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オレイカルコス連合制圧戦
第85話 事実上の宣戦布告
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季節は巡り、晩春。そろそろ夏を迎えるにあたり慰民祭の準備で盛り上がっている中、ナタルは工兵たちが別の準備をしているのを見かけた。
彼らは竹を束ねて太い円柱状の形にしていたのだ。
「これは何をしているところなんだ?」
「閣下の命令で『竹束』という物を作っているところです。ドワーフたちが使う銃対策だとは聞いてます」
「竹の束だから竹束、か。ネーミングにひねりがないな、そのまんまじゃないか」
日本の戦国時代において木の盾程度は軽く貫通する銃の登場により銃弾を防ぐ防具が考えられた。その際できたのが竹束という防御兵器だ。
ドワーフたちの銃は火縄銃とは厳密に言えば違うがそれでも似たようなものだから対処も同じだろうとマコトが用意させたのだ。
「ふーむ。竹束とジャック・オー・ランタンの魔法があれば、何とかなる……か?」
マコトはキーファーからカボチャたちに魔法を教え、防御魔法を扱えるようになったという知らせを聞いていた。
この世界においても破壊力が既存の武器とは桁違いな銃の登場となったが、まだ手も足も出ずに負けるほど進化はしておらず、魔法という地球にはなかったアドバンテージがあれば勝てる相手だろうとは踏んでいた。
着々と銃の脅威に対策を打ち出す中、何の前触れもなしにやって来たドワーフがでかい声を上げながらズカズカと入ってきて、王の間に彼の声が響いた。
「オイマコト! マコトはいるか!?」
「俺がマコトだが何か用か?」
「俺たちのカシラ、スティーブの旦那からの手紙だ。きちんと渡したからな。後で受け取ってないとかすっとぼけたら頭かち割ってやるからな」
あきらかに友好的ではないセリフをはいてドワーフの伝令員は去っていった。
彼が持ってきたオレイカルコス連合盟主からの手紙は署名や捺印を見るに、どうやら本物らしい。
手紙の内容はこうだ。
「ダークエルフをかくまい保護するという貴国の行動は、我々の常識からすれば侮辱行為の極みであり到底受け入れられるものではない。
1ヶ月以内にサーマヌルク国の者を含めた貴国内のダークエルフ全員を国外へと追放せよ。
もし従わなければ我が国に対する明確かつ最大級の敵対行為とみなし、貴国に宣戦布告する。
オレイカルコス連合盟主 スティーブ・イェーガー」
……と、流ちょうな西大陸語で書かれていた。
「閣下、手紙の内容はどのようなモノでしょうか?」
「事実上の宣戦布告だな。1ヶ月後には戦争だ」
「また戦争ですか……」
「当分の間はオレイカルコス連合との戦争が続くだろうな。迷惑ばかりかけてすまない」
「閣下が謝る事ではありませんよ」
薄々こういう類の知らせが来そうだとは読んではいたが、実際に届くとなると嫌な気分になる。嫌われるよりかは好かれたほうが良いに決まってるからだ。
ハァ。とため息をついて手紙をポケットにしまうと同時に……
「ご注進!」
大声をあげながら男が疾走しながら王の間へと飛び込んできた。彼はオレイカルコス連合国内で内偵をしていたアズールだった。
ここまで相当急いで来たのか息をゼェゼェと切らし、顔面は汗だくであった。
「アズール、どうした?」
「閣下! オレイカルコス連合の銃を入手しました! こちらです!」
そう叫ぶように報告すると布で包んだ棒状の何かをマコトに差し出す。包みをほどくと現れたのは地球のマスケット銃とよく似た構造の銃だった。
銃身にはライフリングが施されており、その形状からして先込め式……銃口から火薬と銃弾を込める形式の物だった。
それを見てマコトはホッとする。ライフリングというのは多少気がかりだが、先込め式ならまだまだ剣や魔法でも勝算はある。
「これが一般的な装備か?」
「そうです。私が知る限りでは兵も将もこれと同じ銃を使っているとのことです」
「分かった。よくやってくれた! 下がっていいぞ!」
「ハッ!」
敵の銃が「先込め式」であることを暴くという大手柄をあげたアズール。自分の上司がうれしそうな顔をするにおそらく大活躍できたのだろうと確信する。
ボーナスもありかもな。そう思いながら下がっていった。
「閣下、今回の相手、勝てそうですか? 噂では奴隷商人ギルドが暗躍しいているとのことですが……」
「俺の予想が正しけりゃ……勝てると思う。まだ、な」
地球からの銃の技術はこの世界のパワーバランスを粉微塵に砕くほどの威力がある。
まだまだ完全再現には至らず今でも発達途上といえるが、それでもこの世界の文明からすれば十分すぎるほどのアドバンテージを持つ。
しかも相手は奴隷商人ギルドがバックについている。彼らの豊富な資金は技術研究や量産体制の確保に注がれ、物資補給を完璧にさせる。
今なら勝てるとは思っている、いや『勝てるのは今だけ』だ。マコトは今のうちに何とかしないと大変なことになると確信していた。
【次回予告】
オレイカルコス連合からの最終通達から1ヶ月後。
両国の不仲はついに軍事衝突にまで発展する。
第86話 「侵攻 オレイカルコス連合」
彼らは竹を束ねて太い円柱状の形にしていたのだ。
「これは何をしているところなんだ?」
「閣下の命令で『竹束』という物を作っているところです。ドワーフたちが使う銃対策だとは聞いてます」
「竹の束だから竹束、か。ネーミングにひねりがないな、そのまんまじゃないか」
日本の戦国時代において木の盾程度は軽く貫通する銃の登場により銃弾を防ぐ防具が考えられた。その際できたのが竹束という防御兵器だ。
ドワーフたちの銃は火縄銃とは厳密に言えば違うがそれでも似たようなものだから対処も同じだろうとマコトが用意させたのだ。
「ふーむ。竹束とジャック・オー・ランタンの魔法があれば、何とかなる……か?」
マコトはキーファーからカボチャたちに魔法を教え、防御魔法を扱えるようになったという知らせを聞いていた。
この世界においても破壊力が既存の武器とは桁違いな銃の登場となったが、まだ手も足も出ずに負けるほど進化はしておらず、魔法という地球にはなかったアドバンテージがあれば勝てる相手だろうとは踏んでいた。
着々と銃の脅威に対策を打ち出す中、何の前触れもなしにやって来たドワーフがでかい声を上げながらズカズカと入ってきて、王の間に彼の声が響いた。
「オイマコト! マコトはいるか!?」
「俺がマコトだが何か用か?」
「俺たちのカシラ、スティーブの旦那からの手紙だ。きちんと渡したからな。後で受け取ってないとかすっとぼけたら頭かち割ってやるからな」
あきらかに友好的ではないセリフをはいてドワーフの伝令員は去っていった。
彼が持ってきたオレイカルコス連合盟主からの手紙は署名や捺印を見るに、どうやら本物らしい。
手紙の内容はこうだ。
「ダークエルフをかくまい保護するという貴国の行動は、我々の常識からすれば侮辱行為の極みであり到底受け入れられるものではない。
1ヶ月以内にサーマヌルク国の者を含めた貴国内のダークエルフ全員を国外へと追放せよ。
もし従わなければ我が国に対する明確かつ最大級の敵対行為とみなし、貴国に宣戦布告する。
オレイカルコス連合盟主 スティーブ・イェーガー」
……と、流ちょうな西大陸語で書かれていた。
「閣下、手紙の内容はどのようなモノでしょうか?」
「事実上の宣戦布告だな。1ヶ月後には戦争だ」
「また戦争ですか……」
「当分の間はオレイカルコス連合との戦争が続くだろうな。迷惑ばかりかけてすまない」
「閣下が謝る事ではありませんよ」
薄々こういう類の知らせが来そうだとは読んではいたが、実際に届くとなると嫌な気分になる。嫌われるよりかは好かれたほうが良いに決まってるからだ。
ハァ。とため息をついて手紙をポケットにしまうと同時に……
「ご注進!」
大声をあげながら男が疾走しながら王の間へと飛び込んできた。彼はオレイカルコス連合国内で内偵をしていたアズールだった。
ここまで相当急いで来たのか息をゼェゼェと切らし、顔面は汗だくであった。
「アズール、どうした?」
「閣下! オレイカルコス連合の銃を入手しました! こちらです!」
そう叫ぶように報告すると布で包んだ棒状の何かをマコトに差し出す。包みをほどくと現れたのは地球のマスケット銃とよく似た構造の銃だった。
銃身にはライフリングが施されており、その形状からして先込め式……銃口から火薬と銃弾を込める形式の物だった。
それを見てマコトはホッとする。ライフリングというのは多少気がかりだが、先込め式ならまだまだ剣や魔法でも勝算はある。
「これが一般的な装備か?」
「そうです。私が知る限りでは兵も将もこれと同じ銃を使っているとのことです」
「分かった。よくやってくれた! 下がっていいぞ!」
「ハッ!」
敵の銃が「先込め式」であることを暴くという大手柄をあげたアズール。自分の上司がうれしそうな顔をするにおそらく大活躍できたのだろうと確信する。
ボーナスもありかもな。そう思いながら下がっていった。
「閣下、今回の相手、勝てそうですか? 噂では奴隷商人ギルドが暗躍しいているとのことですが……」
「俺の予想が正しけりゃ……勝てると思う。まだ、な」
地球からの銃の技術はこの世界のパワーバランスを粉微塵に砕くほどの威力がある。
まだまだ完全再現には至らず今でも発達途上といえるが、それでもこの世界の文明からすれば十分すぎるほどのアドバンテージを持つ。
しかも相手は奴隷商人ギルドがバックについている。彼らの豊富な資金は技術研究や量産体制の確保に注がれ、物資補給を完璧にさせる。
今なら勝てるとは思っている、いや『勝てるのは今だけ』だ。マコトは今のうちに何とかしないと大変なことになると確信していた。
【次回予告】
オレイカルコス連合からの最終通達から1ヶ月後。
両国の不仲はついに軍事衝突にまで発展する。
第86話 「侵攻 オレイカルコス連合」
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