70 / 127
ハシバ国包囲網攻略戦
第70話 水車誕生
しおりを挟む
秋も深まりそろそろ冬支度を考えなければならない位朝晩は冷えるようになったある日、ギズモがマコトの元を訪ねてきた。その手にはとある建築物の設計図があった。
「カシラぁ。カシラのカネが必要な仕事持って来ました」
「今のところマナを使うような大掛かりな設備は必要ないな。っていうかそこまでカネは余ってはいないな」
「そう言うと思って、最初はマナを使わない安い設備を作ろうと思っております。ズバリ、水車という設備でして……」
「水車? 水車だと!? 作れるのか!?」
「おっと、知ってるのなら話は早いですね。なに、俺たちの魔導器具の製造知識を流用すれば出来ねえことなんてありやせん。任せといてください」
水車は製粉や紡績(綿や羊毛などの繊維から糸をつむぐ事)、それに機織りなどの工業の動力源として使われてきており、現在の地球においては時代遅れの遺物だがこの世界では現役の機械だ。
「これがその設計図で、これが予算案となります」
「ふむ……この予算内ならいけそうだな。早速作業にかかってくれ。カネは出す!」
「おっしゃあ任せとけ!」
実をいうとギズモ達は許可が下りるのを待っていた。早速大工達の元を訪ねてある依頼を頼む。
「ふーむ。この通りに木材を加工してくれって事か」
「ええまぁ。報酬は払いますんで期日までに仕上げてください。なるべく早めにやってくれると助かりますがね」
「ん、わかった任せとけ。ところで何のために使うんだい?」
「それは……お楽しみって事で良いですかい? 旦那」
何に使うかは分からないが、とりあえず言われたように加工するだけで報酬が出るのならやろう。ドワーフの棟梁は気楽に考えて2つ返事を返した。
数日後……ドワーフの棟梁が部下と材料を連れてギズモの元へとやってきた。
「ギズモ。例の木材、持ってきたぞ。あと人もいくらか呼んだぞ」
「よーし、材料が揃った。お前ら、行くぞ!」
グレムリン達と手伝いに来た大工数名が組み立てを開始する。
大工達とグレムリン達の手際が良いのか、最初はバラバラだったパーツが徐々に形になり、木材たちが小屋そして水車へと変わっていく。
作業を始めること3日……
「どうだ?」
「もう少し下ですね。そうそうその位置! よし! 完成だ!」
小屋と水車の設置が完了し、動き出す。
「へぇ~。川が流れてさえいれば石臼が勝手に回り続けるのか!」
「そういう事。もう人の手で回すなんて時代遅れさ。これからは水力の時代ってわけさ」
「はぁ~大したもんだ。噂にゃ聞いてたがグレムリンは器用な奴だな。こんなもの作っちまうなって」
「へへへ。まぁこういう仕事で生きてるからな。そうだ。完成記念に打ち上げやろうよ」
「ほほぉ! 分かってるじゃねえか! 今日は飲むぞ!」
その日の夕方、酒場「母乳」にて……
「仕事の成功を祝って、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
木や陶器製のジョッキをガツンとぶつけて一気飲みする。
「ギズモ君、あなたたち豪勢に飲んでるけど何かいいことあったの?」
「俺達の仕事が終わったんで打ち上げさ。料理も酒もじゃんじゃん持ってきてくれ。大丈夫! 金ならあるぜ」
「あらそう。だったらどんどん作らないとね」
マスター側もつけ払いにならなくて済みそうで安心したようだ。
「ところでギズモ。お前最近いいことあったか?」
「いいことねぇ……特にないけど」
「そうか。じゃあお前は?」
ドワーフの大工は別のグレムリンに何かいいことがあったのかを尋ねる。
「そうだなぁ。そういえば最近って程じゃないけど3ヵ月前に俺の姉が結婚したんだ」
「おおそうか! じゃあそれに乾杯しよう!」
彼がそういうのを見計らったように新しい酒が来る。彼らはそれを持ってもう一度乾杯する。
「姉さんの門出を祝って、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
再びジョッキをガツンとぶつけて一気飲みする。
その後も彼は仲間に良いことを尋ねては乾杯を繰り返した。となると酔いはあっという間に回っていき……。
「ううう……気持ち悪ぃ……」
「うっぷ。もう飲めねえ……」
ドワーフの棟梁を除いて全員酒にぶっ倒れてしまった。
「なんじゃお前らもうだめか? まぁいいや。ワシはもう帰るぞ。会計はこいつら持ちだ」
そう言って彼は去っていく。
会計はつぶれた側持ち。これもドワーフの飲み会の鉄則であった。
【次回予告】
マコトはついにイシュタル国攻めを決行する。
イシュタル国もそれに合わせて動き出す。
第71話 「イシュタル国攻略戦」
「カシラぁ。カシラのカネが必要な仕事持って来ました」
「今のところマナを使うような大掛かりな設備は必要ないな。っていうかそこまでカネは余ってはいないな」
「そう言うと思って、最初はマナを使わない安い設備を作ろうと思っております。ズバリ、水車という設備でして……」
「水車? 水車だと!? 作れるのか!?」
「おっと、知ってるのなら話は早いですね。なに、俺たちの魔導器具の製造知識を流用すれば出来ねえことなんてありやせん。任せといてください」
水車は製粉や紡績(綿や羊毛などの繊維から糸をつむぐ事)、それに機織りなどの工業の動力源として使われてきており、現在の地球においては時代遅れの遺物だがこの世界では現役の機械だ。
「これがその設計図で、これが予算案となります」
「ふむ……この予算内ならいけそうだな。早速作業にかかってくれ。カネは出す!」
「おっしゃあ任せとけ!」
実をいうとギズモ達は許可が下りるのを待っていた。早速大工達の元を訪ねてある依頼を頼む。
「ふーむ。この通りに木材を加工してくれって事か」
「ええまぁ。報酬は払いますんで期日までに仕上げてください。なるべく早めにやってくれると助かりますがね」
「ん、わかった任せとけ。ところで何のために使うんだい?」
「それは……お楽しみって事で良いですかい? 旦那」
何に使うかは分からないが、とりあえず言われたように加工するだけで報酬が出るのならやろう。ドワーフの棟梁は気楽に考えて2つ返事を返した。
数日後……ドワーフの棟梁が部下と材料を連れてギズモの元へとやってきた。
「ギズモ。例の木材、持ってきたぞ。あと人もいくらか呼んだぞ」
「よーし、材料が揃った。お前ら、行くぞ!」
グレムリン達と手伝いに来た大工数名が組み立てを開始する。
大工達とグレムリン達の手際が良いのか、最初はバラバラだったパーツが徐々に形になり、木材たちが小屋そして水車へと変わっていく。
作業を始めること3日……
「どうだ?」
「もう少し下ですね。そうそうその位置! よし! 完成だ!」
小屋と水車の設置が完了し、動き出す。
「へぇ~。川が流れてさえいれば石臼が勝手に回り続けるのか!」
「そういう事。もう人の手で回すなんて時代遅れさ。これからは水力の時代ってわけさ」
「はぁ~大したもんだ。噂にゃ聞いてたがグレムリンは器用な奴だな。こんなもの作っちまうなって」
「へへへ。まぁこういう仕事で生きてるからな。そうだ。完成記念に打ち上げやろうよ」
「ほほぉ! 分かってるじゃねえか! 今日は飲むぞ!」
その日の夕方、酒場「母乳」にて……
「仕事の成功を祝って、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
木や陶器製のジョッキをガツンとぶつけて一気飲みする。
「ギズモ君、あなたたち豪勢に飲んでるけど何かいいことあったの?」
「俺達の仕事が終わったんで打ち上げさ。料理も酒もじゃんじゃん持ってきてくれ。大丈夫! 金ならあるぜ」
「あらそう。だったらどんどん作らないとね」
マスター側もつけ払いにならなくて済みそうで安心したようだ。
「ところでギズモ。お前最近いいことあったか?」
「いいことねぇ……特にないけど」
「そうか。じゃあお前は?」
ドワーフの大工は別のグレムリンに何かいいことがあったのかを尋ねる。
「そうだなぁ。そういえば最近って程じゃないけど3ヵ月前に俺の姉が結婚したんだ」
「おおそうか! じゃあそれに乾杯しよう!」
彼がそういうのを見計らったように新しい酒が来る。彼らはそれを持ってもう一度乾杯する。
「姉さんの門出を祝って、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
再びジョッキをガツンとぶつけて一気飲みする。
その後も彼は仲間に良いことを尋ねては乾杯を繰り返した。となると酔いはあっという間に回っていき……。
「ううう……気持ち悪ぃ……」
「うっぷ。もう飲めねえ……」
ドワーフの棟梁を除いて全員酒にぶっ倒れてしまった。
「なんじゃお前らもうだめか? まぁいいや。ワシはもう帰るぞ。会計はこいつら持ちだ」
そう言って彼は去っていく。
会計はつぶれた側持ち。これもドワーフの飲み会の鉄則であった。
【次回予告】
マコトはついにイシュタル国攻めを決行する。
イシュタル国もそれに合わせて動き出す。
第71話 「イシュタル国攻略戦」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる