。
牧草やその辺に生えている野草、雑草でも食べられるが
彼女らが言うには味があまり良くないらしいので出来れば野菜を食べたいそうだ。
・ダークエルフ
・危険度:とても高い
・利用価値:高い
褐色の肌をしたエルフ。普通のエルフの中からもたまに産まれる事があり、その子は呪われた子供と忌み嫌われ、殺されこそしないが物心がつく年齢になったら集落から追放される。
一般的にエルフは繁殖力が低いとされているが、それはダークエルフとして生を受けた子供は正式な子供と認められない。という事情があるのだそうだ。
普通のエルフ同様、知識と魔力に長けており高度な魔法を操る。彼らの肉体そのものには価値は無いが、人間が使うお金の価値を全員が良く理解しているためカネを払って仕事を依頼する事が出来る。
文字通り人間離れした魔力の高さを活かした彼らにしか出来ない仕事を頼めるという点では有用だろう。
余談になるが彼らと密に接して分かった事だが彼らは非常に文化的な生活を営んでおり、肌の色以外は普通のエルフと何ら変わりないと言ってよい位であった。仮説の域を出ないが南大陸に住むとされる肌の黒い人間同様、ただ肌の色が違うだけの普通のエルフと言ってよいのではないかとさえ思う。
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「ふぅ、今日はこの辺にしておくか」
研究者ではあるが見た目も気にしており、几帳面にまとめられた髪と清潔な服装をしたクローゼは羊皮紙に集めた情報をまとめてページにしている。それらが集まれば立派な図鑑になる……予定である。
その几帳面な彼の性格は仕事机にも色濃く出ており、キッチリと整理整頓がされていた。
「お父さんお仕事お疲れ様。晩ご飯持ってきたよ、一緒に食べよ」
彼が養っている最近オシャレに目覚め始めたゴブリンの養女、シャーレは自分用とクローゼ用のパンとスープをもって部屋の中に入ってきた。
ゴブリンを1から育てた上で得られたデータは希少だ。
授乳期が終わるまで1ヵ月、離乳食を卒業するまではそこからさらに1ヵ月。性成熟(要は生理)も生後9ヵ月で迎え、1年も経てばもう立派な成人と言える位にまで成長した。
ゴブリンは筋力も知能も俊敏性も無く、死にやすいからすぐ成長してたくさん産むという生存方法をとっているのだろう。
「そういえば、お父さんってどうしてこんな仕事するようになったの?」
「……わからん。物心ついたころからこうで、魔物のすべてを知りたかったんだ」
いつのころからそうだったのか。40年近く生きてはいるがいまだにこれだという物は無い。
物心ついたころから、魔物という存在は彼の知的好奇心を刺激し続けていた。
やがてその漠然とした知的好奇心は、いつか魔物のすべてがこれ1冊で分かるような本を作りたい。という具体的な夢へと成長した。
ただ、魔物研究のために資金を出す数奇な金持ちはいなかったため、昼間は別の仕事をして夜に研究をする。という生活を送っていたためなかなか進まなかった。マコトの国に移り住んでからは魔物が身近にいる生活を送れるようになり研究速度は劇的に早くなったのは嬉しい事だった。
「マコトには感謝しかないよ。昔住んでた場所だったら一生かかっても完成しなかっただろう」
「そうなんだ」
そこで一呼吸つく。お互いに無言でスープをすすった後、シャーレが話を切り出す。
「ねぇお父さん、そのうち紹介したい人がいるんだけど、連れてきてもいいかな?」
「シャーレ、お前もそろそろお嫁に行ってしまうのか」
「お父さんとしてはやっぱり人間の方がうれしい?」
「長い人生を共に歩む伴侶だ。種族関係なく、お互いに良いと思った男について行きなさい」
「そう。わかった」
シャーレはあどけなく笑う。もうすぐ彼女は結婚して巣立っていくだろう。義理だが一応は父親であるクローゼにはかなりさびしく感じていた。
【次回予告】
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第53話「慰民祭」
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